本日より冬の始まり…二十四節気・第19番目となります『立冬』が巡って参りました
「この木・なんの木・気になる木」欅・ケヤキでございます
但し…日立の木ではなく、明治安田生命ビルの敷地内に立つ木であります
春の芽吹き爽やかに、初夏の新緑鮮やかに、夏の木陰涼し気に、そして今・まさに晩秋の紅葉燃えるよに葉をすっかり落とした冬の梢は、凛とした佇まいをも見せてくれます
ただ…その落ち葉は数知れず、掃いても掃いても…まるで手品のように無限なく舞い下りて来るように思います
都会では枝を離れたら最後、木枯らしに吹かれて風任せ…ひとりっぽっちでビルの谷間を彷徨いなければなりません
『吹きたまる落ち葉や町の行き止まり』
(ふきたまるおちばやまちのいきどまり)
正岡子規
七十二候は「山茶花始開(さざんかはじめてひらく)」を迎えます
ここ・江東区の区花は「山茶花」となっていまして、仙台堀川、親水公園など街を流れる運河の緑道に多くの山茶花が植えられています
この山茶花が咲く時期になりますと、運河のあちこちで「ハゼ釣り」が昔から盛んに行われ、深川の魚屋のおっちゃんでさえ、竿1本肩に…「ちょっくら行ってくるぜぃ」と商売は女将さん任せで肴を釣りに姿を消してしまいます
女将さんひとりで鯵の3枚卸から、鯛や鰹の皿盛りをこさえたり、次から次へ来るお客を捌いたりと、てんてこ舞いの忙しさ…
「親父さん、またどっかへ行っちまったのかい?」
「そうなんだよ!ハゼなんぞ釣ったって1文にもなりゃしないのにサ!うちの売れ残りで一杯やりゃぁいいだろうに!ったく!何、考えてんだか」
「陸釣りに通うよりいいだろ?」
と・まぁ~深川の下町っ子は耳年増になるはずです
ところが…暮れともなりますと、この親父さんが釣ってきたハゼを、女将さんがきれいに下ごしらえをし、コトコトと七輪で煮ておりました
色艶よく煮上がった甘露煮は店先に並べられ、よく魚を買ってくれるお得意さんの手の平に箸で摘まんでは、たとえ子どもであろうと「チョィとお味見」と言ってのせてくれたもんです
「あれ、ハゼかい?うん、上手に炊けてるよ。もうそんな時期になったんだねぇ」
町の歳時記みたいな役割をも担っていた魚屋さんでありました…今も3代目が商っておりますが、ハゼの甘露煮は、いつの間にかなくなってしまいました
亡き夫が残していった竿を肩に…どれ、ハゼ釣りと洒落てみましょうか?