「5年ぶりの本祭りだよ!暑いのを言い訳にして来ないってぇっとタダじゃすまないよ!今度ぉ~?今度って3年後だよ!生きてるって保障あんのかぃ?見納めになるかも知れないんだから這ってでもおいでな!」

中央区・佃島で船宿をやっております従兄姉から脅しとも取れるような誘いを受け、渋々・汗を拭き拭き佃島まで出掛けて行きました。

  

風情のある提灯が」軒下に下げられ…「あぁ~ホントに久しぶりだな~」と暫し見上げておりました。

提灯に描かれているのは縁起の良い鳥とされるシラサギでございます。

佃の祭りでは半纏にも、このシラサギが描かれております。

  

佃祭りの正式な呼び名は「住吉神社例祭(すみよしじんじゃれいさい)」でここに住む人たち全員が佃島に祀られている住吉神社の氏子でございます。

境内には水神様もお祭りしてあり、従兄が継いでいる船宿にまつわる漁業組合のお社も建てられ、3年に1度の本祭りを迎える目出度い祭りとなっております。

住吉神社の境内にある狛犬…神輿を担ぐ威勢の良い若衆に倒されぬよう、こうして囲いで守られます。

けれども狛犬全部を覆うのではなく、本堂で行われる神輿への御魂入れの神事や、獅子頭や神輿担ぎなど、狛犬が観られるようにとお顔の部分は出して気遣いを見せています。

5年ぶりに聞く・観る地元の祭りに思わず目元が緩んでしまうのではないでしょうか。

    

8月4日は大幟が(おおのぼり)が建てられる日で、朝から氏子たちが6基の幟を起ち上げる日であります。

すべての大幟は、江戸時代より佃島の漁師を擁護してきた徳川家・ご本家がある方角に向けて建てられます。

「今年もお陰様で無事に祭りを行えます」との喜びを伝える意味があると従兄から教えてもらいました。

徳川江戸幕府の歴史が令和の今も脈々と続いていることに感激しちゃいます!

獅子庭も美しく飾り付けが済み、奉納された一升瓶がズラリ。

獅子は雄雌一対で夫婦となっております。

角がある方が雄。宝珠を頂いている方が雌でございますが、飲む前から顔を赤くして…5年ぶりに会って照れているのでしょうかねぇ~ 

無事に宵宮を迎えた佃島…当番の若衆やご長老たちもホッとして一杯始めたようでございます。

揃いの浴衣は如何にも涼しげで、隅田川から引いた掘割を渡ってくる風にもどこかしら汗を引かせる涼やかさが感じられます。

水面に映る提灯の灯と後ろにそびえるタワーマンション…古きものと新しきものが不思議と馴染んでおります。

先日の隅田川花火大会で屋形船を出した従兄は「やっと疲れが取れた思ったら本祭りだもんなぁ~」などとボヤいてはおりますが、その顔は生き生きとして良い男に見えまする!

「よっ!江戸っ子!」

佃の一文字では格好がつかないと「津久田」の三文字を充てるようになったのはいつ頃からでしょうか。

こうして町内を回る提灯にも「津久田」の文字が描かれています。

従兄姉たちが住む路地裏の提灯にも灯が入ったようです。

「おみえちゃん、一杯やっていきなね」

先ずは冷たいビールで喉を潤し…あとは日本酒といきましょうかねぇ~

今夜は飲んじゃおうかなぁ~

「そうだよ!3年後なんてサ、だぁ~れもいなくなっちゃってるかもよ。今宵限りの命かも知れないいじゃないか。ホレ!悔いのないように盃なんてやめて、コップ酒でいこう!」

賑やかに…そして厳かにご先祖様を思って、献杯!

明日からは神輿が繰り出したり、船の渡御が行われたり、多くの観光客も来るかと思われ、6日までは活気あふれる佃の町でございます。

わたくしは、自分の歳を考えて宵宮で満足…無事に祭りが終えるよう、ここ深川から遥拝すると致しましょう。

 

『はるかなる祭囃子に腰受り』

(はるかなるまつりばやしにこしうけり)

能村登四郎