今年2015年最後の二十四節気・第22番目『冬至』が巡って参りました
この日は一年のうちで昼が最も短く、したがって夜が最も長くなる日であります
冬を極める『冬至』を境に「一陽来復(いちようらいふく)」を迎え、災いが転じて、悪いことばかり続いたあとにようやく幸運に向かう日とされます
今年は12年ごとに巡って来る十二支のうちの「未」。
私の干支であったのに、夫を亡くすという辛いことがありました。
来年になって幸運がこの手に回ってくるということなど、夫失くして、なんの幸運と言えるのか…私にはまだ考えられぬことであります。
けれども「芋タコ南京」が大好物であった夫に、かぼちゃを調理して供えることが出来るそんな些細なことが幸せと感じることはできます
今年の『冬至』は夫のために丁寧に心を込めて、かぼちゃの温かなスープを作りました
「喜んでくれるといいんだけど…」
昨日、幼馴染みの息子・東京造形大学に通う大学一年に、電気工事を頼んだことはブログに書きましたが、その大学一年が帰り際に言った「おばさん、ヒマがあったらサ『黄金のアデーレ』って映画、観てみたら?けっこう良かったよ。実話の映画化なんだけど、ナチが略奪した絵画を元の持ち主が国を相手に裁判を起こしてクリムトの絵を取り戻すっての。お袋にも薦めておいたから声掛けて行って来たら?ヒマこいてないで」
「ヒマ・ヒマって何よヒマなんぞこいてないわよそんなもんこいてどうすんのよ!ったくぅそれってクリムトの『アデーレ・ブロッホ・パウアーの肖像』をめぐっての映画でしょ?面白そうだねぇ。うん、誘って行ってみるねお宅のお袋さんもヒマこいてんだろうからサ」
で・すぐ誘いの電話を入れましたら「それって、あさっての24日で終わっちゃうのよ!行くなら今日しかないんだわ!あーた、どうせヒマこいてんだから、午後一で行こうよ」
子も子なら、親も親もですなぁ~ついでに幼馴染みも幼馴染みだねぇ~
化粧もそこそこに日比谷シャンテ・東宝シネマズまで行って映画鑑賞となりました
10月にも、この幼馴染みに誘われて観に行った『マイ・インターン』そのときは近くの木場・109シネマズでしたので、それこそスッピンと言いますか、買い物ついでのおばさんふたり連れ!ってな、いで立ちでございました
水曜のレディース・デーの割引を利用して観ようといろいろ心構えをしてチケットを購入しようと作戦を練って臨みましたが、券売機を勧められ、レディーたる証拠を見せることなくおばさんでもレディース料金で入場することが出来ました
「今回はどれの特典を活かして入ろうか?今日は火曜だからレディースは無理。夫婦割引きってのは、どぉよ?」
「うん、いいんじゃない?この時代だもん!同性婚ですって言えば50パーセントの特典が利くわい」
「よし、それで行くよ!」
ここは自動券売機がない、昔ながらの窓口でひとり・ひとり買うシステムでして、アクリル板の向こうにお姉さんかお兄さんがマイクを使い、手だけが出せる小さな窓からチケットが手渡されます
「次の黄金のアデーレを観たいんですけど…」
「はい。午後2時45分からですね?1100円になります」
「えっ1100円でいいんですかなんの特典になるんですかの?」
「シニア料金ですが…あっ大変失礼いたしました!1800円になります」
「い~え、わたくし立派なシニアですから、お気遣いなく。1100円でお願いします」
「何、ごちゃごちゃ言ってんのよ1100円でいいの」
「私たちってサ、どこからでも誰から見ても、もうすでにおばさん以上なんだわ」
クリムトの「黄金の女性」として私たちはその絵を見てきましたが、モデルとなった叔母の肖像画を姪が裁判にかけて取り戻す実話であります。
ナチに没収された肖像画は、戦後になって国家所蔵の美術品としてオーストリア美術館に所蔵・公開となっていました。
数年を費やして裁判に勝訴
元の所有者である身内に『アデール・ブロッホ=パウアーの肖像』として60年振りに戻ってきたのです。
主人公・マリアを演じたヘレン・ミントの演技は静かではありますが、その存在感はさすが…『クィーン』でアカデミー主演女優賞を受賞し、オスカー像を手にした貫録が画面に映し出されています
現在「アデーレ」は、エステー・ローダー化粧品会社・会長ロナルド・エステー氏に競売で1億3500万$(約160億円)で競り落とされ、彼が所有するニューヨーク・ノイエ・ギャラリーで所蔵され、公開されているとか
日本の光琳派に多大な影響を受けた、この肖像画は油彩に金箔・銀箔がふんだんに使われ、今でも黄金の光で輝いておりました
ヨーロッパ・オーストリアから大西洋を渡ってアメリカへまさに『名画の帰還』を果たしました
「なんかジンとしちゃったよねぇ~いやぁ良かったわぁ」
「うん。でもサ、もっと熾烈な裁判劇で奪還するのかと思ってたら、案外、情に持っていったね?ご子息によろしく言っといてね」
さて、公共の場である映画館。
夫が膀胱がんでオストメイトになってから、その始末が楽に行えるトイレがあるとホッとしたものであります
ここ日比谷シャンテ・東宝シネマズ、きちんと対応しておりますので、どうぞ安心していらして下さいませ