2月末、久しぶりに千代田区内幸町にある公益社団法人・日本記者クラブで行われた試写会に行って来ました。

上映されたのは…2011年・3月11日、東日本大震災による大津波が福島第一原子力発電所を襲い、その現場で1歩も引かずに格闘した人々の姿を描いた『フクシマフィフティ』でした。

原作はジャーナリスト・門田隆将氏の著書「死の淵を見た男・吉田昌郎(よしだまさお)と福島第一原発」とあります。

「なるほど…」

    

当時、門脇氏が東京電力・所長・吉田昌郎氏に長時間に亘ってインタビューした記事をもとに書き上げたと聞くと、日本記者クラブ・10階での試写はもっとも相応しい場所であると思いました。

タイトルになった『フクシマヒフィフティ』は、福島第一原発に残り続けた名もなき人たちを海外メディアが読んだことから付けたそうです。

原発内に残り、何んとか爆発を止めようと作業員たちが必死に戦い、成し遂げられたのは、その後ろで支えた消防・救急隊員、自衛隊の隊員の方たち、そしてそのご家族、無念の思いで家に背を向け避難を余儀なくされた地元の方々であることを、この映画を観て改めて胸に刻む思いでありました。

    

東電本店、官邸、マスコミ関係を抑え気味に演出したからこそ、原発内で起こった人々の判断、決断、そして葛藤に焦点を絞られ骨太な人間ドラマに仕上がったと思います。

「こんなに必死に戦ってくれていたのに…」

わたくしは瓦礫ひとつ手にすることもなく、ただ茫然とテレビに映る有様を見ているだけで、何も出来なかった…

人生の終わりになって、自分は何んのために生きているのか?などと自問自答し、けっきょく何んの方向も指し示すことも出来ずにうろうろするばかりでしたが、答えはただひとつ。
日本が良い国になるように、己の分を弁え、住む街を愛し、
お互いに励まし合い生きて行けば良いのだろうと思います。

実話をもとにした作品ですから、俳優たちは実在の人物を体現せねばなりません。

所長の吉田を渡辺謙が、原発1・2号機当直の伊崎を佐藤浩市が、それぞれ渾身の演技を見せてくれています。

ベテランの作業員・エンジニアを演じる火野正平や平田満、萩原聖人、吉岡秀隆、緒方直人たちが秀逸…この危機に遭い苦しんで尚、明るく、信頼関係を結んでいると思わせる静かで力強さを秘めた演技で迫ってきます。

「原発内に若い者を行かせるわけには行かね」

「あなたたちには第2、第3の復興があんのよ」

福島弁のイントネーションに故郷を想う気持ちがヒシヒシと感じました。

  

大震災・大津波に遭った11日を前に福島県富岡町で10日午前6時、帰宅困難区域であったJR常磐線・夜ノ森町(よのもりちょうえき)駅周辺の線路、道路の避難解除がなされと新聞記事に載っていました。

映画の最後に、あの有名な夜の森の桜並木が、満開に咲き誇っている場面が流れ、とても美しく印象的でした。

バリケードが撤去された富岡町には、ソメイヨシノの並木道が800メートルになってひらけることのこと…

2013年、吉田昌郎氏・食道がんで死去。まだ58歳でありました。

わたくしと同じ1955年産まれだと思うと…わたくしも、まだ何か出来そうな気がして参ります。

先ずは…国を脅かしているコロナウィルスに感染せぬよう自己管理をしっかりとしていきましょう!

そして…いつか富岡町「夜の森の桜並木」を歩いてみたいと思います。