ベランダから見る眼下の運河です。
晴海湾に注ぐ運河でありますから、海水の上げ潮・引き潮で1日のうちでも水位がずい分と変わります。
今は引き潮で左・下流へと流れております。
今朝になって見る運河は黄土色と言いましょうか、いつもとはまったく違う濁った水の色をしておりまして、山も田畑もない都会でなぜ・このような色になるのか不思議であります。
大雨で起こる過流による浮遊砂(ふゆうさ)でしょうか?
元々の水とて、それほどきれいとは言えませんが、それでもハゼやボラ、フジツボや小さなエビなどが生息するまで澄んだ運河となっています。
水位は遊歩道ギリギリまで上がり、水面が膨らんだかのような怖さも感じましたが、今回の台風19号では何んとか持ち堪えてくれたと安堵しました。
朝から雨が降ったり止んだりの繰り返しで買い物に行きたいのは山々なのですが、この際・買い置きの食材を使い切るのも一考かと思います。
ベランダのプランターで育っているであろう・紅あずま…蒸かし芋にしたろか!とも思いましたが、何んとなく健気な葉っぱを見たら、もう1週間ほど様子を見ようかなぁ~と「我が家のひとりぽっち芋掘り大会」を延期いたしました。
朝・昼一緒のご飯にしようと、冷蔵庫の残り物を組み合わせていて、思いついたのが「お好み焼き」!
冷凍の豚バラもあったはず…小麦粉を溶き種を作り、キャベツを切っていますと…ピンポ~ン!
「あっ!」…幼馴染み・大学院生・あきらくんのおっかさんが来たようです。
貸してあった本『蜜蜂と遠雷』を「午前中に返しに行くから」と、さっき電話があったことをハタと思い出しました。
「あれ?こんな時間に何作ってんのぉ?」
「朝、遅くなっちゃったからサ、お昼と一緒にしようと思ってお好み焼き!」
「おぉ!1枚・のった!」
「のったって、食べるんかぃ?」
犯行現場を押さえられたような、ちょっと妙な気分…仕方がないので1枚だけ奢ることにしました。
「1枚だけだかんね!薄~いの焼いてやる。それよりサ、原作読んでも映画、行きたい?」
「うぅん!原作読んだらサ、映画観なくとも充分堪能した」
ピアノ・コンクールに出場を許されたコンテスタント・4人の挑戦を描いた長編群像小説である、恩田陸・著『蜜蜂と遠雷』が映画化され、主役のひとりを演じている松坂桃李のファンである幼馴染みが映画を観る前に原作も読んでおきたいと言うので、先週・貸した答えが「行かない」とのこと。
「松坂桃李はいいの?」
「うん!私の中での高島明石(たかしまあかし)が浮かび上がって来たし、ひとり・ひとりの背景を描こうと思ったら、2時間じゃ描き切れないもん。音も色彩も見えた気がした。すっごい面白かったよ」
「映画のキャスティング、コンクールの審査員の嵯峨三枝子を演じる斎藤由貴以外は、それほど的外れではないと思うけどサ、原作の持つ骨組みがしっかりし過ぎて映像にする必要性がないんだよね」
「そうそう!コンクールの、あのヒリヒリする緊張感、演奏する光景まで活字で感じちゃったもんね。嵯峨三枝子の雰囲気かぁ…うーん斉藤由貴ではないね!」
「そう、貫禄が違い過ぎると思う。まぁ、恩田さんの筆力が凄いんだけどサ、活字で映像を感じるようになったら、あーたも1人前よ!これね、文庫本化してんだけど、上下巻で分けて読んじゃうと気分が削がれると思うのよ、出来れば本の重みを感じながらも、二段組で読んだ方が断然面白いと思うって、お宅の息子・あきらもそう言ってたよ」
「うちの息子も捨てたもんじゃないね!鷹が鷹を産んじゃった、ヒヒヒ!」
「はぁ~どんな鷹よ?多寡がの多寡だね」
「ちょっとぉ~なんでソースとケチャップとマヨネーズをゴチャ混ぜにしちゃうのよ!味がぜんぶおんなじになっちゃうでしょうがっ!」
「メンドクサクなくていいじゃないのよ!あれっ!この金蝶ソース、うちの旦那のお土産でしょ?ちゃんと使ってるの?」
長崎出張のお土産に貰ったソースなんですが、すっかり忘れておったわ!どこから出して来たんだろか?
「お好み焼きには合わないと思うよぉ~長崎にはないでしょ、お好み焼き?」
「これはね、魔法のウスターソースなのよ!掛けちゃおぅ。遠慮しないで食べて、食べて」
「それは、こっちが言うセリフだわようん、これはこれでメリハリがついて合うかもね!」
「美味しい!粉モノって誰が作ってもそこそこ美味しく作れちゃうんだよね」
「ソース、飲んだら?」
『ミツバチと遠雷』でも登場したピアノの調律師。
調律師の中でも一番大変なのがコンサート・ピアノの調律だそうで、その分、調律師の憧れでもあると言われていると聞いております。
観客数やピアノを置く位置の床下構造でもピアノの音は違ってくると知ったのは…宮下奈都(みやしたなつ)・著『羊と鋼の森(ひつじとはがねのもり)』という1冊の本からでした。
2015年・刊行、その年の直木賞候補に、翌年の本屋大賞で大賞を受賞した話題の作品となりました。
主人公・戸村(とむら)が17歳のとき、体育館にあるピアノの調律に来た調律師・板鳥宗一郎(三浦友和)に出会い、自身も調律師を志し、調律師養成の学校を卒業、板鳥が勤める楽器店に就職…板鳥のような調律師を夢見て成長していく様を描いた青春物語です。
こちらも映画化され、外村を山崎賢人が演じ、外村が担当するのは双子が演奏のために使うピアノ…その双子を演じていたのは上白石萌音・萌歌姉妹(かみしらいしもね・もか)で、ちょっと異色のキャストでした。
エンディングテーマを演奏していたのが辻井伸行さんで、お得感満載の1本であったと思います。
「私、原作読んでない…貸してくれる?その『羊と何んとかの森』っての」
「タイトル名もちゃんと言えない人には貸さない!」
ピアノは鍵盤とハンマーで音を出します。
鍵盤を押すと…ハンマーが弦を打って音階を叩き、音を出します。
そのハンマーを覆っているのが羊毛で作られたフエルトから、このタイトルが付けられたと思います。
なかなか奥が深いタイトルであります。
昔…あの萩本欽一さんと坂上二郎さんのコント55号のギャグに、こんなのがあったことを思い出しました!
『あの羊は偽物だ』
『なぜ?』
『ウールマークがついていない』
なるほど…わたくし・昭和30年産まれの未年…残念ながらウールマークは付いておりませんです!