「ひゃぁ~今日もめっちゃ・寒いぃ~!」…などと可愛らしく言ったとて、鏡に映っている自分の顔をみて、湯たんぽの残り湯で顔を洗っているのは紛れもなく、サバを読んじゃおうかなぁ~と・言うわけにも行かず…正直に申告致します、64歳!
今朝は冷たい生野菜のサラダは止めといて、野菜を蒸して頂きましょう。
ホィップマヨネーズを添えた温野菜なら、風邪防止のビタミンも摂れるし体も暖まります。
「よしよし!」
今日はこの勢いで出掛けて、さっさと用事を済ませ帰って来よう!
すっかり日が暮れた5時過ぎ…幼馴染みのひとり息子・あきらくんから電話がありました
「もしもし!なんでケータイ出ないの!ケータイの意味ないじゃんか」
「あきら?ケータイ・ケータイってうるさいね。家に居るんだからケータイ出る必要ないじゃん」
「まぁ、つながったから良いけどサ。おばちゃん『屍人荘の殺人』って本、持ってる?」
「…しじんそうのさつじん?ミステリー大賞とかいっぱい取った、しじんそう?」
今村昌弘・著『屍人荘の殺人』は、先ず「第27回・鮎川哲也賞」を受賞、それだけでも凄いのに、続いて「このミステリーがすごい!2018、第1位」、また続いて「2018・週刊文春ミステリー・ベスト10、第1位」、またまた続いて「本格ミステリーベスト10、第1位」、次に「本格ミステリー大賞、第1位」、それで終わりかなぁと思っていたら、今度は「第15回・本屋大賞」までを手中に収め、話題を集めたデビュー作品となりました。
「そうそう!それサ、映画化されて12月の真ん中あたりに公開されるんだよ。その前に原作読んでおきたいと思って、今・図書館で訊いたら40人ぐらい待ってるってわけ。それじゃぁサ、公開始まっちゃうじゃない?それで、おばちゃん持ってるかなぁって思って仕方なく電話したんだよ」
「仕方なくぅ~?あるけど、貸さない!だいたいね、あーたは『屍人荘の殺人』のしじんそうって、どんな字なのか知ってんの?」
「どんな字って…屍(しかばね)に人、家田荘子(いえだしょうこ)の荘で起きた殺人事件?」
「うっふふ!違うね!」
「違わねぇよ!図書館の本も『屍人荘』だよ。持ってんだったら貸してよ。今から取りに行くからサ」
「今からぁ~?もう化粧、落としちゃったよ」
「へっ?化粧?そんなモン、どこで落としたって構わねぇよ!じゃ、5分で行くわ」
確かに2017年に出版された単行本も文庫本もタイトルは「屍人荘の殺人」となっているんですが、舞台となっているのは「しじんそうはしじんそう」でも『紫湛荘の殺人』です。
神紅大学(しんこうだいがく)・映画研究会の夏の合宿先「紫湛荘」で起きた密室殺人事件の遭遇したミステリー愛好家のメンバー、経済学部1年・葉村譲(はむらゆずる)と理学部3年・明智恭介、文学部2年・剣崎比留子(けんざきひるこ)の3人が事件の解明に乗り出すと言う物語になっています。
主役は葉村譲を演じる神木隆之介、明智に中村倫也、剣崎は浜辺美波、その他のキャストには「えっ?」ってな感じの俳優陣が顔を揃えているようです。
浜辺美波さんは、映画化された『君の膵臓がたべたい」のヒロイン役・桜良(さくら)を演じた女優さんで、本人曰く…「顔にあまり特徴がないのがチャームポイント」だとか…決してそんなことはないと思うのですが、あれ?桜良の顔ってどんなだっけ?と思ってしまうのも事実であります。
本棚から「屍人荘の殺人」を探してるだけで5分経っちゃったようで、玄関でピンポン!
「寒いぃ~!」
「自転車?手袋してないと凍えちゃって上手いことハンドル捌きができないでしょ?お湯でよく手洗って、うがいして」
「それで、本・あったの?」
「文庫本だけどね。映画のポスターチラシも要る?
「えーっ!そんなお宝、あんのかよ!ちょうだい!」
「人にモノをねだるとき、あんのかよ・はないだろ!写真が違う2枚あるけど、やんない」
「先ず、実物見せてよ、おばちゃんってサ、よくカマスじゃん」
「あちしは魚じゃないわ!それよりお腹空いてないの?今日はおっかさん、どしてるのサ?」
「なんか、ほれ…山の麓を歩くっていうツァー、今日は富士山の周りを歩きに行ってると思うよ」
「富士山って普通、登るよね?周りだけ歩いてどうすんだぃ?」
「どうすんだか、俺の方が訊きたいよ。俺、腹へってる」
冷凍のキノコで熱々の「きのこ蕎麦」を出したら…「きのこ蕎麦って、渋くね?」
「ちょっと!ポスターチラシにつゆ、飛ばさないでよ」
23歳の若者に「渋くね?」と言われたんじゃ、きのこ蕎麦が気の毒なので、作り置きしてあった、これまた冷凍の餃子を焼き、半ライスまでサービスしちゃいました!
「おばちゃんが好きな神木隆之介が主役じゃん!中村倫也(なかむらともや)も出るんだ」
「おばちゃんはね、神木隆之介のファンじゃないの。『3月のライオン』の桐山零くんのファンなの!元気かな、零くん」
「元気じゃないの?きのこ蕎麦、渋いわりに旨いわ。俺、人生で初めて食ったかも。この餃子も、それなりに美味しいわ」
中村倫也さんも『3月のライオン』に棋士仲間の三角龍雪(みすみたつゆき)役でも共演、おかっぱにあごひげと原作コミックと寸分たがわぬ雰囲気を漂わせ、ここっと言う時にスポッとハマる演技を見せてくれました。
今ではあっちこっちで引っ張りだこの超・売れっ子となっていると聞くと、なんだか嬉しい限りです。
「あれ?」…食卓に座ったら、お線香が立ってるニオイがします。
あきらくん…言わなくても、きちんと亡き夫に手を合わせてくれたようです。
2枚のポスターチラシ、折れぬようにファイルに納めています。
さすが美大・院生であります。
「映画観たら、どんなだったかライン送るよ。体、あったまった。ご馳走さんでした」
「うん。気を付けて帰るんだよ」
原作を読んで知ってるだけに、映画となると表現が難しいだろうなぁ~と思いはしますが、そこは実力派が名を連ねているキャストですから、わたくしも楽しみに公開日を待つとしますか!