黄泉(よみ)の国ならぬ現世(げんせ)を走る江ノ電…ちゃんと地に着いた走りっぷりでございます
稲村ケ崎の駅を出まして…ゴトンゴトンと極楽寺駅へと向かっているところであります
藤沢駅から約10キロ…江ノ電の終点は「EN15・鎌倉駅」となります
西岸良平・原作『鎌倉ものがたり』が山崎貴・監督によって映像化され、先週9日に公開され、もうすでに大ヒットとなっているのだそうです
映画では『DESTINY(デスティニー)・運命』を大きく謳っておりますが、映画を観終わったあと…「あぁ、なるほど」と頷いていることと思います
駅のホームには新婚の一色夫妻が仲良く座って、みなさまの到着を待っていてくれています
さてわたくしも『DESTINY・鎌倉物語』の世界へ行って参ります
昔むかし、昭和の時代には鎌倉にも5つ映画館があったと聞いています
最後まで残ったのが、鎌倉駅・西口にあった「テアトル鎌倉」だったと思いますが、定かな記憶ではありません
もし、この『鎌倉ものがたり』を鎌倉の映画館で観ることが出来たなら、どんなにか幸せだったか…けれども、夕暮れ・逢魔が時から夜にかけて、ちょっと怖くて出歩けなくなるかも知れません
わたくし・鎌倉から離れて早や4年の歳月が経ち、仕方なく日本橋・室町2に併設されている映画館・コレド室町で観ることに致しました
先日のブログでもチョコッと書きましたが、堺雅人・高畑充希さんが、主人公のミステリー作家・一色正和、亜紀子夫妻を演じています
ファンタジー映画に仕上げてありますので、登場人物のほぼ全員が妖怪か魔物か、幽霊という始末でして…神様も出てくることは出てくるのですが、これがまた「死神」と「貧乏神」と手の付けようがありません
登場人物の相関図をじっくりとご覧になってから映画を観ることをお薦め致します
だいたい4つの世界に分れ、人間でも向かって左がまだ・まとも?右側になりますと…ちと怪しい?
下・左になると130歳になる家政婦・キンさんとか、鎌倉署の刑事と言ってはおりますが、絶対に変
下・右側は見るからに魔物・妖怪でして、親分の天頭鬼(てんとうき)が亜紀子に横恋慕する悪さをして一色夫妻を引き離し、亜紀子を黄泉の国へ連れ去ってしまいます
これを知った夫・正和は、妻を連れ戻しに黄泉の国へと果敢に旅立って行きます
ここで重要な役目を担うのが江ノ電・タンコロであります
毎日・丑の刻(午前2時)しか出ないと言う「黄泉の国行き」の1両電車・江ノ電…
これに、ひとり乗り込んだ一色正和は、果たして妻・亜紀子を救うことが出来るのか
さて結末はハッピーエンドに決まってんですから、鎌倉ならではのお話でも致しましょう
一色夫妻は結婚したばかりの新婚・ほやほやでございます
鎌倉の山を背景にした一軒家にお嫁に来た亜紀子はいそいそと朝食の支度を始め、味噌汁やら干物やら卵焼きと、今では懐かしい昭和の和食が並べられます
と…よぉ~く目を凝らしますと、和室に置かれたその食卓には、あの井上蒲鉾店の看板商品「紅白の梅花はんぺん」がさりげなく、お皿に盛られているじゃないですか
由比ガ浜に本店を持つ「井上蒲鉾店」さんは創業70余年、はんぺんもさることながら小魚グチを使った練り物製品は、焼いても美味しいのですが、おでんのようにコトコトと柔らかな火で煮ていきますと、魚の旨味がじゅわぁーと滲み出て、何んとも言えぬ味わい深いおでんに仕上がります
鎌倉駅・東口や小町通りにも店を構え、鎌倉のお土産として人気があります
梅花はんぺん、紅白、色に関係なく1枚135円で販売致しております
鎌倉と言えば、鶴岡八幡宮さまですが、その次に来るのは豊島屋さんの「鳩サブレー」ではないでしょうか
映画「鎌倉ものがたり」の舞台となる時代は、昭和の時代なのか、平成の世なのか…ちょっと謎めいた空間に浮いている気が致します
何しろ…一色家の屋根裏に貧乏神が棲みつくほどの時代です
新婚とはいえ、この家にお金が溜まるはずがありません
思えば、わたくしが住んでいた家の屋根裏にも貧乏神がいたんんでしょうねぇ~
ときどきですが、天井でガサコソと怪しい音がしてましたもの…あぁ~小銭にしか貯まらんはずだわぁ
その貧乏神(田中泯・たなかみん)が一色家の縁側でお茶に呼ばれ「美味しい!」と食べているのが、何を隠そう!
この豊島屋さんとこの「鳩サブレー」なんです
豊島屋さんは創業してから123年を誇る老舗でありますが、今も変わらずの人気商品で、鎌倉の町を行く小学生・中学生たちの手には鳩サブレーが入っている黄色い袋を必ずぶら下げています
貧乏神がいたく気に入ったバターの香りがするサブレーにも、密かなこだわりがありまして、鎌倉に住んでいるか、よほど「鳩サブレー」が好きでないとご存じないことがございます
今は東京のデパートでも買うことが出来る豊島屋さんの「鳩サブレー」ですが、包装紙を止めるシールにちょっとした秘密があるんです
『鎌倉鶴岡鳩満宮前通豊島屋』と記されていますが、これは赤い二の鳥居のすぐ側、若宮通りに面している本店にしかないシールであります
「鳩」が売り物なのに、鶴岡八幡宮さまに敬意を表して「鶴」を描いた包装紙を用いております
1枚・120円ですので、貧乏神にご馳走しても惜しくないかと思います
わたくしどもが東京に越しまして、あの屋根裏に潜んでいた貧乏神…どこのお宅へ移って行ったのかしらん
我が家はマンション住まいとなりましたものですから、貧乏神が棲む屋根裏がございません…それにしては相変わらずの小銭暮らし…大掃除でひょっこりと出て来たら、電車賃を貸して鎌倉に追い返そうかと思っております
でも…貧乏神と一緒に横須賀線に揺られながらでも、また鎌倉の友だちに逢いたくなりました
「あの友だちって…人間だったよね」