近くに住むわたくしの幼馴染みが、ナスを10個ほど抱えてやって来ました。

「命に係わる危険の暑さって言われてるのに、何を呑気にナスなんか持って来てんの!」

「ナスなんかだって!命を懸けて持って来たのに失礼しちゃうわ」

「で?」

「この間、テレビのケンミンショーで高知県のおつまみの紹介をやってたのね。そのおつまみってのが、このナスを使った一品なのよ」

「高知県のおつまみ?で?」

「ナスのたたきって言うんだけど、カツオのたたきのナス・バージョンって感じ?薬味をたくさんのっけてポン酢をかけて頂くの。ビールがいくらでも飲めちゃうらしいのよ。高知県では当たり前のおつまみなんだって。その美味しそうなことったらないの!」

「で?」

「…でぇ~こうしてナスを持って来たってわけ」

「自分んちで作りゃぁ~いいじゃない?」

「…そんな身も蓋もないこと、言わないの!パパにもあきらにも食べさせてあげたいのよ」

  

幼馴染みは大らかで細かいことはあまり気にしないタイプでして、繊細なわたくしとは真逆であります。

そんな幼馴染みが、このコロナ禍で閉塞感と孤独感を感じ、毎日流れるウクライナへの攻撃の映像を見ていて虚無感や喪失感を抱いてしまったらしく、しばらく元気がありませんでした。

家族の勧めで心療内科にかかり、薬の力を借りながらもようやく食欲も湧くようになり笑顔も見られるようになりました。

その幼馴染みがナスを抱え、四角い顔をした旦那とひとり息子・あきらくんに旬の野菜を使ったひと品を食べさせてやりたいと言うんですから、ほっとくわけにもいきますまい。

保冷バッグから使いかけのミツカンポン酢、薬味として使うミョウガにシソの葉、まだまだ出てくるショウガにネギにニンニク、その上レモンまで持参して来るとは、今までとは気合の入れ方が違うようです。

「ナスがトロッとして、ホントに美味しそうだったの!最初5個で作って美味しく出来たら、あとの5個も作って、それを持って帰るから、よろしくね」

「はっ?」

それだけ思い入れがあるおつまみだったら、作り方を頭に叩き込んで来たものと思いきや…

「えーとね、ナスを油で揚げ焼きにして、熱いうちにポン酢をかけて…千切りにした薬味をのせれば出来上がり。そのままでも冷やしても美味しいみたい。高知はユズとかの柑橘系がたくさん穫れるからユズポンとかかけるらしいのね。ミツカンポン酢のほかにレモン果汁をかけたらどうかなって思ったのよ。いいアイデアでしょ?」

なるほど…ナスをはじめ、薬味となるミョウガ、シソの葉、ショウガって高知県の特産品ですよね?

これらって全国出荷量の第1位とか2位とか上位を占めているんじゃないでしょうか?

そう思うと、この夏野菜の取り合わせは納得の一品であります。

熱々の出来立て…とても美味しかった!

冷やしたナスのたたきは、もっと美味しかった!

あまり凝ったポン酢より、一番安いミツカンポン酢が合うように思います。

ケチらずたっぷりと!

「ねぇ?美味しいでしょ?ビール飲んじゃおうよ」

コイツ、ビールは持ってこなかったんだよねぇ~

「パパもあきらも喜ぶわぁ~ありがとね」

「これってポン酢だけど、そうめんと一緒に食べたら食が進んじゃうね」

夏の献立に困ったとき、これはきっと役に立つかと思います。

今夜は満月…高知県のみなさん!夏野菜、まとめてゴチになります!

おかげさまで胃も心も満たされました!