「今日しか行く日ってないわよっ!」…そう急き立てられ、やって参りました外苑前のいちょう並木!

待ち合わせをしたホームで「なんで今日しかないわけ?」と誘ってくれた友人に訊きました。

「たまたま・たまがわ予定が空いちゃって、コロナも第8波が始まったって言うし、インフルエンザの患者もボチボチ外来に来てるって聞いてさぁ~来週になったら東京の感染者数がボーンと1万人突破しちゃうわよ!それでね、新型コロナとインフルエンザを同時に感染しちゃうこともあるんだって!それを何んて言うか知ってる?」

「コロナとインフルエンザって同時に感染できるの?」

「できるのって…憧れみたいな言い方やめなさいよ!フルロナって言うんだってよ。すっごい造語だよねぇ」

「なになに、フルロナ?インフルエンザのフルとコロナのロナ?へぇ~!誰が言い出したの、尾身さん?」

「尾身さんにそんなセンスない!」

「センスって言うほどの造語じゃないよぉ~」

「しっかし何んでも略しちゃう日本人って、スゴイねっ!」

「流行語大賞、取っちゃうかもよ」

「いくら何んでも、それは無理でしょうよ」

  

東京メトロ・銀座線「外苑前」駅の案内板、銀杏の黄葉(こうよう)を意識しているのか、真っ黄色!

「張り合ってんのかね?」

「案内板って、どこも黄色じゃない?銀座線のシンボルカラーって黄色じゃなかったっけ。たまたま・たまがわだよ」

「今日のあーたってサ、たまが好きだね」

階段、エスカレーターを乗り継いで、やっと地上に上がってきました。

午前11時30分…外苑前・いちょう並木は思ったより人が少なくてホッ!

上の写真は絵画館を背にして青山通り方面を撮った1枚です。

「まだ黄葉してない木が多いね。日の当たる具合で決まるんだろうけど、思った以上に壮観だねぇ」

「いやいや良い眺め!いちょう並木って2列2列になってたんだ!」

  

わたくしたち東京産まれの東京育ちでありますが、東京タワーにも東京スカイツリーにも上ったこともなく、東京の観光地と言われているところも、あまり足を運ぶこともなく命尽き果てる運命を背負って生きております。

わたくしは下町・深川ですから世田谷区だの目黒区だの、今日いる港区にも来る機会は少なく、また友人は友人で西大井に昔から住んでおりますから、江東区や江戸川区などのいわゆるゼロメートル地帯にはめったに来ることもなく暮らしております。

「外苑前なんてサ、何十年ぶりかもよ。もうこの先・来ることもないだろうねぇ」

人が少ない並木道をゆっくりのんびりと歩くのは、とても解放感があって気持ちが落ち着いて参ります。

「並木道ってサ、ひとりで歩くと何んかもの淋しいって言うか、仕方なくヒマそうなあーたを誘ったんだけどね、声掛けて良かったわ。見てよ、周りはカップルばっかじゃん。あとはふたり連れが多いねぇ。おじさんはどこに行ってもひとりだわ」

「ベンチにひとり座ってる女性、ひとりだけどステキじゃない!あぁなりたいねぇ」

「外国の人だから、そう見えるのよ!ピンと背筋が伸びってカッコイイよね」

「ここはニッポンだ!あちしたち日本人・原住民もシャンとしようよ!」

お昼を過ぎたあたりから急に人が混んで来たように思います。

「銀杏の下でお茶しようよ。軽いもの、食べられるかもしれないね」などとカフェの前まで行ってビックリ仰天!

どの店にもゆうに20人は並んでおります。

これは1時間や2時間は並ばないと順番は来ないでしょう。

「ここはきっぱり諦めよう。飲まず食わずでいちょうを堪能しようではないか!」

  

夜にはライトアップされるという銀杏並木…この季節、いちょうは休む間もなく木にとってはえらいストレスが掛かることでしょうね。

この絨毯のように敷き詰められた「いちょうの葉っぱ」、わざと掃かずに散るそのままにしているのだと思います。

車道は毎日きれいに掃き集められていることでしょうけど、いちょうの葉は油を多く含んでいるので土に還るのに時間が掛かる落葉樹とされています。

「その短い足、滑らないように気を付けて歩きなさいよ」

「短い方が安全なんだわよ」

先日、テレビのニュースで見たのですが、若い女性の方がいちょうの葉を丁寧に重ねて「バラの花」に仕上げていたのを見ました。

さっそく真似てみましょう。

けっこう手間が掛かってしまいましたが「黄色いバラ」の完成!

「わぉ!きれいに出来たねぇ~不細工なあーたが良く完成させたね」

「あのね、不細工じゃなくて不器用ねっ!ったく、どさくさに紛れて言いたい放題だね」

「これ、黒のタートルセーターに合わせたら映えるんじゃない?黒を好んで着てた向田邦子だったらサ、どんな着こなしを見せてくれたかね」

外苑前の「銀杏並木」は樹齢およそ80年有余年経つそうで、この場所に植栽されて70年を超えたと聞いています。

銀杏は現存する最も古い全世界の植物であると東京農業大学で教えて頂きました。

「大昔の人たちもサ、ギンナン炒って一杯飲んでたのかねぇ~ロマンを感じちゃうなぁ~」

「こんな強烈な臭いを放つギンナン、どこにロマンがあるのよ」

「殻付きギンナン、喜んで食べるくせによく言うよ!」

「来年はサ、みんなにも声掛けて全員で来ようよ」

その前にフルロナに罹らぬよう用心をし、感染防止を徹底せねばなりますまい。

いちょうの黄色は注意喚起の色と胸にしっかりと刻み、友人とバイバイ!

今日は愉しかった!誘ってくれて、ありがとう!

 

 

『歯をもつてぎんなん割るや日本の夜』

(はをもってぎんなんわるやにほんのよ)

加藤楸邨(かとうしゅうそん)