今日の朝ご飯は夕べのロースト・チキンの残りを巻いたオムレツにしました
まだ食べきれずに残っていますので、昼はチキン・ライスにしますか
なんだか・こう鶏肉ばかりを頂いておりますと、念願の卵を産めそうな気がしてきました
モグモグ食べておりましたら、大学3年のひとり息子を持つ幼馴染みから電話が入りました
「モシモグ?」
「何言ってんのよっ!あのサ、あきらがあーたに『陸王』録っておいてって頼んだんだって?ビデオ録れてる?録れてたらサ、CD貸してよこの間の最終回見てたらね、何話になるのかなぁ~あちしがベトナム行ってる17日に放送されたの、おばちゃんに録画頼んであったんだって急に言い出して、あの回を見なきゃ話がつながんないじゃない?だからね、貸して!」
「つながんないじゃないって…あきらから聞くまで話の流れに疑問を持たなかったんでしょ?なら・それで良いじゃんか」
「良かないわよぉ~あるって知っちゃったんだもんはぁ?ただ茂木が走ってるだけだぁ?その涼真クンが走ってるのが良いんでないのよ」
「昨日は『美の壺』の放送日でサ、ナイフやフォークのカトラリーをやってたから、もしかしたら陸王の上に録画しちゃったかもぉ」
「とにかく・そっちに行くからサ、探しといてよ!アフタヌーン・ドラマタイムとシャレようよじゃね」
こっちに来るぅそうと知ったら…どこでも良いから出掛ちゃおうっと
まぁ~わたくしにとって孫のような「あきらくん」から頼まれた録画ですから、消してはいないけども、ちゃんと録れているか確認はしたものの、それこそランナーがトラックを走っている姿と、こはぜ屋の半纏(はんてん)をチラッと見ただけであります
原作の物語の内容が前後を行ったり来たりしてしまうのは、映画でもドラマでも致し方のないことですが、活字で想像していた以上の出来栄えだった「こはぜ屋の半纏」でした
濃紺に仕立てられた武州藍染の襟には、白い「こはぜ屋」の文字…背中には店の印である「〇にトンボ」が染め抜かれています
ドラマの中にも出て来てビックリしましたのがトンボ…
金の糸で刺繍されているのは、大日本弓馬会・武田流…流鏑馬(やぶさめ)の流派でありますが、正装で身に付ける射籠手(いごて)に、このギンヤンマならぬキンヤンマが施されています
簡潔・且つトンボの特徴を見事に活かしたデザインかと思います
トンボは真っつぐにしか飛べぬといわれ…決して後退はしない、戦にはなくてはならぬ『勝ち虫』とされておりました
「武田流の家紋」は天皇家とも深いご縁があるとされている「武田菱」でありますが、やはり『縁起物・勝ち虫』を矢を射る手先に託し、ゲンを担いだのでありましょう
役者…特に歌舞伎役者は顔がデカくなくては舞台映えしないと言われています
確かに、歌舞伎俳優の「あの顔・この顔・その顔」を思い浮かべましても、みなさん・大きゅうございます
それに負けず劣らずのデカいお顔の役所広司さんであります
イタリア・ベネチア国際映画祭、コンペティション部門で上映された、是枝裕和監督の「三度目の殺人」…是枝監督にとって初めての法廷サスペンスとのことでした
弁護士役の福山雅治さんとの対峙を見比べても、その作りの違いが分かるかと思います
殺人の前科のある三隅(みすみ)は、三度目の殺人を犯す…解雇された工場の社長を殺し、更に火をつけてとした容疑で起訴され、犯行も自供し死刑判決はほぼ間違いないと思われていたのですが…三隅の弁護を担当することになった弁護士・重森はなんとか無期懲役に持ち込もうと捜査を始めます。
三隅は自供したにも係わらず、接見を続けて行くうちに供述が二転三転と変わっていくのに戸惑い、重森は真実を知りたいと本格的に調査を進めていく決意が固まっていきます。
そこから見えてくる事実は本当に真実なのか…被害者の遺族との関わりが彼を迷路へと誘って行くのですが、徐々にある秘密に辿り着くことになります。
なぜ殺したのか?
なぜ殺さねばならなかったのか?
本当に三隅が殺したのか?
誰かを庇っているのではないか?
映画を観終わっても、わたくしには何んとなくすっきりと致しませんで、案外に自分は黒白・はっきりとつけたい性分なのだと、この「三度目の殺人」で改めて気づかされました
然しながら、殺人犯・三隅を演じる役所広司さんの演技は心に闇を潜ませる得体の知れぬ人間の怖さを鬼気迫る表情と絞り出すような声で表へと浮かび上がらせていたように感じました。
玄関のピンポ~ンが鳴りました
出掛けそびれてしまい、居留守を使おうか…
そっとドアまで忍び足で行きドアスコープを覗いたら、サインをしている幼馴染みが歯をむき出して笑っておりました
「お昼、調達して来たわよさっ観よう」
「お昼はね、チキン・ライスって決まってんの!」
「じゃ・それサッサと作ってよ!うちの夕飯に貰って行くからサ」
人のうちのテレビを勝手に操作して、早々と再生された『陸王』を見始めた幼馴染みは、もうすでに涙腺が緩んでいる様子
と…役所さん演じる「こはぜ屋」の社長・宮沢紘一の顔が大写し!ドヒャァ~やっぱり凄い迫力だぁ
ソファの上に正座して観るほどのもんでもないと思うけども、主婦であるおばさんをこんだけ集中させてしまうんですから、さすが役所広司さん!ジョジョのイメージが強かった山崎賢人さんも見事にひと皮剥けたように思います
「最終回、持って来たから一緒に観よ録画だとコマーシャルが入んないから一気に観られるのよ」
「あちしは茶巾寿司食べようっと」
「2度も3度も観ているのにサ、この場面に来ると泣けちゃうんだよねぇ~」
「でサ、ベトナムへはいつ発つの?あっちでお正月迎えんでしょ?最後の単身赴任もベトナムで終わりだねぇ旦那さん、労わってあげなきゃダメだよ…どんなんでもサ、生きてるうちがハナだかんね」
「その・どんなんでもってのとこが引っ掛かるなぁあきらはアルバイトが終わる28日に発って、あちしは30日5時間30分で着いちゃうから体が楽だわ」
「今度はパクチー、克服しておいで」
ダミだ・こりゃウッウッと泣いとるわ
チキン・ライスでもこさえようッと