まぁ~立派な蕪だこと…手にずっしり、実が詰まった美味しさが伝わって参ります。
昼間の気温24度…この陽気ですけどコトコトと含め煮にしちゃおうっと!
昨日、わたくしの幼馴染み・さわちゃんが豊洲市場・青果棟で競り落とされた野菜を届けてくれました。
「シイタケはサ、形が揃ってないハネ物だけど、味は濃いから。ザクザク切って生のまんま冷凍しとけば令和3年の正月もちゃんと迎えられるかモォ~!」
「冷凍のシイタケで迎える新年って言われてモォ~ありがとさん」
一応、礼を言って頂きました。
出汁は昆布にして、あとで一緒に食べましょう。
油揚げで淡白な蕪にコクを含ませたいと思います。
酒をたっぷり…調味料を足していこうと薄口しょう油に手を伸ばそうとしたら…あらら・電話
「もしもし?あら~元気?」
元・大手出版社に勤めていた友人からでした
映画コラムを担当してから最新映画は試写会のみで観ることができ、わたくしもおこぼれに与ったものでございます。
役得満載・持つべきは友人のひとりでありました。
「ありました」と過去形なのは、今年の1月で退職…がっぽりの退職金を手にした愛すべき友人…となるはずだったんですが、このコロナ禍でちっとも回って来やしない!
「あーたサ、『おらおらでひとりいぐも』って原作・読んだ?今ね、それが映画化されて公開中なんだけど、私サ、『おらおらでひとりいぐも』で近くの映画館で観て来たのよ」
「読んだよ、2017年刊行だったかな?映画・どうだった?」
「う~ん…あれってサ、170ページもなかった中編でしょ?それなのに映画は137分なのよ。ちょっと延々とおんなじことの繰り返しで飽きちゃった。途中でトイレに立つ人もけっこう居たんだけど、そのまま帰っちゃったんじゃないかなぁ」
若竹千佐子・著『おらおらでひとりいぐも』…当時63歳での刊行で第54回・文藝賞受賞。史上最年長での受賞で、第158回芥川龍之介賞も受賞し大変話題になりました。
物語は74歳になる老女・桃子さんは夫に先立たれ娘とも疎遠の生活。
毎日毎日、目玉焼きとトーストの朝食を食べ図書館へ通う日々でありました。
ドキュメンタリー番組で見た地球46億年前の歴史の成り立ちやマンモスなどの生き物が大好きで大学ノートに清書するのが楽しみな暮らしを送っています。
ところが…桃子さんの脳内では他者と会話をするようになってしまいます。
認知症かと心配もするのですが…さて結末は?
平平凡凡な暮らしを2時間以上の映画化となると…その俳優たちの演技が問われるところですが…
「田中裕子、蒼井優はそつなく演じてるんだけどもね、歯並びの悪い濱田岳とその上を行く宮藤官九郎(くどうかんくろう)が出てて、そんなに歯は見えなかったんだけどね、桃子さんの頭の中にある寂しさが姿となる役を演ってんの。あとはセリフ棒読みの東出昌大だし…図書館・司書役の鷲尾真知子は安定した上手さだったかな」
「原作には出て来ない役だねぇ。ちょっとお鍋の蕪に味付けするから待ってて」
塩・少々と薄口しょう油を差して、弱火に掛けて受話器を握り、「もしもし、お待たせぇ~」
切れてはいないようだけど、返事がない。
「もしもし?もしもーし!いないの?」
「はいよ。トイレ行ってた」
付き合ってらんないよぉ~
表紙の裏には原作のイメージの桃子さんが描かれております。
田中裕子さん演じる桃子さんより、イラストの方がオシャレで可愛い感じが致します。
物語の中では一人称は東北方言(南部弁?)、三人称は標準語で書かれております。
「東北の方言、何んとな~くゆるくて耳に優しかったわ。蒼井優が上手に話してた」
「蒼井優って『フラガール』で主演やった時も、茨城県の言葉だったけど自由自在に操ってたよ」
「耳が良いのかもね」
「活字でも東北弁の心地良さは感じることが出来たよね?」
「うん、この時期わざわざ観に行くほどではないかもねぇ~朝一番か、夜の上映だとほとんど貸し切り状態だわよ」
「映画館に行くまでの交通機関が心配なのよ…って必要な用事の時は利用せざるを得ないけどね」
「12月公開予定の映画、邦画・洋画といろいろ掛るんだけど、コロナ禍でちょっと辛いモンがあるね。健康あってこその娯楽だからね。鍋、大丈夫?」
「あ~じゃね」
「また情報あったら電話する。バイバイ」
納戸の本棚にある愉しい図鑑や歴史書であります。
図書館で桃子さんが手にした図鑑や歴史本もこんなんでありましょう。
お鍋の中では蕪がこっくりと煮上がっております。
トロリとした触感が味わいたくて、あんかけ仕立てにしてみましょう。
本と映画のタイトル『おらおらでひとりいぐも』は宮沢賢治が幼くして亡くなった妹を偲んだ「永訣の朝(えいけつのあさ)」の一節かと思います。
『oraorade shitori egumo』…ここだけがローマ字の小文字で表現されておりました。
(おらおらでしとりえぐも)
前後の詩を合わせて読みますと活字の行間に北国の白い風景が見えるようであったことを思い出します。
思春期の初々しい感性と淡くも切ない気持ちとが蘇って来るようであります。
蕪にもう少し味がしみ込むまで「おらおらでひとりいぐも」、再読してみようと思います