朝一番…9時10分に届いたのは、リバティ・ロンドンのパジャマ!
娘からのクリスマス・プレゼントであります。
正確に言えばクリスマス・イヴ・プレゼントですが、母を忘れず贈ってくれた、その気持ちが嬉しい!
「でも…これ来て永眠しろって意味かぃな?」…あんまし深く考えるの、やめとこ。
「そうだ!」
今日は都立木場公園内にある現代美術館で開催している『石岡瑛子展』を幼馴染みと観に行く約束をしております。
このステキなプリントならブラウス代わりにして…こげ茶色のVセーターと合わせたら、ちょっとシックな装いになるかも…
午前11時に待ち合わせの場所・マンションの正面玄関に到着。
このコロナ禍で母親が少し元気がなくなってしまったと、ひとり息子・美大院生のあきらくん…母親を心配するラインを寄こしましたので、外に連れ出そうと誘いました。
わたくしの姿を見つけ、トボトボと玄関を出て来る幼馴染み。
う~ん…見るからにショボンとして笑顔がないなぁ~
「お・はよっ!あったくて良かったね。歩いて20分くらいだからサ、ぶらぶらしながらゆっくり行こう」
「…あーた、着替える時間、なかったの?それってパジャマでしょ?」
「えっ?パジャマって判る?」
「やっぱり…判るわよ、襟がパジャマそのものじゃない。バカみたい。私、一緒に行くのヤダ!」
「これね、今朝届いたばかり。娘からのクリスマス・プレゼント!嬉しくてね、着て来ちゃった」
「そうか…でもサ、マフラーで襟元・隠しなさいよ。ホント、バカ!」
とは言いながらも、ふわっと笑ってくれました。
人工河川・仙台堀川にドーンと架かる橋は人道橋(じんどうきょう)・「木場公園大橋」で、この公園のシンボルともなっています。
250メートルの斜張橋(しゃちょうきょう)造りで、塔からケーブルが張られていて、ダイナミックではありますが華奢な印象も受けるかと思います。
階段を上がって行きますと向こう・真ん前に東京スカイツリーが見えて参りました。
3年間の改装期間を終え、昨年3月にリニューアル・オープンした東京都現代美術館で、わたくし久しぶりの来館となりました。
予約チケット優先と書いてありますが、当日券でも今日は待ち時間なしでオッケーとのこと。
一般入館料1、800円のところ、マイナンバー・カードを提示すれば65歳以上のシルバー特典割引きで1、300円と500円もお安くなります。
チケット売り場で思わずガッツポーズ…急いで展示会場へ!
入場制限がなされていて、混み合うことなくひとつづつの作品をゆっくりと丁寧に観ることが出来ました。
石岡瑛子さん、東京藝術大学美術部を卒業後、資生堂の入社面接で「お茶汲みとしてではなく、男性と同じようにグラフィックデザイナーとして同じ待遇で採用して欲しい」と、はっきりと申し出たことはつとに有名なことであります。
幼馴染みのひとり息子・あきらくん・お薦めの『石岡瑛子展』…あきらくんもグラフィックデザインを学ぶ院生でありますから、大いに刺激を受けたことと思います。
懐かしい資生堂のサンオイルのポスターは白い水着姿の前田美波里さん。
1970年代のパルコのキャンペーン・ポスターは原色使いが鮮やかで、今も色褪せることなく強烈なメッセージを訴えてきます。
あれはフェイ・ダナウエィ?若いなぁ~
三島由紀夫の「金閣寺」の大きな模型も展示され、石岡瑛子さんのプロジュースする才能にも改めて感動しました。
山本海苔店の贈答用の缶、AGF・マキシムのパッケージ、角川書店での本の装丁、マイルス・デイヴィスのレコードジャケット写真、東急デパートのロゴマークなどなど…息つく間もなく魅入ってしまいます。
最後は圧巻の衣装の展示でした。
オペラ、演劇舞台、サーカス、オリンピックのユニフォームから映画の衣装とあの映像で観た数々の衣装が目の前に並んでいるんですから、もうふたりして興奮状態!
迷路のような展示会場も非日常的で刺激になりました。
中庭やテラスに出てみれば、どこもかしこも芸術が溢れております。
「1、300円、ちっとも高くないね。観てるだけでエネルギー使っちゃった!なんか食べない?」
家に閉じこもりがちだった幼馴染み、食欲が出て来たようです。
ここであきらくんの情報が役に立ちました。
「地下にね、100本のスプーンって言うカフェ・レストランがあるって、あきらが言ってたわよ」
「100本のスプーンって豊洲にもあるよね?」
「うん。豊洲はね、あちし友だちと映画観たあとに行ったことあんのよ。美味しかったわよ」
美術館に入ってるカフェ・レストランですからね、メニューもひと工夫してモナリザです。
「ここって美術館に入館しないと入れないの?」
「そんなことないんじゃない。お客さん、外からも入れないと商売あがったりだわよ。何・食べる?」
「う~ん。サラダのハーフってないの?」
「サラダだけ?もっとなんかこうパワーが付くもん食べようよ。この豚・ローストってのは?」
「ブタ?ポークなら食べる…」
めんどくさいヤッチャなっ!
「そんな菜っ葉をチマチマ食べてサ、あーたはヤギかバッタか?」
「これサ、ドレッシングが足りなくて、味がしない…」
「ヤギもバッタもノン・ドレッシングだわ。自分で頼めばいいでしょっ!手間が掛かるヤッチャなっ。すみません、ドレッシングもらえます?」
カボチャをベースにしたドレッシングだそうです。
「美味しい。そのポーク、ひと切れちょうだい」
フォークが素早く伸びて来て、あっという間にふた切れぶっ刺して持って行かれました。
まぁ~今日の美術鑑賞とランチは幼馴染みを元気づけるためですから、ここは好きにさせましょう。
「お礼にニンジン・あげる」
わたくしの苦手な食べ物のひとつに生のニンジンが入っております。
「あちしはね、馬でもウサギでもないの!ニンジンなんぞ要らんわ」
広々としたレストランで奥のテーブルからでしょうか…赤ちゃんの泣き声や子どもの声がこだまのように聞こえて参ります。
この「100本のスプーン」は若い世代の方々が家族連れでも気軽に来店できるようにと色々な取り組みをしていて、赤ちゃんの離乳食は無料で用意されておりますし、テーブルに椅子席の他に私たち・シニアでも寛げるようにソファの席もございます。
「赤ちゃんの泣き声、久しぶりに聞いた。なんかくすぐったい感じがする」
「そうだねぇ~すっごい元気が良い赤ちゃんだね!なんか楽しくなっちゃうね」
「うん!懐かしいよぉ~あきらも大きくなってサ、毎日デザイン漬けの毎日だし…旦那も仕事に精出してるし…私だけだよ、なんにもしてないの…」
そうか!幼馴染みが元気がないのは、コロナ禍にあって疎外感を抱いちゃったのかも知れないなぁ~
「あきらを大きくしたの、あーたじゃない。旦那が仕事に精・出せるのも、あーたが家を守って来たからじゃない!ふたりともあーたがいなかったらなんにも出来なかったよ。すごいよ!」
「…だって、そんなこと当たり前じゃない」
「その当たり前のことが当たり前に出来てんだから、これはすごいって!ふたりとも感謝してるって!」
「…そうかなぁ~まだ泣いてるね、赤ちゃん。お母さん、頑張って育ててるんだね。そのパジャマ、似合ってるよ」
「へへへ、ありがと」
今夜は思い切り豪華にして、ケンタッキー・フライドチキンを買ってクリスマス・イヴに食べまくってやる言って幼馴染みは帰って行きました。
さぁ~て、わたくしめも楽しい「シングル・ベル」を迎えるとしますか!