エンジン音が聞こえたわけでもないのに…ふっと見上げた先に白い飛行機が浮かんでいました
それはペタッと空に張り付いた紙飛行機のように見えます
ここからは飛行機の形が見えるけど、あっち・遥か空からはわたくしの姿など見えるはずもありませんが「もしかしたら?」と願いつつ、ちょっと試しに両腕を空に伸ばし手を振ってみました
「完全無視…むなしいここは空と書いて、空しい
」
その空から飛んで来たスズメ…
ベランダの手すりにのっかって、順番を待っています
鉢植えのハコベラの実がぷっくりと熟し、今朝は群れで啄みに来たようです
「これを植えておくとね、スズメがやって来るから…自然に任せて抜かずに置いてくれると嬉しいな」
亡き夫が押し付ける風でもなく呟いたことを、この3年の間・ひとり・続けています
「チュンチュンと」とひとしきり賑わいを見せていたスズメが去ったあと、散らかったハコベラの葉や実を片づけていましたら、スズメの初列風切羽根(しょれつかざきりばね)と次列(じれつ)風切羽根を合わせた3枚がハコベラの鉢植えの中に落ちていました
「そうか…繁殖期が終わったし、寒くなるものねぇ~」
これから凡そふた月を掛けて、すり切れた羽を新しい羽に生え替えをする換羽期(かんうき)に入ります
今のこの時期、スズメは体中が痒くて痒くて仕方がないと思います
羽は左右対称に抜けるわけではないので、きっと飛ぶのにもバランスを崩さぬように気を遣っていることでしょう
抜け落ちた羽根は役目を終えて擦り切ってしまい、すっかり脂も落ちてパサパサになっていました
あの150グラムにも満たない小さなスズメではありますが、その体を支えて来た羽根であります
羽軸根(うじくこん)を削って羽根ペンにして使いたいところですが、如何せん小っちゃ過ぎ、指が攣ってしまい字の書きようがございません
ここは夫が好んで被っていた帽子に飾ってみましょうか
こうしておいて、わたくしが被って出掛ければ、あの広々とした大空を見上げることができましょう
これも羽根の供養かと思います
「ご苦労さんでした」
と言うわけで…今夜は鶏の手羽先を焼いて頂きました
羽を動かしている手羽先でありますから、筋肉のほど良い硬さと旨味が凝縮してビールと良く合うこと
これを平らげたら…わたくしもすべての毛を換毛といきますか
『よく跳ねて小雀下町育ちかな』
(よくはねてこすずめしたまちそだちかな)
二本松輝久(にほんまつてるひさ)