東京・台東区、上野公園にやって参りました。

土曜日でこんなに良い天気なのにジャイアントパンダの「香香・シャンシャン」が、2月21日に中国に返還されたためか、上野動物園は少しだけ…閑散としてる?

動物園のお隣に位置する「東京都美術館」…ただ今、レオポルド美術館所蔵のエゴン・シーレの作品が展示されております。

    

わたくしの幼馴染みのひとり息子・美大院生のあきらくんに「エゴン・シーレの作品で、これだけの揃うのって初めてかもよ。すっごぇ感動するから行った方がいいよ」と勧められ、またシーレ好きの友人にも「久しぶりの上野、一緒に行こうよ」と誘われ、花粉症対策バッチリで出掛けて来ました。

「私、携帯アプリで11時から12時までで予約してあるから…一般2200円で65歳以上が1500円。アプリのポイントで更にお得の1400円!すごいでしょ?早い方が良いから11時に美術館前で待ってる。あそこはサ、美術館だの博物館だのっていろいろあるから間違えないでよ!」

人生いろいろで波乱万丈で間違いだらけの友人だけには「間違えるな」などと言われたかないわっ!

思ったより訪れる人が少なくて良かった!

花粉は飛んでいるでしょうに、今のところは洟水もクシャミも治まっていますので助かっております。

久しぶりの友人の顔…判るかな?

どこでも直立不動で立っているのを見つければ…間違いなく友人であります。

細くて竹の物差しみたい・な友人が所在なさげに立っていた…開口一番「遅いよぉ~」ってか、10時50分だよ!

彼女は大手新聞社に勤めていたので、時間だけは早め早めで行動するクセが付いております。

「予約の時間が決まってるんだから、早く行ったって入れないじゃないの?」

「入れなくてもね、時間厳守!行こっ!」

「もう退職して3年でしょ?少しはゆったりと構えて老後を過ごした方が良いよ」

「2年と8ヶ月だわ」

急かされて入ったものの、シーレ展にはまだ入れません。

けっきょく列に並んだのは11時05分…もうここ・入口に辿り着いただけで疲れちったわ。

「ウィーンが生んだ若き天才」とあるように16歳からその才能が認められたと年表にはありましたが、それでも同じ年代のグスタフ・クリムトに「自分に才能はあるか?」と問うたとあります。

10代で描いたデッサンや自画像を観て…友人とふたりして「あるよぉ~溢れてるよぉ」と亡きシーレに答えておりました。

1918年、当時スペイン風邪(インフルエンザ)が流行し、妊娠していた妻と共に感染。

妻が亡くなった3日後にシーレも28歳の若さで亡くなりました。

今まさに感染症の真っ只中にいるわたくしたちにとっても、その恐怖は切実に迫って参ります。

早逝した画家エゴン・シーレが残した作品は、とてもエロティック。

画風が変る期間も早く、今回展示された作品・50点の中に凝縮されているように思えました。

14章に分かれた作品には交流のあった画家たちの作品も多く展示されておりました。

クリムト、ゲルストル、カール・モルにコロマン・モーザーとレオポルド美術館の所蔵のレベルの高さはすごい!

第9章・エゴン・シーレ 風景画の展示室はカメラ撮影オッケーで、友人は観たかった『モルダウ河畔のクルマウ』の前でしばし時を忘れて魅入っていました。

携帯のシャッター音が響き渡っていた展示室…ちょっと反省。

移動するエスカレーターの横で、ちょっとひと休み。

カラフルでステキな椅子が置いてありました。

「この配色って北欧・スウェーデンの国旗みたいじゃない?」

「えっー?イタリアでしょ?」

「イタリアは赤・緑・白でしょ?これのどこがイタリアなのよ」

「スウェーデンは?」

「青と黄色の2色だけど、あちしの勝ちだね」

「私はどう見てもイタリアだけどね」

目も、そして配色の識別力も衰えてしまった友人。

友人は赤の、わたくしは黄色の椅子に腰かけて「ふぅ~!はぁ~!」

上野の森を抜けて広小路方面へ…公園の桜はまだまだと言ったところ東京の開花は3月20日ごろと聞いていますが、間に合うかな~と思うほどの蕾のかたさ…勝手に開花予告まで出されちゃって、ホント間に合うかな?何んとなくガンバレと声を掛けておきました。

上野の美術館巡りの愉しみは飲食店が多くあるので鑑賞後のランチ…今日は「とんかつが食べたい」と叫んでいる友人優先で蘭亭・ぽん多(ぽんた)ののれんをくぐりました。

「シーレの「肩掛けを羽織る裸婦、後ろ姿」ってあったじゃない?13章の部屋だったかな?あれのアキレス腱の美しさって言ったらなかったねぇ~」

「うん!正確な描写じゃないけど美しい!って思った!」

「シーレは良いわぁ~もうウィーンのレオポルド美術館にも行くことはないだろうし…見納めかなぁ~」

「もう何もかも、これで最後って思っちゃうもんね」

「うん。ここのとんかつも今日が最後だと思うと…美味いよぉ~」

ぽん多のとんかつは衣が白いのが特徴で、ふわっとしております。

ふたりともロースかつを注文したのですが…「脂が美味しい!ラードで揚げてるのに胃にもたれない」と友人は気に入った様子です。

「目の前に黒門町小学校あるじゃない?」

「うん。小椋佳と天海祐希の母校でしょ?」

「そうそう!母方の従姉妹たちの家が小学校の脇にあんのね。それで従姉妹たちも黒門小学校で同窓なのよ」

「え~っ!すぐそこぉ?すごい繁華街に住んでるんだねぇ~」

「昔から花街と風俗店があって子どもの教育には良くないよね」

「この並びにもソープあったよね?目の前で子どもが勉強してるのに、よくやるわ!」

あっさりと完食。

「最近サ、家で揚げものってまったくしなくなっちゃったから、久しぶりでホント美味しかった」

「あーた、昔から家で食事なんか作らないって言ってたじゃない。取材で何時に帰れるか判らないから無駄になるって…それでいろいろあって結婚生活、上手くいかなかったんだよね?」

「あのサ、せっかく良い絵を観てよ、美味しいとんかつを食べたってのに、なんで私の結婚の話になるのよ!」

「良いんだよ、今が幸せなら…」

「……幸せだよ!それより新潮社(友人が勤めていた出版社・呼び名になっております)がね、アメリカ映画の「ワース・命の値段」ってのが面白いって言ってたわよ。観に行かない?」

「あ~ニューヨーク貿易センターで起きた航空機テロ事件だね?政府が打ち出した保証金と言うか見舞い金の交渉の映画だよね?」

「うん、弁護士と被害者遺族の駆け引きだって言ってた。試写で観て良かったらしいよ。映画館なら花粉症シャットアウトだから良いんじゃない?」

「そぉ?スケジュールが合えば行こう」

店を出てから腹ごしらえ?

目と鼻の先にある湯島天満宮の「梅まつり」に寄って行こうとなりまして、従姉妹たちの家を横目に見ながら観梅と参りました。

こちらはほどほどの人混みでありましたが「梅まつり」ですからね、そこそこの人出がなければ淋しい感じも致します。

「梅まつりへ繰り出すんだったら一杯やるんだったねぇ~」

「お猪口(おちょこ)一杯でも飲むんだったねぇ~」

まだまだ人生を愉しむコツがあるようです。

 

『紅梅の香とすれちがふ梅祭』

(こうばいのこうとすれちがううめまつり)

池田いつ子