東京・佃島の氏神様・住吉神社さんに3年に1度の『住吉神社例祭』が巡って参りました。
今年の例祭は掘割に埋められた柱を掘り起こし、佃島に6本の大幟柱(おおのぼりばしら)が立ち上がる「例大祭」を迎えます。
祭りは8月3、4、5、6日の4日間となりますが、何しろ「例大祭」ともなると柱の準備に時間が掛かりまして、それはもう佃島総出で6月から調い始めます。
わたくしの義従兄が佃島で船宿を営んでおりますもので、船頭・おぃちゃんを訪ね、共に漁業の安全と豊漁祈願に参列して参りました
大昔は徳川家康公の繁栄を願い、大漁を祈願した祭りと聞いております。
また、江戸城からもこの大幟柱が望めるように立てられたとも言われています
佃小橋のちょうど真下の掘割に、その大幟柱が埋められています。
これは虫食いや乾燥、木の腐敗を防ぐために敢えて水の中に…ここは泥の中ですが…埋めてあるのです。
6月の引き潮に合わせ、泥止めの枠を設置することが祭りの始まりとなるかと思います。
先ずは柱を差し込み、支える抱き柱を堀起こし、次に6本の大幟柱をクレーンで引き揚げる作業を行います。
みんな・全身泥だらけになる大変な作業です。
柱を傷つけぬよう慎重なスコップ捌き?が必要かと…みなさん・気の短い東京っ子でありますからね、差配する年寄りもついつい口出しをしておりました…「気をつけろぃって言ってんだろっ!」
掘り出された柱は立ち上げる場所に運んで水洗い…運ぶと言いましても狭い佃島の町内のこと、長い柱をぶつけぬ様に運ぶのにもチョィトしたコツがいるようです。
写真・右に写っているのは佃島の佃煮屋・天安(てんやす)で、観光客が引っ切りなしに来ることは来るのですが、表の暖簾と仕舞屋を写真に収めるだけで、少々値の張る佃煮は買わずに帰ってしまいます。
町内の番地に合わせ、1丁目は1部、2丁目は2部、3丁目は3部と祭りの役割を担っておりまして、ご婦人方は賄いの用意で朝からてんてこ舞いの忙しさです。
ここ3部のテントではカレーライスのお昼でございました!
今年はNHKのテレビクルーが入り「例大祭」の模様を撮影しておりました。
このお兄ィさん…お腹だけに入れ墨を入れているわけではありませんで、それこそ肩から二の腕、背中・尻、太もも・ふくらはぎと全身に墨を入れておいでです!
もちろん、キリッと引き締まった体であったであろう…若い時に彫ったそうですが、人間の皮ってのはこんなに伸びるもんなんですねぇ~
「うるせぇやぃ!」
天狗のようであるけれど、豆絞りの手拭いで頬被りをしているところを見ますと…ひょっとこに桜?青空を背景に眺めると、これはこれで芸術作品に見えてきますから不思議なものでありますなぁ~
ところが、いざ色付けに入ろうとしたところで、彫師が死んじゃった!で・仕方なく兄弟弟子の彫師を訪ね、無理を承知で頼み込んで、色を施してもらったそうです。
お兄ィさん、お腹を冷やさぬようにね!
「大きなお世話だよぉ…ありがとな」
こちらは佃・名物「佃小橋(つくだこばし)」を丸太を担いで渡っております男衆は、佃の入り口に立てる鳥居の柱を運んでいる写真です。
この赤い橋はテレビや映画で良く使われる場所でして、将棋を題材にした映画「3月のライオン」にも登場し、主人公・桐山零と交流のある川本一家がここ・佃に住んでいる設定でありました。
「写真撮ってるヒマがあったら手伝えっ!」の声が浴びせられますが、何しろ・わたくしと背の高さがあまりにも違いがあり、肩に担ぐことが出来ませなんだ!
神事でもありますから、ここは男衆に任せるのが一番かと思いましてございます。
炎天下…掛け声もなく黙々と担いでおります。
それぞれの町内に運ばれた大幟柱は住吉神社の宮司さんによってお祓いがなされ、清められます。
きれいに洗われ、泥を落とされた柱はみっしりと気の目が詰まり、3年もの間・掘割に埋められていたとは思えぬほどの艶を放ってました。
抱き柱も組まれ、いよいよクレーンの力を借りて柱が立ち上がっていきます。
柱の先端には籠に詰められたお榊と紙垂(しで)が供えられています。
義従兄の船宿「佃・折本」の屋号が見えているのが、お判りでしょうか?
有難いことにそのわきに大幟柱が立ちます。
この墨田川・河口から東京湾にかけての漁場で獲れた白魚を献上する儀式は江戸時代からの習わしで、佃島の漁業組合会長である義従兄が任され、平成の世になっても漆塗りの献上箱に白魚を納め、毎年3月に徳川家へ献上に上がっております。
残念ながら、もうこの汽水域では白魚は獲れませんでので、築地から極上の白魚が届くとのことであります。
7月1日…ようやくに日が沈むころ、大幟柱・6本が佃島に立ちました。
ビルに阻まれ、もう江戸城・皇居からは佃島を望むことは叶いませんが、徳川様への忠誠を表す心意気は佃島っ子の誇りでもあろうかと思います。
御旅所の前では宴席が設けられ、若い衆の労を労い、いよいよ本格的に祭りの準備が始まります。
これから約ひと月、本業はさて置いて、祭り最優先の日々が続きます。
ちなみに…桟敷に座っているのがお偉方さん、世話役、来賓で、立っている方は下っ端と言いますか…佃島の次の世代を担っていく方たちであり、伝統をしっかりと受け継いでいってくれる頼もしい存在です。
挨拶が終わり、乾杯が済んでしまうとお偉方さんも下っ端も関係なく升酒を交わしておりました!
ここまで写真の整理に手間取ってしまいましたが、祭りのハイライトをぜひとも送りたいと急いでいます!
けれども、実はまだすべてが終わっていませんで、このあと掘り出した柱をまた・埋める作業が残っているのです!
それはそれとして、東京の真ん中にありながら、あまり知られていない「佃島・住吉例大祭」を写真で知って頂ければと、写真の順番を間違わぬようアップ致します