この冬は白菜や大根が高くて手が出ません
毎年・年末から幾度となく漬けている白菜の塩漬けも、今年はまだ1度も漬け込むことが出来ずにいます
本来ですと、これだけの冷え込みがあれば美味しい白菜漬けに仕上がるのに…山ほどの塩があっても肝心の白菜が買えないんですから、八百屋の店先で指をくわえて眺めるしかありません
「あれぇいらっしゃい久しぶりだねぇ~今まで、どしてたの」
「おかげさんでこうしてね、達者で生きとりました」
「へぇ~達者なのは口だけだと思ってたわで・今日はなに」
「う~んどれもこれも高いなあ~って思って眺めてんの」
「タダで眺めてんのヤだねぇ~見た分だけ減っちゃうからサ、なんか買いなさいよっそうだっ空豆(そらまめ)の良いのが入ってんだわ走りも走りの鹿児島産・一寸空豆(いっすんそらまめ)っての」
「高っあんまり高くて腹が立って来るわぃ空豆って莢(さや)ばっかで、剥いたあと虚しくなっちゃうんだよねぇ」
「この莢でもって中にある豆の旨味を保ってんだよ!走りだよ走り初物食べると寿命が延びるからサ」
「走り走りって、自分でこの町内・走ったるわ」
「しょうがねぇなぁ~じゃね、白菜今日はサ雪混じりのこんな天気だからね、少ぉ~し安くしてあんの白菜にしよう」
「う~ん1個・500円半分で250円上の葉っぱだけ、2、3枚で我慢しちゃおうかなぁ」
「あのぉ…うちんとこと半分っこしませんか」
「白菜・半分こ良いですよぉ~こちらこそお願いしますじゃ、おぃちゃん!真っぷたつに切ってくれる」
「おーっいいともよおまけだっ240円で持っててくんねぇ」
『どこの誰だか知らないけれどぉ~白菜半分、ありがとう』
若いお母さんの提案のおかげで身がしっかりと詰まった良い白菜を手に入れることができました
貴重な半分をまた半分にして、使い分けることに致しましょう
わたくし、これだけお値段の張る白菜、何十年振りか知らん
庖丁を持つ手が震えて来ちゃってるもんね
今日いち日で体が冷えきっちゃいましたので、今夜は白菜を活かした熱々のお鍋・扁炉にして頂きましょう
「扁炉」と書いてピェンローと読みますぶっちゃけた話、中国の白菜鍋と言ったところでしょうか
舞台美術家でエッセイスト、イラストもこなし、美味しいものが大好きと言う妹尾河童(せのおかっぱ)氏が『河童のスケッチブック』で紹介していたピェンロー鍋ですから、お味に間違いのない保証付きでございます
作り方は至って簡単
干しシイタケの戻した汁に、先ず白菜の芯の部分と鶏肉を入れ、この時の鶏肉はモモ肉でも骨付きでもお好みで構わないと思います
このピェンロー鍋で最も重要なのが「ごま油」です
お玉に半分くらいのごま油を回し入れ、ぐつぐつ…
芯が柔らかく透き通ってきたら、白菜の葉を入れぐつぐつ…
豚の三枚肉・バラ肉を入れ、ここでもまたごま油をタラ―ッと回し入れ、再びぐつぐつ…灰汁が浮いてきたら小まめに取ります
さぁ~最後の仕上げです
春雨は戻さずにそのまま投入…澄んでいた黄金色のスープが春雨のでんぷんが融けて少し濁ってしまうのが残念ですが、余分な水分を含んでいない春雨は旨味たっぷりです
味付けはごま油と白菜の甘み、干しシイタケの旨味、鶏と豚の脂だけとなりまして、取り皿に取ってからそれぞれ塩と一味か七味で味を調えながら頂きます
スープを飲み干したいところなんですが、ここはぐっと我慢をしてご飯で雑炊、うどんを入れても良し、ラーメンにしても良しでお好みでよろしいかと
今夜の鍋で3分の1ほど残っていた「安政5年創業・純正かどやのごま油」…使い切っちゃいました
半分をさらに半分にした白菜を念願の塩漬けにしました
本当は大きな株のまま漬け込みたいのですが、ひとりで食べる分を考えますとざく切りの即席漬けにして、とにかく冬の味覚を味わうことに致します
我が家ではにんにくの薄切りをちょっと忍ばせます
やっぱり冬は白い野菜が美味しいです
白菜を半分こしたおうちでは、どんなにして食べたのかなぁ~
家族でお鍋かな
「わぉ白菜だ奮発したね」と家族のみんなでお母さんの遣り繰りを称えているかも知れません
ワイワイと囲まれて…あっちに行った半分の白菜の方が幸せだったかな
残すことなく食べ切りましょう