実を申しますと…１３日の金曜日、東京は盂蘭盆会（うらぼんえ）の始まり「盆入り」で、わたくしも「お迎え火」を焚きまして亡き夫を迎えることは迎えたんです
好物の「茄子の煮浸し」などをこさえ、いろいろお供えもしたんです
まぁ～「お迎え火」の灯りを頼りに煙にのって我が家に帰った来たんですから、何んとなぁ～く居るような居ないようなフワフワとした感じであります
仏壇を前にして、１４日は水いらずに過ごしたのですが…お盆の中日である１５日、わたくし・主人を置いて鎌倉の友だちのところへ泊りに出かけ、家を留守に致しました
もちろん…主人が自由にくつろげるように仏壇の扉は開けて出掛けました
「暑気払いをするから泊りがけでいらっしゃい！」のお言葉に甘え、夏・真っ盛りの鎌倉・稲村ケ崎のおうちにお邪魔を致しました
横須賀線は思ったより空いていたのですが、江ノ電に乗り換えるのが大変でした
「もしもし？今、鎌倉駅に着いて、これから江ノ電に乗ります」
「はいはい、気を付けていらっしゃい！」
ところが、江ノ電のホームは人でいっぱい！そこをかき分けかき分け…一句、浮かびました
『分け入っても分け入っても青い山』…
これは山頭火（さんとうか）の俳句でありました
然しながら状況はこんな感じでして、わたくし乗れるかどうかウロウロしてましたら、後ろからドドッと押されながらも、ようやく乗り込むことが出来ました
週末、祝日のこの混みよう…江ノ電・沿線に住んでいる方のご苦労を思うと、通り過ぎる一軒、一軒に頭を下げる思いで稲村ケ崎に到着！
人生の大先輩である友だちが、冷やし中華・ひと皿を手に駅前で待っていてくれて、本当に恐縮してしまいました
「あなた、お腹空いてると思って、そこで頼んじゃったのよ…ようこそ、いらっしゃいました！」
稲村ケ崎・駅前にある「偕楽」さんとこの冷やし中華…美味しく頂きました
「暑気払い」のガーデンパーティは１６日・午前１１時からですが、生ビールのコップや取り皿、おしぼりにお箸の用意、おむすび用のお米・８合を炊飯器へ入れておこう、具の梅干しの種を取っておかないと、もし万が一呑み込む人がいたら大騒ぎになっちゃうから取り除いておきましょう…と、やっておかねばならぬことは山ほどございます
「梅干しの種、分からないで呑み込んじゃう人って…きっと〇〇さんと△△さんですよね？」
「あの人たちは呑み込んじゃっても分かんないから大丈夫よ」
「そうですね！」…なんてなことを話しているなんて、みなさん思いもしないでしょうねぇ～
床の間やトイレ、お台所に飾る花を庭で選んだり、芝生の上の落ち葉をざっと掃いておりましたら…こんな物が落ちていて、ビックリしちゃいました
「イワシ～
」
「そうなのよ！トンビがどっかから拾って来るんだか判らないけど、お菓子のビニールやアイスのカップが枝に引っ掛かってたりしてイヤになっちゃうのよ！そのイワシも釣りに来た人が忘れて行ったか捨てたままにしたのをくちばしに咥えて持って来たんじゃないかしら」
生臭さを放っているようで用心していたら…プラスチック製の作り物でした
「せっかく拾って、ここまで持って来てゆっくり食べようと思ったら、プラスチックのイワシじゃ、トンビもガッカリしたんじゃないかしらね」
「これじゃ、梅干しの種と違って呑み込んじゃったら大変ですもんね」
「そこまでバカなトンビもいないんじゃない？さぁ～早めに切り上げてお風呂に入って休みましょう」
お腹を空かしたトンビに見せびらかすようにして、芝生の真ん中に置いておきました
１６日も朝から快晴と言いますか、ピーカンです
ひとり・一品持ち寄りパーティなので、どんな料理が来るかまったく予想が付きません
「でもね、ワインとソーセージはぜったいに来るから、とにかくご飯を炊いておむすびをお願いね
それと蚊取り線香、８個用意しておいてね
」
ここは海を見下ろす高台にあるおうちなので、風が下から柔らかく巻き上がるようにして上がってくるので、蚊も飛ばされてしまって血を吸うどころではないとこぼしておりました
１１時ちょっと前に酒屋さんが生ビールをセットしに来てくれましたので、さぁ～準備オッケーです
ワインとソーセージ、ちゃんと来ました
夏のパーティと言うこともあるのでしょうか
スタミナが付く料理が集まりました
「わたくしね、１１時からって聞いたから朝ごはん食べて来なかったの！」
「わたくしなんか、昨日のお夕飯も抜いて来ちゃった！」
このまま話を聞いておりますと、１週間前から何も食べていないと言い出しかねませんので、１３人が集まったところで「乾杯
」
手作りパンはメンバーの誰もが楽しみにしている１品で、今回はハムとチーズが入っているフォカッチャを焼いて来てくれました
ローズマリーの香りは香ばしく、岩塩の加減もバッチリでワインにもビールにも合って、わたくし・食べたら減ってしまうと分かっていても、然もこんな可愛らしいおちょぼ口だと言うのに…たったふた口で胃の中へと落ちて行きました
木の上ではガビチョウが喧しく鳴いているのですが、ガビチョウの方がわたくしたちのおしゃべりがうるさいと言われてしまいました
今日のガーデンパーティは鎌倉スポーツクラブのメンバーの方たちの集まりなんですが、わたくし・ひとりだけ退会し、東京へ引っ越ししたあとも、こうしてお声を掛けて下さり、有難いことといつもみなさまには手を合わせております
「わたくしたち…仏様じゃないんだから！」
夫との二人三脚であった闘病中も、亡くなったあとにも励まし、そして慰めて下すった、わたくしにとってかけがえのない友だちであります
スポーツクラブのインストラクターの先生たちとも再会でき、そのご主人さまや息子さんにもお会いすることが叶い、本当に美味しい生ビールを頂きました
裏山で蜩・カナカナが鳴くころ、最後の後片付けも終わり、残った３人で失礼することに…人生の大先輩が玄関先まで送ってくれまして…「ご主人さまにに宜しくね！」
一瞬…３人ともシーン
「ヤダッ！あなたのことじゃない！」
「えっ？そぉ！」
「そうよ！うちは死んじゃってるしぃ、彼女は独身だし…ご主人って言ったらあなたしかいないじゃない」
「そうだった！うちで待ってるんだったわ
」
「誰のご主人でも良いわよ！気を付けてお帰りなさいね」
「はぁ～い！ありがとうございました
」
午後５時過ぎ…ひとりは七里ヶ浜へ歩いて帰ると言うので、大きく手を振ってお別れを…
鎌倉行きの江ノ電も、昼間の混雑は嘘のように空いていました
スポーツクラブではラテンのインストラクターを担当している綾子先生とプライベートなお話を聞くことが出来ました！
例えば…このタップン・タップンした三段腹はどうしたら二段腹にできるか？
「腹筋を鍛えるのが、いち番の近道ですけどぉ、なんで二段腹と言う志の低いところで止まっちゃうんですか！どうせなら腹筋に筋が入るにはどういう鍛え方が良いですかって訊いて下さいよ！私、これでもインストラクターとして、いろいろ勉強してるんですから」
「
いやぁ～綾子先生…数字ってのは抜かしちゃダメなんですよ！段階を経てこそ数学が成り立つんですから」
「数学ってかぁ～腹でしょ？腹…キュッとおへそを上に引っ張るようにして立っているだけでも腹筋は鍛えられますから、ホラ！グッと背筋を伸ばしてっ！」
「いやいや…先生、ここって江ノ電だから」
「すぐに始めなきゃ…モゴモゴ
」
耳を澄ましていると…老い先短いとか何んとか言ってるような…
綾子先生、ありがとうございます長生きをして、今度お会いするときまでには二段腹をクリアしておきます
わたくしは東口にある駅ビル『ＣＩＡＬ・シアル』に出店している「葉山・日影茶屋」の牛しぐれ弁当を買い求め、東京へと向かいましょう
この日・最後のお弁当と言う「福の神」まで付いておりました
「俺も仏壇を抜け出して鎌倉まで付いて来たんだよ！みんな元気そうで何よりだったね」
「…やっぱりね！なんだか肩が凝るなぁって思ってたんだ！一緒に東京へ帰ろうね今日は１６日、送り火を焚かなきゃね」
「そんなに急がなくとも良いんでないの？そのお弁当で一杯やってから、極楽へ帰るとしようかね」
あなた…極楽へ行けたんですねぇ、でもね、極楽って門限があるんですよぉ～
果たして…夫は西方浄土・極楽へ帰ることが出来たでしょうか
