全国的に雨降りとなった今日、低気圧に押しつぶされそうになりながらもパチッと目が覚めちゃった!
覚めちゃったからには、今日も一日なんとか生きて行かなきゃね。
台風が運んできた活発な雨雲が島根県の上空で「線状降水帯」となって停滞し、大変な大雨を降らせているとニュースで知りました。
積乱雲群が発達、とにかく同じところに居座って長時間に亘って雨を降らせると聞き、西日本には最大級の警戒が出ているそうです。
茶色く濁った川の流れを見ているだけで足が竦んで参ります。
子どもの頃に経験した台風での川の氾濫。あの水害の怖さは今も忘れることはなく、現在住んでいるマンションを選ぶとき、とにかく水浸しに遭わない上の階にしてぇ~…で・12階に落ち着きました。
葉に落ちる、この一滴が集まって大河となって襲って来るんですから、もう防ぎようがありません。
人は水がなければ生きていけぬと解っております。
それでも…恨めし気に空を見上げてしまいます。
コロナだし、雨だし…どこにも行かない・どこにも行けない。
もうこうなったら本を読むか食べるか、あとは寝るっきゃないねっ!
お昼ごはんをたらふく食べて、本を持ってベッドに行こうとしたら…幼馴染み・あきらくんのおっかさんから電話だよぉ~
「なに?」
『なにって何?受話器を取ったら普通もしもしでしょ?ウンなことより、あーたサ、日曜劇場「TOKYO・MER 走る緊急救命室」って録画してないよね?』
「テレビドラマは見ないからね。あーたこそ何があろうと毎週欠かさず録画してんじゃないの?」
「録ってるわよ。月曜から日曜までドラマと言うドラマはびっしり録ってるわよ!それがサァ~今日ゆっくりまとめて見ようと思ったらね、1日放送の5話…オリンピックのサッカー放送が延びて、25分くらいかな?ドラマが尻切れトンボになってんの!これからって時なのよ!エレベーター内に閉じ込められちゃった妊婦がね、破水しちゃってエレベーター内で帝王切開することになったのよ。そのメスを入れるところでサ、録画が終了しましたってテロっプが出てプッツンよ!こっちの頭がプッツンしちゃうわよ!あの後どうしたろか、妊婦さん』
『知らないよっ!緊急救命室が駆け付けてんでしょ?最後は何んとかするだろサ」
『あーたって、ホント冷たいよね!普通はね、日曜の昼間に再放送するんだけど、これまたオリンピックで放送しなかったの。どうしたらいい?あぁ~なんか面白いの録画してないの?』
「あのね…世の中は大雨で大変なんだよ。そんなことはMRIに任せておけばいいんだよっ!」
『MRI?違う!ちがう!MERね。MRIはホラ、磁石で検査する機器だから。閉所恐怖症のあーたは受けらんない検査だわよ』
「今はね、オープン型MRIってのがあるの。あっ!最新作の「香川照之の昆虫すごいぜ!」ってのがあるよ、見る?そんなの見ない?じゃね、切るよ!」
『ちょっと待って、プレイバック!今の言葉、プレイバック!あきらがね、電話代われって…』
この幼馴染みひとり息子とは思えない出来の良い子でして、美大院生の後期終了過程に籍を置いてるあきらくんであります。
『ふたりして何んの話ししてんだよ!あのサ、この前・福富太郎コレクション展があった東京ステーションギャラリーでね、北海道の木彫り彫刻家・藤戸竹喜(ふじとたけき)の展示会が開催されててサ、先週、ボギ先輩と観に行ったんだよ。誘われた時、熊の木彫りかぁ~って思ったんだけど、ボギ先輩って彫刻科専攻だからね、付き合ったわけ。それがサ、熊かぁ~ってどころじゃなくて、すげぇ感動した。等身大のアイヌ民族の作品群の迫力っての、静かに立ってるだけなんだけどアイヌ人の魂みたいなのがビンビン感じるんだよ。おばちゃんも本物に触れて来た方が良いよ。チケットは前もってローソンで買わなきゃダメだよ』
「そうだよねぇ~あーたのおっかさんと話してるヒマがあったら、ぜひとも行きたいわ!」
『あのサ、おばちゃんのお兄ちゃんの話。ボギ先輩にも話したら、超・受けちゃったよ。あの話に出て来た木彫りの熊、藤戸竹喜の作品だったらサ、すげぇ~ってマジ受けたんだよ。今、思い出しても笑えるわ!でサ、お薦めの本があったら。またポストに入れといて。電話、お袋に代わる?』
「いいっ!このまま切っちゃっていい!あっ!日曜劇場の第5話、再放送いつやるかネットで調べて教えてやってよ。あらすじまで聞かされて喧しくてしょうがないよ」
『知らねぇよ!じゃね』
あぁは言ってもね、ちゃんと調べるんですよ、あきらくん!
さて、ボギ先輩と言うのはあきらくんの通っている美大の彫刻家志望の今年27歳になる院生だそうで、わたくしは話に聞くだけで会ってはおりません。
なぜに「ボギ」なのか…覚えておられる方がいらっしゃったら嬉しい!
あのボラギノールを愛用している痔持ちの美大院生でございます。
いつも学内での移動の際には痔専用のクッション…あのベーグルパンそっくりのドーナツ型のクッションを小脇に抱えているのだそうです。
その話をあきらくんから聞いてから、わたくし大好きだったベーグルパン、このところ口にしておりませんです。
ボラギノールばかりではなく、今度「ヒサヤ大黒堂」の軟膏薬も使ってみたら良いのになぁ~と思うのですが…
長年使われていた愛着のある呼び名が変っちゃうのも可哀そうかな?
それにしても、わたくしの兄の話をボギ先輩に話すことはないじゃないかっ!
兄が愛する友ちゃんを追いかけ北海道へ移住してから、そろそろ6年になりますか。
美大院生のあきらくんと字は違いますが、読み方は一緒の名前でして兄は「明」でございます。
地元・深川、門前仲町の家を後にしてから2年、3年ぐらいまでは、ご近所のみなさま方、八百屋に肉屋、魚屋のおぃちゃん、金物屋に乾物屋、せんべい屋に鰻屋のおばちゃんに至るまで「東京に帰って来た時にサ、うちには寄らなくていいって言っといてくれよ」…「北海道からオン出されないように大人しくしてりゃぁ良いけどねぇ~」…「やっと静かになったよ。こんな平和な時が来るとはねぇ~長生きはするモンだ!」などと言われるほどヤンチャな兄でして、嫌われているんだか、愛されているんだか、ちょっと判らない微妙なキャラであるかと思います。
その兄が…ひところウワサに上がったことがありました。
「ねぇ、おみえちゃんよ。あきちゃんがサ、北海道から黙って帰って来たらしいって、みんなが言ってるよ」
「えっ!こっちにはなんにも連絡ないよ」
「なんでもね、熊が鮭くわえてる木彫りがあるだろ?あれを胸にこう抱えてサ、そこの電信柱の陰に立ってたってよ。どうしたのかねぇ~ひもじい思いをしてるんじゃないかぃ?」
それこそ…知らないよっ!
まぁ~今のところは友ちゃんにも追い出されることもなく仲睦まじく北海道で暮らしている…はずです!
まさか…明日あたり、実家の様子を見に行こう!
受話器をあてていた耳が痛くなっちゃった!
しょうもないウワサを流したのは八百屋のおぃちゃんだと思うんだよねぇ~兄とは同い歳で、それこそあっちはあっちで幼馴染みであります。
そのおぃちゃんとこで昨日・買い求めて来た茄子と赤く熟したトマトを使って早めの夕飯と致しましょう。
茄子は揚げ浸しに…トマトはベランダで摘んだ大葉とともにポン酢でサッパリと頂きたいと思います。
今日も無事に過すことができました。
明日はどうなるのかさえ分かりません。
この日・この時に戻りたいと懐かしく、或いは切実に思う時が来るやも知れません。
そう思うと…今いるこの時こそ奇跡の真ん中にいるかのよう。
おぉ!すごい!感謝!
『台所赤くなるほどトマト置く』
(だいどころあかくなるほどとまとおく)
右城暮石(うしろぼせき)