「本日はレディースデーなので、おひとり950円でご覧いただけます」

「えっ?!シニア料金・1200円より350円も安いんですか?」

「はい…どう致しましょう?」

「そりゃぁ~950円でお願いします!」

シネスイッチ銀座では毎週金曜日にレデーィスデーを設け、女性に限って950円で映画を観ることができます。

    

今日は映画通の友人に誘われ、公開したばかりの映画『高野豆腐店の春』を観に銀座まで出掛けて参りました。

映画好きな友人ばかり4人が集まりワイワイ!

「儲けたぁ~!950円で観られるなんて感激だわよ!」

「もうシニア料金で何んの疑いもなくチケット売ってくれるけどサ、60歳になったばかりのころって年齢を示すものの提出を要求されたじゃない?西暦で答えてくださいとか、干支は何ですかとか。今じゃスッとシニア料金で売ってくれるもんね。なんか寂しいモンがあるよ」

「おんなじ映画を安く観られるんなら、どんな風に見られようが構やしないわよ」

「今日はレディに見えたってことでしょ?私たちもまだまだ捨てたモンじゃないってことよ」

「受付の人って、おじさんだかサ、おばさんだか判別できない時は一応レディースデーですって言うんじゃない?

「あーたなんかおばさんに紛れたおじさんに見えたかもよ!で?みんな950円でチケット買えた?」

男性とか女性とかの域を超えたわたくしたち4人全員、お陰様で何んの問題もなく購入することができました。

    

人一押しの映画『高野豆腐店の春』は「たかのとうふてんのはる」と呼びまして、わたくしは高野豆腐(こうやどうふ)の専門店かと思っていました。

そんお豆腐屋の出戻り娘・春の再婚話を軸に、豆腐屋の主・辰雄の豆腐へのこだわりと淡い恋心などを絡め、広島・尾道を舞台に商店街の幼馴染みなどの付き合いなどを面白おかしく描いています。

主人公・辰雄を演じている藤竜也…いぶし銀の演技とはこういうのだと改めて思い知りました。

御年80歳とは思えぬ切れの良いセリフ、町を走る走る!啖呵を切る威勢の良いこと!広島弁を操る口跡の闊達さ…眼球の鋭さも往年の銀幕スターを思い起こさせるに十分な貫禄を見せておりました。

春の再婚相手が広島カープのファンではなく、我らが東京読売巨人軍のファンであることも胸の中で喝さいを送りました!

「カンゾー先生」に出演したころの麻生久美子は初々しかったのですが、今では日本映画界では代表的な存在を発揮しているかと思います。

商店街で床屋、町中華の店を構えていたり、タクシー運転手をやっていたり、ふらふらしているアメリカかぶれなどそれぞれ辰雄の幼馴馴染みも登場し、味わい深い徳井優、菅原大吉、宮坂ひろし、竹内都子、山田正人らがしっかりとお笑いを掴んで笑わせてくれています。

辰雄の淡い恋心の相手は中村久美が演じ、しっとりと落ち着いた行く末をほのめかし、観ているこちらはせっつきたいほどお似合いなんですが、当のふたりはゆったりとつかず離れずを楽しんでいるようです。

「物語は平平凡凡だけど、藤竜也が良いんだねぇ~」

「そっ!私、愛のコリーダを観てからのファンよ!あれに出演した勇気というか男気というか…凄いもんを感じたわぁ~」

本作は120分と長編にありますが、人との掛け合いが楽しく飽きることなく、そして最後はハッピーエンドとくれば観て損はなしの1本であるかとお勧めいたします。

銀座四丁目交差点での信号待ち…花壇に咲いていたのでしょう、ルリタマアザミの種子がしっかりと熟したようです。

この大都会で子孫繁栄が叶うでしょうか?

わたくしは1本の植物の繁栄を願っているというのに…あとの3人は、ランチに何を食べようかの心配をしている様子…あぁ、植物学者・牧野富太郎博士に申訳が立ちません。

「おみえ!揚げたての天ぷらに決めたけど良い?」

「天ぷら?良いねぇ~行こ行こ!」

牧野博士のため息が聞こえたような…?

風が吹いたなら、思い切って飛んで行くんだよ!

きっと新天地が見つかって、新しい居場所が見つかるからね!

では…天ぷら、頂きに行って参ります!