今日も青い空が広がりました。
ケヤキの梢に引っ掛かってしまったビニール袋…風に巻き上げられたとは言え、まさか・その高さから街の景色が眺めようとは思いもしなかったでしょう。
「そこ、どんな?」とパタパタと風に揺られ、ぷくっと膨らんでいるビニール袋に声を掛けたくなります。
「さみくて敵わん!」…そんなボヤきが聞こえて来るようです。
本日は日曜だってのに幼馴染みがやっていると豊洲市場に出掛けなきゃならず、大判マスクで顔・半分隠れてはいるものの生欠伸(なまあくび)を噛み殺しながら都バスに揺られ向かっております。
大口を開けて欠伸をしようが誰も咎めやしませんが、治りかけの顎関節症ですと欠伸ひとつにも気を付けねばなりません。
豊洲市場の端っこに祀られている「魚河岸水神神社・遥拝所(ようはいじょ)」に寄って、先ずはお詣りを…。
市場の駐車場の脇に祀られ、残念ながら神々しい朝日は当たりません。
ゆっくりとお天道様が回って来るのは午後になってから…「さみくて敵わん」水神様がこぼしておいです。
ご本体は神田明神・境内おわす水神様でありますから、手を合わせる方向は千代田区・外神田…正式名称「神田神社」となっております。
いつもは食のプロが行き来している市場も、暮れになりますと一般の人たちも気楽に買い物を楽しんでいる様子…ターバンを巻いたインド人は何をお求め?
すれ違うお客様は並んでいる商品の品定めに忙しく回りに目がいきませんから、こちらから避(よ)けて行きましょう。
店先の品物やお兄さんたちにもぶつからないよう、広い通路ではターレに近づかないよう歩かねばなりません。
みんな気が立ってますからねぇ~目がバチッと合っただけでも…「なんでぇ?」ときますから、即…「なんでぇとはなんでぇ!」とやり返さないと東京っ子の名が廃ると言うもの!
露地裏のような通路には正月用の食材が所狭しと並べられ、普段にない華やかさがあるような気がします。
なんせカニが多いことと言ったら半端じゃありません!
このカニのほとんどは一般客用で捌かれていきます。
今年の営業は30日まで、新年は5日(日)からの営業となります。
さぁ~わたくしもさわちゃんの店へ急ぎましょう。
昨日の明け方、豊洲市場に来る途中で職務質問に捕まってしまった「あきらくん」…今朝もメゲずに出勤!
まさに…『雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ冬ノ寒ニモ職質ニモ負ケヌ…丈夫ナ体ト精神ダケヲモチ…』宮沢賢治もびっくりの歌となりました。
「今日は真っつぐに来られたの?」
「続けて2度も職質掛けられるほどマヌケじゃないわっ!」
「あきら、おっかさんに貸した『教場』って本、読んだ?あれ読むとね、交番に立ってるお巡りさんやパトロールに乗ってる警察官って、本当に大変な訓練をしてるって解るよ。今度捕まったらサ、そこのところを汲んであげないと…ねっ!」
「ねっ・じゃねぇって!何を汲むんだよ!井戸の水じゃねぇっての!バイトの金・溜めて買った自転車なのに盗難の疑いも掛けられてサ、踏んだり蹴ったりだよ」
盗難予防用に貼ってあるシールの照会もされたんだそうです。
お巡りさん、きちっと仕事をしてらっしゃいます。
「あきら、真保裕一の「脇坂副所長の長い一日」っての読んだ?これ、面白いから持って来た、ハイ!」
「ハイって、俺の両手にはマグロがあんの、分るだろ!おっ、アメコミ風の表紙じゃん。それって平戸三平のイラスト?」
「さすが~美大生!よく判ったね!」
「その人の作風、超・有名だからね。いろんな作家の装丁やってるよ。それ・面白い?」
「うん。同時に事件が多発して展開するモジュラー型小説だね。とにかく一日で解決しなくちゃなんないからサ、多少無理があるけどね」
「挿絵みたいなの・ある?」
「ない!けど、半日で読めちゃうよ」
「う~ん半日、寝てるわ。お袋、読むかもしれないから借りてく。電話だ、おばちゃん出て!店名をはっきり言ってよ」
有難いことにマグロの注文が新たに入りました!
「あきら、前に貸した「屍人荘の殺人」…原作読んだあと、映画って観に行ったの?」
「行くヒマがないんだよ。でもサ原作、面白かったし、あれって映像化すんの大変じゃね?大量のゾンビが必要じゃん?それに本だと明智がすぐ死んじゃうだろ?中村倫也が演じててあれじゃぁ、勿体ないよ」
「あのテロの犯人が曖昧なまま終わっちゃったじゃない?次回作が出てシリーズ化されるのかなぁ~「魔眼の匣の殺人(まがんのはこのさつじん)」っての、これでゾンビの事件が解決するかもね」
「えっ!それを持って来てよ」
「まだ買ってない。それよりサ、大沢在昌の「鮫島の貌(かお)」っての。短編集なんだけど、新宿鮫のスピンオフでちょっと言いようのない重みのある1冊に仕上がってるのよ。これお薦め!あとね、今野敏の「マル暴総監」。あの任侠シリーズの「任侠学園」で出て来る阿岐本組・代貸の日村誠司が登場してつながるのよ、話が」
「あのサ、おばちゃん。それってどれもこれも警察小説だよね?なんで?おれが職質掛けられたから、わざとしてんの?」
「…お巡りさん、警察官ってあちしたちが思ってるより大変なんだよ!少しは敬意を払わないとサ」
「おばちゃんよ!俺だって大変だよ!そこ歩いてるおじちゃんやインド人だって、みんな大変なんだよ!生きてくってのは!みんな持ちつ持たれつで必死なんだわ。ねっ!だからサ、しゃべってばかりいないで、伝票書いてマグロ包んでくれる?頼むよ!」
「…はい」
オムツまで替えてやったあきらくんに諭されてしまいました。
「老いては子に従え」と申します。
暫く…口にチャックを締めて働きますです!