ミッドタウン日比谷に勤める友人から…「日比谷公園の松に雪吊りが成されたから見に来ない?」との誘いが掛ったので、日比谷公園も久しぶりなので「行く!」と返信し、待ち合わせの場所・公園入口にやって来ました。
友人は10階のオフィスにいますので、毎日・上から日比谷公園を眺めているのでしょう。
わたくし…日比谷公園の心字池の縁から、そびえ立つミッドタウン日比谷・10階あたりを睨みつけ「人を上から見下すな!」と怒鳴ってやろうと思ったのですが、あまりにも大人げないので止めました!
「ちょっとぉ~そんなして上を見上げてたら、後ろに引っくり返っちゃうよ!」
「おー!やっと地上に降りて来たな!」
「そっ!私って『地上に降りた最後の天使』って言われてんのよ」
「ゲッ!天使も地に堕ちたモンだわぃ!」
雪吊り、または雪囲いとも呼ばれている冬支度…金沢・兼六園の雪吊りが有名であります。
北陸地方の雪は水分を多く含んで重いと聞いています。
その雪の重みから松の枝を守るために考えられたとのことですが、日本人の持つ美意識の高さを改めて感じました。
「雪景色の中で見ると趣があって良いんだろうけど、東京に雪が積もると大変なことになっちゃうよねぇ~」
「そうよぉ、電車は運休、道路は閉鎖、坂道は滑って転んで寝たきりよ」
「最後が寝たきりか…身に沁みるなぁ~」
「ねぇ?『アナと雪の女王2』って観た?」
「観てない。吹替の方が上映時間が多くてサ、字幕が日に1回かな?」
「そんなに少ないのぉ?吹替の歌って、日本語の歌詞がまったく合ってないからイメージが壊れちゃう気がするんだよねぇ」
「うん、声量が違うから聞いてるこっちが息切れ起こしそうになっちゃうことはあるね」
それより、ふたりとも…歳コイた分、ディズニーのアニメーションをシニア料金で観るのに抵抗があるのかも…ねっ!
「さっきのサ、地上に真っ逆さまに堕ちちゃった天使。あれって昔の資生堂化粧品の宣伝で使われた曲だよね?」
「…真っ逆さまだって!全然違うからね、それ!そう言えば、あったね・そんなの!アリスの『君のひとみは10000ボルト』って言ったっけ?」
で…ふたりとも資生堂の化粧品は使っていない・と言うワケで、「アナと雪の女王2」の映画の話は尻切れトンボとなりました。
ミッドタウン日比谷の4階には「TOHOシネマズ」が入っており、冬休みになると親子連れで賑わい、レストラン街も行列、ランチ難民になっちゃうと友人は申しておりました。
日比谷公園・名物の大噴水…オリンピックに向けての改修工事で覆い隠されていて、何んとなく寂しい~
「あっちの雲形池(くもがたいけ)の鶴の噴水、見てく?」
「くちばしから水・吹いてる鶴?あれ?あれって何?あそこ、見て見て!こっちだよ、どこ見てんのよ!あーたって首が360度回っちゃうの?」
「私はね、天使!エクソシストのリーガンじゃないわっ!」
「あぁ~あれ怖かったよねぇ!」
そんなことより、芝生の上を何かが走っているような…?
芝刈りロボット・テスト作業中と紹介文が鎖に下げてあります。
ホンダから発売されている小型ロボットだそうで、個人販売も受け付けているとのこと…ですが、案内係の人に値段を訊いて「ぎぇ~っ!」
1台・50万円を超えるとか…「誰がそんなモン買うかぃ!」
友人は思わず口にしてしまいましたが、わたくしもまったく同じ気持ち・感想、意見であります。
然しながら…海外の豪邸に住まわれている方々がすでに購入されていると聞きますと…「なるほどねぇ豪邸かぁ」
東京にある豪邸にはきちんとしたお抱えの庭師がいるでしょうから、こうして都で運営している公園や公共の広場でテスト作業しつつ、顧客を探しているのかと思います。
刈った芝を溜めてには小さすぎる造りなのでちょっと訊ねてみました。
「とても細かく芝を刈っていますので、肥料としてそのままにして置きます」
充電式だそうで…ロボットが「俺ってもう切れるかも」と感じたら、こうして芝刈りを止めて充電器まで目もくれず戻ってくるんだとか。
凄いですねぇ~娘が飼っているワンコロより躾がなされているようです。
「いかがですか、1台?」
にこやかな笑顔を残しつつ…ふたり・得意の後ずさり…
「イヤな汗、掻いちゃったよぉ~」
「あちしなんか、震えが来ちゃって汗も出んかったわ」
そもそも話しの前提となる「豪邸」を持たず、肝心の芝生さえない…だろうことが、ひと目で判る・おばさんふたりに「芝刈り機」を勧めるなっての!
芝を刈るのは「じいさま」と決まってんだぃ!
「いやいや!男女雇用機会均等法が浸透して来てんだからサ、芝刈りもばぁさまがやらなきゃなんないし、洗濯もじぃさまが進んでやらなきゃならぬ時代だよ」
「そうなんだ…」
トボトボと木立の中を歩いていると、イチョウ並木の向こうに見えるのは「森のレストラン・松本楼」です。
これまた久しぶり…毎年9月25日に『10カレーチャリティー』を開催する洋食屋さんとして有名であります。
「食べたことある、10円カレー?」
「こっちにオフィス移って来て、話しのタネにって来たけどサ、もうすごっい行列で諦めた。あれって勤め人は無理だよ。並んでるだけで昼休み、終わっちゃうもん」
10円カレーが頂ける人って時間に追われない…優雅な方たちにだけある特権かも知れません。
「ちょっとさみくなったから、ビルに入って何んか食べない?」
「そうだねぇ~若手のミーティング、終わったころかも…あとで報告、聞かなきゃなんないし、軽いモンね」
友人・いち押しの「NYティストのスーザンズ・ミートボール」へ…日比谷ミッドタウン・地下1階に下りました。
「今日はよく下に落ちる日だね?」
「落ちるんじゃないの!おりるの!ランチボックスでライスがお薦めだよ」
可愛らしい赤い看板が迎えてくれます。
ミートボールは牛・豚・鶏・ラム肉の中から好きなものを選んでから、辛いソースか、トマト系、ホワイトソース系、甘めのソースの数種類の中から好みをチョィス!
ソーセージも温められていて、スパイシーの良い香りがしています。
サラダもピクルスも充実のラインナップ…思わず口の中に唾がギュッと出てくる感じ。
「この色とりどりのお鍋が良い雰囲気出してるよねぇ」
「おじさんにもリピーターが多いのよ。案外に飽きない味付けになってると思うよ」
「おじさんなんぞ、どうでもいいわ」
友人は軽く…と言いながらも、牛・豚・ラムの3種類のミートボール・ドッグを注文。
わたくしは顎関節症が酷くならぬように、スプーンで適量を調節できるランチボックスに致しました。
ミートボールは牛肉オンリーに…最初は食欲増進を兼ねて酸味のあるピクルスからいきましょう!
「それ以上の増進は止めたが良いよ」
なんだかニューヨークの街角で頬張っているようなステキな気分になってきました。
「どこがよ?ビルの地下ってどこもかしこもこんなモンだって!それよりサ、また映画観に行こうよ。最近観た映画、なに?」
「渋谷でやってた『わたしは光をにぎっている』…主役は松本穂香で、相変わらずの上手さの光石研。それとシネスィッチ銀座の『私のちいさなお葬式』…これは面白かったわ」
「それ、観た!ロシア映画にしては政治から離れててコメディのような要素もあって、うん確かに面白かったわ」
「東映の『カツベン』は、どぉ?脇役に良いのが揃ってんのよ」
「周防正行(すおまさゆき)監督のね!それ・行こう!」
「あのサ、口の周りにトマトソースくっ付いてるよ。マヌケな管理職・丸出し!」
「そのひと言で映画代、パーにしたねぇ~優待券あったのにねぇ、口は災いの元ってホントだねぇ、バイバイ」
友人はエレベーターのボタンを押し、キャリアウーマンらしく颯爽とドアの向こうに消えて行きました…