おひとりさま・クリスマスイヴ

「ばば、今夜はイヴだけど、メリー・クリスマスゥ～」
「どなたさん」
娘が送って寄越した写メールよくよく見たならば
娘が飼っている「柴犬・うにとトイプー・はろ」の・ようでもある

「の・ようでもある、じゃなくて、うにとはろだよん」
「…お揃いの衣装だけどもサ、還暦を迎えたワンコロそのものだよ」
「じゃ、別の角度から撮ったのは、どぉよ」

「ははぁ～真っ赤かだねどっから見たって６０のばぁさまだわまっ、気持ちは有難く頂戴いたします」
携帯の電話口で「ワンワン・ワン」と吠えているだけなんですが、通訳を介さずにこれだけの会話が成り立つんですから、わたくしも捨てたもんじゃござんせん

さて今宵は「おひとりさま・クリスマス」をこっそり決行しようと、シャンパンの小瓶を用意いたしました
亡き夫とシャンパンで乾杯…何に乾杯するのか、日本人である私にはよく分かりませんが…一応、遺影に「あーたの健康に乾杯」といきますか
う～ん、食前酒として頂くと、やはり美味しいなぁ～と一気にゴックン

ひとりですからね、もういきなりメイン・ディッシュに突入です
鎌倉の大先輩でもある友だちから大事なアドバイスを頂きましたので、これも今夜決行致したくビーフを買い求めて参りました
「年取ったら取ったらで肉肉を食べなきゃダメよ！筋肉をしっかりと付けるには上質なたんぱく質、出来れば牛肉を食べなきゃ、すっ転んじゃうわよ」
デカい肉に見えるように、肉よりひと回り小さなお皿に無理やり盛り付けてみました
ひとりで見栄を張っても仕方がないのですが、見た目よりも薄い肉でございますので、見栄を張った甲斐がありません
食べ始めから食べ終わりまで、ひとりですから黙々と一生懸命咀嚼（そしゃく）を繰り返すだけまだ顎関節症の完治を見ない私の左顎が少々悲鳴を上げ始めております
筋肉のためでありますから、ここは完食を目指して、ガンバッ

我が家では野球の巨人戦以外、テレビをつけての食事は夫がいたころからあまり致しませんでしたので、ひとりになってみますと野球の試合はオフですし、少しもの悲しい食卓になってしまうのは致し方ないことかと思います
そこで好きなアーティストの音楽を掛けながら食事をするのが私の新しい習慣になりました
今年は自分でクリスマス・プレゼントを選び、アデルのアルバム『２５』を銀座・山野楽器で買いました
前作のアルバム『２１』でグラミー賞・６部門の受賞を果たし、「００７・スカイフォール」で担当した楽曲がアカデミー主演・歌曲賞を受賞

５年ぶりに発表したこの『２５』…アルバムの中の「Ｈｅｌｌо」は、全米・全英でシングルチャート１位を獲得…今、全世界で鳴り響いているアデルの歌声を聴きながら、デザートのケーキを頂くことにしましょう
門前仲町から清澄庭園へと歩いて行きますと、京橋・千疋屋さんの製造直売所店がありまして、出来立ての各種ケーキを買うことができます
直売店ですから、切りそこなったフルーツで作ったサービス品が店頭に並ぶ時がありまして、今日はイチゴの杏仁豆腐のような、そうでないようなプルプルした四角いムースが売られていました
そのサービス品を主人に供えまして、すぐにお下がりにして結局ふたつともアデルの『ハロー』を聞きながら、お腹に収まってしまいました
音符ひとつ・ひとつが心に響く素晴らしい表現力に聴き入ってしまった「おひとりさま・イヴ」でございました