花屋さんの店先は、いつも季節の花で溢れています。

コンクリートに囲まれた東京では、四季の移り変わりをいち早く教えてくれるのは街の花屋さんでありましょう。

5月に入ってからカーネーションが飾られ、それはもういつもに況して華やかな装いです!

   

どの花束を手にしても「ありがとう」と子育てを労ってくれているかのようです。

東京の、日本の、世界のお母さんへ、ここから届きますように…わたくしもわたくしの母へ、この際詰まらない紅白の決め事なんぞ気にせず、赤いカーネーションを一輪・仏壇に供えました。

「元気でいるからね」

今日は、4月29日、5月6日にNHKBSプレミアムで放送された『ゴッドファーザー』、『ゴッドファーザーⅡ』の録画を観ようと体調を整えております。

何年振りかで観る大ヒット映画であります。

何しろ1作目が175分・約2時間55分の大長編。

パートⅡとなると200分・3時間20分の超・大作の作品となります。

1作目はノンストップ。

パートⅡは途中「INTERMISSION・インターミッション(休憩)」と書かれた文字の画面が入ったかのように記憶しています。

その間、男も女も一斉に駆け込む「トイレタイム」だったのですが、ポツポツとしか席を立たなっかったので館内放送で休憩を促しておりました。

本日は、どんなに長丁場になろうと我が家での映画鑑賞でありますから、トイレは心配なし。飲み物もオッケー!ポップコーンはありませんが、歯に詰まるので元々が苦手でありますから、なくともヘッチャラ。

レースカーテンを引いて少し部屋を落ち着かせ…メガネ・メガネ!

さぁ~て用意は万端、スィッチ・オ~ン!  

「あぁ~!」

映画の主題曲であるニーノ・ロタ作曲の『愛のテーマ』のイントロを聴いただけで、体が緊張してくるのを感じます。

これから画面に映るであろう、銃撃戦や切られた馬の首、流れる血、その血だまりなどが思い出され、ゾゾッと致します。

あんな残酷な場面があるのに第1作目はなんの規制もなく、パートⅡだけに「RG12(12歳未満の児童には親や大人の指導・助言が必要)」の映倫指定が記されているのです。

第1作目の『ゴッドファーザー』のポスターに、ヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)が猫を抱く姿が写っています。

物語の中でも猫を膝にあやすヴィトー・コルレオーネの場面があったかと思うのですが、この抱かれているトラ猫…

マーロン・ブランドが撮影所内で見付け、人懐こい猫だったのか、この猫を気に入り、物語の中で猫を抱シーンを提案し、コッポラ監督の了解を得たと言う逸話を聴いたのを思い出しました。

黒い縦長・長方形に「The Godfather」の文字を操る糸が印象的なロゴを背に、赤いバラを1輪挿したタキシード姿のマーロン・ブランド扮するヴィトー・コルレオーネ。

伏し目がちに写っている構図は、なんとも言えぬ不気味さを漂わせております。

フランシス・コッポラ監督は、それまでなかった手法・役者の頭の上から照明を当て、瞳が見る先をこちらにはっきりとは見せませんで、主役の顔をぼんやりと浮かび上がらせ『目は口ほどに物を言う』を封じているようにも思わせます。

  

マーロン・ブランドが演じるヴィトー・コルレオーネはマフィアの世界で尊敬と畏怖の念を込められ「ドン・コルレオーネ」と呼ばれるほどの人物。

「父親と息子、権力とその後継者の物語」を軸にコッポラ監督は描いたと言っていたと記憶しています。

このときのマイケル・コルレオーネが(アル・パチーノ)が大学出のインテリだった青年から、やがて一家・ファミリーの頂点に行く様を見事に演じておりまして、堂々とした風格と言っても良い姿に変貌していきます。

役者の凄さ、これ見たさの2時間55分間でありましょう。

  

時間を気にせず、観る格好も寝ようが立って観ようがお構いなし…赤ワインを飲むシーンが映れば赤ワインが飲みたくなり、パスタ・ボロネーゼが大皿に盛られるシーンがあれば、何んでもいいからパスタが食べたくなり…第1作目が終わったとたん…遅めのランチに致しました!

  

パスタからは程遠い冷凍してあったチキンカレー!デザートは焼きリンゴに100円のアイスクリームを添えて…掻っ込みました。

ラッキョの匂いプンプンさせて『ゴッドファーザー』を観ようとは思いもしませんでしたが、なんせ全世界でのステイ・ホームですからね、ヴィトー・コルレオーネさん、ご勘弁を。

     

『ゴッドファーザーⅡ』では、前作で描けなかった父・ヴィトー・コルレオーネの青春時代(ロバート・デ・ニーロ)と息子・マイケル(アル・パチーノ)のその後というふたつの物語を平行させながら物語が進んで参ります。

どの俳優もこの作品から評価がもギャラも上がったようで、あの『ゴッドファーザー』に出ていた俳優と聞けば、「あぁ」と一目置いたものでした。

まだ特殊メイクやCGがなかったころ、48年もの前の作品でありまして、テクニカラーで撮影された最後のアメリカ映画であると映画雑誌で読んだ覚えがあります。

人の手で丁寧に、随所にこだわりを持った職人芸の傑作であると思います。

  

『ゴッドファーザー』は第3作まで製作され、それぞれ大ヒット致しました!

アカデミー賞受賞にも輝く高い評価を受け、これからも後世に残る名作です。

3作通して描かれているのは「叙事詩的映画(じょじしてきえいが)」…2時間をゆうに超える長尺映画はすべて叙事詩的であると言われ、古くは「クレオパトラ」、「アラビアのロレンス」、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」「カジノ」などがあります。

マフィアを描いた作品であるけれど、第1作目の作品はイタリア系アメリカ人を「マフィァ視」する偏見を持たないよう、「イタリア系アメリカ人人権団体」との折衝と合意により、マフィア・コーザ・ノストラ(秘密結社的犯罪集団)という言葉を使わないことを条件に出されたと言われています。

パートⅡでは「マフィア」の言葉はありましたが、イタリア系アメリカ人のアメリカへの貢献を称えるセリフもあり、やはり緊張感溢れる作風は変わりません。

原作はイタリア系アメリカ人作家のマリオ・プーゾ。

映画が日本で公開されたのは1972年、わたくしが17歳のとき…えぇっ!そんなときがあったとは自分でも信じられません。

この写真は新宿プラザ劇場で上映された『ゴッドファーザー』を学校の友人たちと観に行ったときのものです。

写真を撮った友人は大学を卒業後、商業カメラマンとして活躍しておりますが、若干・17歳・男子の感受性で切り取った1枚であります。

そのころ墨田区・錦糸町でさえ怖くて寄り付きもしなかったのに、江東区・深川からはるか遠い新宿区歌舞伎町まで良く行ったと思います。

母親から「新宿・歌舞伎町なんぞに行ったらね、2度と帰っては来られないよ!その覚悟があるんだね?これが親と子の見納めになるかも知れないよ、良いんだね?」と脅されて出掛けたものでした。

写真にも怖そうなお兄さんが写っているでしょう?

新宿コマ劇場の隣にあったプラザ劇場でしたが、2008年にコマ劇場と共に閉館となりました。

最後の上映映画は『タイタニック』であったと記憶しております。

今ではほとんど見かけない手書きのポスター、呼び込みの絵看板が立っていて、ちょっと寄り目のマーロン・ブランドに仕上がって、あの貫禄が削がれているかと思いますが、懐かしいです!

大人700円の学生割引きで観たように思いますが、館内は禁煙の赤ランプが付いてはいましたが、明らかに煙草と判る煙が漂っていました。

今では考えられませんが、昭和の時代に育ったわたくしども・ガキンチョは子どもの健康などお構いなし・命の危機に晒されていたようなものでした。

さて…観終わったあとは、それこそ友人共々、何を見るでもなく、何を食べるのでもなく…スタコラサッサ・地下鉄丸の内線から乗り継ぎ、途中友だちとも別れ、深川・門前仲町へと真っつぐ帰って参りました。

車中での友だちとの会話…

「映画、面白かった?」

「う~んよく解んなかった。怖かったよ」

「うん…俺たちにはまだ早かったかもな」

「カタカナの名前がどれも同じだった」

「お前、読めたの?俺、字幕の漢字も解んなかった」

「英語、もっと勉強しないとダメだな」

「英語もイタリア語も…あんたは日本語から始めなさいよ」

「言葉なんか解んなくてもサ、あの迫力には参ったね。ホント怖かったぁ!あのベッドにあった馬の首って本物?ギャングってあんなことするんだね」

あのシーンで置かれた馬の首は本物で、近くの食用馬の屠殺所から借りて来たと、ずい分後になって聞きました。

その友人のひとりは大手出版社に入り、映画の編集を任されて試写会に声を掛けてもらったり、招待券やら優待券やらを手に入れ、連れ立ってよく観に行きました。

今も一緒に映画を観に行く映画友であります。

このBSでの放送も彼女が教えてくれまして、何年ぶりかで観る『ゴッドファーザー』、『ゴッドファーザーパートⅡ』をわたくし以上の思い入れで観たでありましょう。

第3作目となるパートⅢは5月13日(水)に同じくNHKBSで放送されるとのこと…全編、観終わったら、65歳で観た感想などを電話で言い合いたいと思っております。

赤ワイン片手にね!