我が家の無口なペット・メダカでございます。

一年365日・年がら年中、同じエサを遣り続けていても、何ひとつ文句も言わず、もっとミジンコが多く入ったエサにしてくれだの、フレッシュな生エサを寄こせなどと面倒な注文も一切せず、ただただ素直に水面に浮くエサを呑み込む本当に手間が掛からぬメダカたちです。

手を掛けようと思えば、いくらでも掛けてやれるのですが、ここ数年は何かと忙しくしておりましたもので、今のところメダカもこれ以上もそれ以下も求めていないようで助かっております。

悠々と泳いでいるブチメダカにヒメダカ、シロもおります。

内臓と目が青に光る青幹之(あおみゆき)も底の方をいるはず…何代もこのメンバーで子孫繁栄を繰り返しておりまして、年に1度、産卵期前に新しいメダカを仲間入りをさせ、新芽がたっぷりと付いた藻も入れ替えたかったのですが、今年は不要不急の外出を控えているうちにあれよ・あれよと言う間に卵を抱え、産卵…している?

去年のカレンダーを見直せば、とっくにふ化している時期でございました。

   

皐月の空を映している水面に見えるのは、夫が亡くなってから引き継いだ、謂わば形見のメダカたちであります。

ひと月に1回ほど、はびこった藻をこそげ落としたり、底に敷いてある小石にフンが溜ったら水替えをするだけ・の雑な飼い方にも決して反旗を翻すことなく、まぁ~それなりに懐いてくれています。

産卵を終えた何匹かのメダカは、その寿命を終えますが、亡き夫が余命を宣告されてから「ふ化した子が大きくなって命を繋いだんだ。この狭い水の中で大したものじゃないか。それぞれの寿命を生きて死ぬ。それを黙々とやってる。メダカにその深さの意味を教わるよ」…だれに問うわけでもなく、悲観するわけでもなく、淡々と申しておりました。

はて…わたくし、なんと応えたものか、はっきりとは覚えておらず…きっと涙がこみ上げてきて、そっと夫の後ろを離れたろうと思います。

卵を産み付ける藻を引き上げてじっくりと見詰めると…黄金色に光る卵、ありました!

すぐに汲み置きのバケツに藻を移したら…あれ?藻を浮かした瞬間にふ化したの?藻の中に潜んでいたの?

小っちゃいメダカ・2匹がチョコマカと必死で藻から浮かび上がっておりました。

「おぉ~!」…今年も感激の一瞬を味わうことが出来ました。

「緊急事態宣言」が解除されましたし、新しい藻と数匹のメダカを買い求めに、わたくし・雨が降る前に颯爽と行って参ります!

 

『目高たちには集団の美しさ』

(めだかたちにはしゅうだんのうつくしさ)

後藤比奈夫(ごとうひなお)