日が差して晴れるのか?このまま曇りを通すのか?一気に雨を降らすのか…ホントにはっきりとしない空模様であります。

これは降ってくるかなと思いきや、雲の間から薄日が差してきたりと出掛ける予定のこちらにとっては足元が気になる天気でございます。

「えぇい、儘よ!」

降ったら降ったまでのこと。晴れたらめっけもん!

曇りならなおのことバッチグー!

今日は日本橋・コレド室町2に併設されているTOHOシネマズで公開中の『せかいのおきく』、友人たちと観る約束を致しました。

「去年の10月にオランダ・アムステルダム国際映画祭で上映された作品なのね、だからって面白いとは限らないんだけど、観に行かない?みんなで行けば面白いかもよ」

「観に行っても良いけど…面白いかどうか、集まるみんなにもよるよね?」

で・集まったのは4人。

「おぉ!選りすぐりの4人だね」

「どこが!第3土曜日だってのに、みんなヒマだねぇ~」

と・言うことで足並み揃えて、3階・TOHOシネマズへ

ポスターも白黒なら映画そのものもモノクロの作品で、突然!鮮やかな色が蘇る場面が時折り入ります。

ポスターに写っているおきくの着物、桜の花びらが散っている淡い桃色であると知りました。

物語の背景は江戸後期…臭いものにはフタをせず、江戸の町の糞尿を売り買いする汚穢屋(おわいや)を描いております。

ポスターの後ろにある掘立小屋、あれこそ今でいう公衆トイレでございます。

江戸時代は資源が限られ使えるものは何んでも使い切って土に戻す文化が人々に浸透した時代…自然も人も死んで活かされ、また生きる。

人も土に還り、肥料になる時代であったのだと改めて教えられます。

それは人が出す糞尿も同じこと。

下肥え買いの矢亮(やすけ)と中次(ちゅうじ)は、桶を担ぎ、武家屋敷から貧乏長屋の厠(かわや)を回り、買い集めた糞尿を舟に乗せ、葛西(現・江戸川区)の農家へ売りに行くのを生業にしておりました。

ある日、木挽町(こびきちょう)の貧乏長屋に住む父娘と口を交わすようになります。

町行く人々から鼻つまみにされる商いとは言え、大雨が降ったあとは肥溜めから糞尿が溢れ出し、江戸の町は息も出来ぬほどの惨状と化し、なくてはならぬ汚穢屋なのにその扱いは切なくなるほど酷いものでありました。

寺小屋で読み書きを教えていたおきく(黒木華)は、元・勘定方であった父親・源兵衛(佐藤浩市)は昔の因縁から命を狙われ、その巻き添えで喉を切られ、声を失ってしまいます。

物語の後半はまったくのセリフなしの演技となる黒木華…しかし、さすが実力派俳優であります。

その眉、目、首をかしげる、眉間のシワ、口角の上げ下げ、顎の位置などで言葉にできぬ感情を豊かに表現しておりました。

やがて中次(寛一郎・かんいちろう)に淡い恋心を抱くおきく…逆境に暮らす若者3人の青春群像時代映画かと思います。

長屋の住人の一人・棺桶職人を演じた石橋蓮司の演技もなかなか渋くて味わい深さがありました。

シネマチケットの半券サービスを受けられる飲食店で映画の余韻に浸りましょう!

「先ずはビールだね!あの映画のあとはカレーは無理だね」

「モノクロの訳が判ったわ。あれをカラーでやられたら1週間は食欲なくすもの」

「おきくが切られた喉の血、あれもモノクロで良かったね」

「やっぱ町中華で餃子でしょ?」

ひとり・ひと皿の餃子を確保!醜い争いは避けるが賢明です。

「佐藤浩市と息子の寛一郎との共演も見どころだったね」

「似ているような似ていないような?」

「私、思ったんだけどサ、脚本がイマイチな気がする。もっときれいな日本語の言い回しってあると思うんだよね」

「そう!肝心な場面の説明がないから観客側が首をひねりながら観ることになっちゃうしね」

「私はね、物を扱うのが乱暴で腹が立ったわ!踏み板を投げつけるわ!フタもぞんざいに投げるわ、商売物のヒシャクも投げおくわ、とにかく物を大事に扱わないのよ」

「あちしも気になった!自分の商売物ものなのに投げるってのは考えられない。暮らしに使う道具だって壊さないよう汚さないよう、常にきれいにして置くものなのに、あれは所作指導が何を伝えたいのか判らないし中途半端だと思ったわ」

「でもサ、降る雪はきれいだったねぇ~雪は白いって分かってるけど、モノクロなのに白さが際立ってた」

「棺桶職人の石橋蓮司、良かったねぇ~あっちこっちの映画に引っ張りだこのワケが分かるわ」

「私サ、棺桶って聞いてね、あーたの「閉所恐怖症」を思い出しちゃって…あーたってサ、ぜったいに棺桶に入れないよね、怖くて」

「そうだよぉ~体がすっぽり収まるだけの狭さだし、フタをされちゃうんだよ!釘まで打たれて!どうすんの?」

わたくしのことであります!

「…いやいや、どうすんのって…そもそも棺桶ってのは、死んじゃった人が入るんだからサ、狭いも怖いも関係なくない?」

「いや!判ると思うよ。やけに狭いなって!」

「うん。あれって感覚的なもんだしね」

「あって気が付いたときは釘も打たれて…うわぁ!絶望的だね」

「だからサ、死んじゃってんだから…えーっ?あちし怖くて死ねない!」

「そうそう!この中で一番長生きしてみんなを見送ってね」

そんな大役、ご辞退申し上げます!

日本橋まで出かけてきて、いったい何んの映画を観たんだよ!