地上から約40メートル、12階となる我が家・マンションのベランダではありますが、わたくし・きちんと地に足がついた暮らしをしております。
眼下には運河と公園の緑を望むことができますが、わたくしなりにそれぞれの季節に合わせながら草花の世話をし、目で愉しみ、その花の色合い・香りに心も癒されています。
カエデとケヤキの盆栽もまた、その芽吹きから若葉の美しさや紅葉、落葉へと四季の移ろいを感じさせてくれます。
猛暑が続いた8月の強い日差しで葉っぱがジリジリと焼けてしまい、ここ数年はきれいな紅葉を見ることができなくなってしまいました。
日陰に移したり、風通しの良い台に乗せたりしているのですが、なかなか素人での世話は難しく、夏になるとカエデにもケヤキにも申し訳ないなぁ~と思ってはいるんです。
今朝、ベランダの排水溝や床を掃除しようとカエデの鉢を持ち上げようとしたら…下に何かいるような?
「ゴキブリィ~?」
このマンション、不思議とゴキブリが出ないんですが、ベランダにはいるかも知れませんから、素早い動きのゴキブリに備えながらも、そぉっと覗いて見ました。
ゴキブリにしてはかなり大きい!
もうね!足で潰す強い気持ちでもって、カエデの鉢を持ち上げてみたんです。
「えっ!えっ?何、コレ?モグラ?」
いやいや…モグラって土の中で生きる動物だよね?
地上に出て来るときは曇りとは言え、真っ黒なサングラスしてるでしょ?
ピクッとも動きません。
恐々ですが、横にしゃがんで観察…耳がある。これなら人の話を聞くかも?
あれ?後ろ脚の上あたり、ドクンドクンと波打っています。
生きてる…太い血管の力強さが伝わってくる!
ビックリが収まると冷静に観ることができます。
かぎ針のような鋭い後ろ足、折り畳んである黒い羽…「コウモリだぁ~!」
ここ江東区をはじめとする東京23区には、けっこうな数のコウモリが生息しています。
「東京コウモリ探検隊」と言う一風変わった観察チームがあるんですが、メンバーとしては自分の住居の近くを観察し、飛んでいる範囲と塒(ねぐら)を確認するだけと聞いています。
従って観察時間は日没時刻だけ。
コウモリは最高気温が20℃以上になると活発な動きを見せるそうです。
リーダーが都内に住むメンバーのデータを集め「コウモリ生息マップ」を発表してまして、それはそれは興味ある結果が出ております。
練馬区から世田谷区、北区に板橋区。繁華街である港区に中央区、大田区、品川区、江戸川区など河川敷きのある場所には必ずいるとの報告がなされ、橋の下、高架下に群れをなして塒にし、人家の軒下、屋根裏、雨どいにも侵入して来るとのこと。
江東区も夕方になりますとコウモリが飛んでいる姿を見掛けることがよくあります。
夢の島あたりにはきっと群れをなして蚊や羽虫や、時には昆虫を飛翔しながら捕食…超音波機能を持つコウモリならでは夜のハンターです。
わたくしの母は「蚊喰鳥(かくいどり)」とも呼んでおりました。
普通、コウモリと言えば洞窟などの天井に逆さまにぶら下がって休む姿を想像しますし、「ダーウィンが来た」の映像でも図鑑でも、こんな床の、それも植木鉢の下で蹲(うずくま)った格好で熟睡しているコウモリなんて見たことありません。
「弱っているのかな?」
東京に生息しているコウモリならば「アブラコウモリ」と断定して良いかと思います。
このコウモリは目が退化してしまっているそうですが…よく判らんなぁ~
コウモリは吸血鬼・ドラキュラと合わせて不気味な生き物として描かれていますが、哺乳類なのに空を飛べるのは、この地球上ではコウモリだけと分類されていて、その顔かたちもわたくしたちには馴染みがありません。
ドラキュラはルーマニアで作られた物語でありますが、ヨーロッパには血を吸うコウモリもいると聞いています。
家畜である馬や鶏に牙を立て吸い付くらしいのですが、日本には吸血コウモリは生息しておりませんので安心です。
日が照って来たけど、大丈夫かな?
もうどこかに飛んで行ってくれたら良いんですけど…もう1回だけ、見てみよう。
今度はビニール手袋をして、そぉ~っと。
「まだ、おるわ!」
ちょこっと耳と足を動かしたぁ~!
いきなり羽を広げて、バサッと顔面に張り付いて来たらどうしよう!
急いで、然しながら植木鉢の下敷きにならぬよう気を付けて被せちゃいました。
「お、落ち着け…おみえちゃん。そうだ!落ち着かなきゃっ!」
びっくりしたなぁ~ニンニクと十字架をぶら下げないと太刀打ちできないかも。
アメリカのコミック・バットマンの活躍を思い出しはしますが、なんでカエデの植木鉢?
我が家を守ってくれるために来てくれたのかな?
熟睡しているようだし、シッシと追っ払うわけにはいかないなぁ~
太陽の光には弱そうだし。
日没になったら、どこかへ飛んで行ってくれることを願いながらお八つの時間に致しましょう。
今日のお八つはアンデルセンのデニッシュを頂きます。
丁寧に淹れたコーヒーは香りと共に、静かな気持ちにさせてくれました。
「やれやれ66年も生きてると、実にいろんなことに出くわすなぁ~」
『空はまだ薄目を開けて蚊喰鳥』
(そらはまだうすめをあけてかくいどり)
清崎敏郎(きよさきとしろう)