生協の白石さん

何かのアンケート調査で、東京メトロ・東西線を利用する乗降客は「ごま油」が好きだと言う結果が出たのでしょうか

東西線のどの車両に乗っても、この『ごま油を買って宝塚を観よう！』のシールが貼ってあります

それも通勤・通学の満員電車で顔や肩、胸や背中を押し付けられるドアに貼ってあるものですから、なかなかまともに見ることが出来ませんで、先日空いている時間帯に乗って初めてその全貌を見るに至りました

今のところ…銀座線、日比谷線、千代田線では見掛けません

「かどや」の社長さん、広報室の室長さんが「宝塚」のファンなのでしょうか

大変失礼ながらごま油と宝塚がどうしても結びつかない・わたくしであります

むしろ宝塚の舞台を観に行って、お土産にごま油を頂戴できる方が嬉しいなぁ～と思ってしまいます

大手町で千代田線に乗り換え、運よく座れましたので読みかけのまま、ここ３日ほど持ち歩いていた本を読むことが出来そうです

『生協の白石さん』著者と言っていいのか判りませんが、表紙にはタイトルと共に「白石正則さん、東京農工大学の学生さん」とあります

２００５年に刊行された本で、当時ベストセラーとなった本ですから読んだ方もきっと多いのではないかと思います

この１冊に続いて…「生協の白石さん…最近、白石さんは何をしているのですか？」、「おかえり５年ぶりの生協の白石さん」、「生協の白石さんとエコごはん」など合わせて４冊の関連本が出ていると聞いて知ってはいたのですが、わたくしが好む小説のような物語でないものですから、なかなか読む機会がありませんでした

小説ではありませんので、主人公はおりません…ところが読み進んでいくうちに、これはヘタな小説を読むより笑えるし、なるほど…とわたくしたち老境に身を置く者にとっては何んとも瑞々しい気持ちにさせられ、生活協同組合の職員である白石さんと、舞台となっている東京農工大学・小金井キャンパスに通う学生さんたちの交流を綴った１冊となっています

わたくしがお世話になっている東京農業大学と一瞬間違えてしまう大学名ですが、あちらは国立でして小金井キャンパスは工学部に籍を置く学生が通ってらっしゃいます

さてどの大学にも大学生協がキャンパス内にあります

そこには生協に対する要望や質問などが出来る「利用者アンケート・ひとことカード」が張り付けられる掲示板やアンケートボックスが設置されているかと思います

設置当時は「あの本を置いて欲しい、こういった文具用品があったら助かる、レンジを置いて欲しい、シャープペンシルの芯が高すぎる、専門書は頼めるか？」とか…如何にも学生らしい要望だったのですが、東京農工大学・工学部の学生さんたちはユーモラスな相談を生協職員・白石さんに問いかけるようになっていきます

「単位がほしいです」…これは学生の誰もが売っていたら買います

「バストが大きくなる薬はないですか？」…白石さんに訊くより、自分のおっかさんに訊け！ってなもんですが、白石さん・実に的を得たアドバイスを書き込み、生協の品物を売り込むのに成功しています

その要望や質問、果ては人生相談めいた「ひとことカード」に託すこととなり、そのひとつひとつに真面目に時にはウィットに富んだ答えを書いて掲示板に貼ってくれるのだそうで、徐々にその質問や問い掛けが個人的な相談になっても、白石さんは無視することなくきちんと対応し、顔は知らずとも学生さんたちと交流の輪を広げていく時間が読み取れます