亡き夫の渓流釣り仲間であった「どうもども・トミさん」が住む新潟県・津南町(つなんまち)から、橋を1本渡るとそこはもう長野県・栄村となります。豪雪地帯として知られているふたつの県境だとて、3月の声を聞いたならば、少しづつではありましょうが、春の暖かな陽射しを感じると聞いております。
東日本大地震から13時間後、12日の未明…栄村では震度6強、津南町では震度6弱の地震に襲われました。
地震の強弱よりも、わたくしたちはあの波に家が、車が、建物が…ありとあらゆる物がさらわれて行く恐怖に慄き、信越の雪に埋もれてしまった災害の大きさに気が付くのが遅れてしまいました。
雪が徐々に融けて行くと、そこには亀裂が入った地面が現れ、家が橋が斜面が崩れているのが晒されるようになり、津南・栄村の復興が始まりました。
顕著(けんちょ)な災害が起きた自然現象に対しては気象庁が命名することになっているのですが、この地方はその基準に達していないと言うことで、震度6強であっても正式な命名はされていません。
『新潟県・長野県境地震』…『長野県北部地震』とメディアによって呼ぶ名が異なり、統一が成されませんでした。
「それでいいんでないかい?こっちは人サ死んでないもの。あんだけ地べたが揺れてサ、ホント!奇跡みたいだもの」
初動報告では死者・重傷者なし。家具の下敷きになっての打撲、ガラスでの切り傷などの軽傷16名…。
避難所での関連死・3名。
今、栄村では「復興期」から活力ある村を目指す『発展期』へと知恵と工夫、そしてみなさんの経験を活かし力を寄せて踏ん張っておられると聞きました。
新潟県では信濃川、長野県では千曲川…同じ川でも県境を超えるとその呼称が変わって参りますが、魚沼、栄村では「信濃川」と呼んでおります。
その信濃川の淵に建っておりますのが長野県・栄村・村営の「物産館・またたび」でございます。
季節ごとに並ぶ品物は変わりはしますが、ほとんどの物が地元・栄村の山の幸となっています。
これからですと、豊富な山菜が天然物、栽培物と共に出て参ります。
「なぁ~に山サ行けば売るほど採れる!」とトミさんは言いますが、食べる分だけを頂き、大切な山の恵みを次世代へときちんとつないでいらっしゃいます。
今夜は栄村から、津南町から送られて来たコシヒカリを使った「炊き込みご飯」を作りましょう!
わたくし…ニンジンが得意ではないのですが、こうして細切りにして油揚げとシイタケと一緒に甘く煮付ければ大丈夫
油揚げから出た旨味いっぱいの煮汁でご飯を炊いていきます
ニンジンの色が鮮やかに残っていますが、色だけで…ニンジン特有のあのニオイは欠片もありません
今どきの炊飯器は賢くて、ちゃんとお釜で炊いた時に出来る「お焦げ」までこさえてくれます
これから日に日に雪が融けますと津南町や栄村は一斉に花の町と化します
田んぼには水が引き込まれ、早苗が初夏の風に揺らぐ光景が目に浮かぶようです
「雪融けサ始まると川の水が増えてサ、山女(やまめ)や岩魚(いわな)が首長くして待ってるから、ひとりでもいいから竿持って遊びに来いサ」
「そだねぇ~」
夫が釣りに行かなくなって久しくなり、川の魚が増えたとか…それほどの腕前ではありませんでしたけれどね
「名もなき震災」とまで言われた津南町・栄村の地震でありますが、みなさん・コツコツと着々と日々の暮らしを送っていると聞き、今年も亡き夫に良い報告が出来ました