「本日も晴天なり」さすがに3日間、太陽に晒されていると、塩分が抜けた干物になって行くような不安を覚えます
北陸の地・富山・金沢の旅も最終日を迎え、我らが頼りのガイド役・友だちのお薦めは北前船で財を成した廻船問屋・森家に決定
富山駅北口より、富山ライトレール会社の路面電車・ポートラムに乗って終点「岩瀬浜」まで25分…ビル街から徐々に住宅街へ良く利いた社内冷房が心地よく、気が付くと友だち3人コックリコン
これから模型とは言え、北前船を観に行くと言うのに、すでに筏のような船を漕いでおります
と…車内がちょっとざわつき、おじちゃんたち十数人、ドアのところに集まってきました
おじちゃんたちは如何にも如何にも昭和と言った雰囲気を漂わせておりますもので、停まった駅名『富山競輪場』を見て「ははぁ~ん」と納得
大きな看板には、昭和26年に開設された云々が書いてあります
寒冷地の競輪場ですので雪が積もったら走れぬでしょうから、きっと真冬は閉められていると思います
そう致しますと、春から秋にかけてのみの営業でありましょう
おじちゃんたちがこぞって押しかけるのはここ・北陸の地ならではの楽しみ方かと、大損せぬよう、おじちゃんたちの背中を見送りました
終点「岩瀬浜」から廻船問屋通り・大町通りまで徒歩15分あまり
炎天下、日陰のまったくない道を、4人・足並み揃えて1歩づつ確実に前に進みました
「あれって何」
神通川(じんつうがわ)に架かる橋のたもとに、なんとまぁ~富山特産の名で知られている「白えび」が2匹、カッラカラに干乾びて転がっているじゃないですか
「太陽で殺菌されてるから大丈夫よ」
「…?何が大丈夫なんですか」
「お味見」
「シャリシャリしてそうですしね」
「でも、ホラ2匹しか落ちてないし…私たち4人だし…どうぞ人生の先輩方にお譲りします」
ここ・富山湾…日本海を背に美しい譲り合いの精神の花を咲かせましょう
わたくしたち・若いもんは白えびを跨いでさっさと大町通りへ急ぎました
「もしかしたら、海老で鯛が釣れるかも…」
ガイド役の友だちが走って拾いに行きました
富山湾は魚の宝庫だと聞きました
白えびにホタルイカ、寒ブリにノドグロと十の指では数え切れぬほどの美味しい魚介類が水揚げされ、寿司ネタに海鮮料理、懐石などの高級食材としてその価値を認められています
その白えびが「インスタントラーメン」になっているのにはびっくり
寿がきや食品さんが出している、とんこつベースと合わせた塩味だとか
白えびの繊細な甘さを、何もこってりとしたとんこつと合わせなくともいいんではないかと思うのは、わたくしたち素人の考えなのでしょうか
然も…ひと袋・160円と高い
道で拾ったあの「白えび」…どうしたのかを友だちに訊けずにおります
ようやく廻船問屋町屋が並ぶ大町通りへ辿り着きました
持って来た水も底を尽きかけたころ…酒蔵元の涼し気なのれんが目に入りました
吸い込まれるように蔵の中へ
何百、いえいえ何千、何万ものワインが大きな大きなガラス張りのワインセラーに貯蔵されています
「やっぱり値の張るワインは下の方に置くんでしょうね」
「なんでですか」
「なんでって、グラッと地震が来たら上のワイン、落ちて割れちゃうでしょうが」
「ははぁ~なるほど」
で・みんなでしゃがんで下に積んであるワインの値定めをしましたら、これが高い・安い・その中間がごちゃまぜに積んでありました
店内、白い蔵壁に『甘酒・210円』の張り紙をみつけ、甘酒は「熱中症予防にとても良い」と健康に関する雑誌に書いてあるのを思い出し、思わず…「甘酒、一丁お願いします!」と頼んでしまいました
アルコール分は入っていないので、ほろ酔いとはいきませんが麹の味がしっかりとしているのに、後味がスッキリ
暑さで参った体の毛細血管が生き返ったように元気になりました
友だち3人も冷やした甘酒でひと息付いたようです
国が指定した重要文化財・旧・森家の住宅は100円の入館料で自由に見学ができます
前にも来館したガイド役の友だちが事務所になっている玄関で家の案内を頼んだら、受付に座っていた「おばちゃん」が吉本興業・お笑いタレント顔負けのパフォーマンス、リズムに乗った解説をしながら案内をしてくれまして、如何にして廻船問屋・森家が巨万の富を得たのかを手足を使って話して下さるのですが、これが漫談を聞くような面白さ
「来て良かったわぁ~」
桁が違う儲けを手にした廻船問屋は何軒もあって、その富で私腹を肥やさず富山の人たちに還元したそうで、一軒は富山大学を建て、一軒はわたくしたちが乗って来た鉄道を引き、または道を整備しと町の発展のため惜しみなく財を充てたと聞きました
北前船に米や酒、薬などを積んで北海道へ…その北海道で昆布にニシン、サケに換え…大阪へ…そこで昆布と交換に綿を仕入れ、途中で藍玉や紅花と共に織物にして、また交換と富を倍、倍にしたから、北前船を仲間内では『バイ船』と呼んでもいたとか…
富山のみなさま方・1世帯あたりの昆布の年間支出金額は¥2730、なんと!49年間も第1位を誇っているんだそうです
さて、北陸の旅もいよいよ終わりでございます
わたくしたちが買い求めた、お土産の数々を少しだけご紹介しましょう
関東で「昆布巻き」を頂くのはおせち料理と年に数えるほどしかありませんが、昆布が常備食の富山では昆布巻・棒鱈煮(ぼうだらに)の専門店があるほどです
甘からず、辛からず…酒の肴にもご飯のお菜にもなり、近くにこんなお店があったら重宝致します
金沢の町を走るバスに「俵屋・あめ」の広告を見つけ、懐かしい名を頭にインプット
瓶入りで重たいので新幹線の構内にあるお土産屋さんで購入
「俵屋・じろあめ」は割りばしで練っていくと空気が入り、こうして乳白色になってきます
思ったより固く、練るのに結構な力が要りました
若い時と違い、こんなものにまで歳を感じるようになってしまいました
本当に懐かしくも素朴な「あめ」を子ども心に戻ってなめました
富山のお土産に、この「ます寿司」を外すことは出来ません
デパートの物産展で必ず出品されるのが「源・ますのすし」です
いつも見慣れているのは青いパッケージかと思いますが、東京には出荷せぬと言う「特選・赤いますのすし」を買ってみることにしました
店員さんの言うことには、たっぷりとした脂がのっているそうです
ガイド役の友だちの一押しのます寿司は「今、蘇る 幻のます寿司」を作っている「秘伝の味 大辻」さんです
じっくりと食べ比べてみますと、「源」さんは脂がのっていてもサッパリとした食べやすさです
「大辻」さんの鱒はキングサーモンのような甘みと脂があって、これは冷酒好きには堪らない美味さがあるかと思います
1歩間違えると生臭さに変わってしまうところを、バランスの良い酢の使い方で旨味に変えております
亡き主人には富山の銘酒「満寿泉(ますいずみ)」とふたつのます寿司を供え、とにもかくにも無事に我が家に戻ることが出来たことを報告し、感謝の気持ちを込め手を合わせました
平均年齢・70歳のメンバー4人組の珍道中…おわら・風の盆に行った1日目の万歩計は14、682歩・歩いた距離は9、8キロ、260キロカロリーの消費
2日目…金沢の町をバスで移動したにも関わらず、12、655歩・歩いた距離は約8キロ、251キロカロリーを消費
さて、3日目…富山・岩瀬浜の北前船へ…11、305歩を歩きまして、こちらも約8キロ・消費カロリーは317と最高値を打ち出しました
歩いた総計は3日間で38、642歩、26キロにも及び、消費したエネルギーは827キロカロリーにもなりました
ます寿司をひと口、またひと口と頬張ると帰って来たばかりなのに、もう懐かしい旅の思い出となって皆のお顔が浮かんで参ります
今回の旅でガイド役の友だちがいてくれなかったら…今でもわたくしたち・3人は北陸の地をうろうろと彷徨い、それこそあの白えびのようにカラカラになって行き倒れになっていたことでしょう
ホントありがとう
北陸では珍しく、晴れて晴れて晴れまくり、暑さで疲れ切ってしまったものの、本当に楽しゅうございました
真っ黒に陽に焼けまして、おかげさまで小麦色したマーメイドのようであります
「まぁー冥土」の良い土産になりましてございます
長い珍道中の話にお付き合い頂きまして、改めて御礼申し上げます