ふっと見上げたその空に浮かぶ雲のあまりの美しさに、植木に水を遣っていた手を止めて魅入ってしまいました青空

「あなた、そこにいるの?青く澄んだ大空を飛んでるの?そこから見た東京は紅葉がきれいでしょ?」おとめ座

「…は俺?俺夕べサ、大学時代の友だちとバッタリ会っちゃって…もう何年振りかなぁ~?あいつが死んだの20年前だったかな?そしたら知り合いがいっぱい待ってるってんで、極楽の居酒屋に連れて行かれたのよ。俺が膀胱がんでこっちへ来たって言ったらサ、みんな大歓迎してくれて…俺、うれし泣きしちゃったよ…汗周りの奴らね、やれ前立腺がんだの睾丸がんだのってサ、泌尿器科の常連ばっかりよ!俺は膀胱全摘して、オストメイトになったんだぞって言ったらサ、みんな驚いちゃって、上座へ座らせられて、一番偉くなっちゃったんだよ!それで宴会は大いに盛り上がったのはいいんだけどね、調子こいちゃってサ、飲み過ぎで二日酔いお酒大好き棒人間もうね、こんなお天道様眩しくて頭ガンガンよaknところで、きみは元気にやってるの?」おじさん

「はぁ~ダウンもぉ極楽に居酒屋があるなんて知らんかったよ…極楽でも病気自慢ってあるんだねぇへぇーまぁ、あの調子じゃ自分があの世へ行ったことも忘れちゃってるわあうーそばにいたら玉子酒でも拵えてあげるんだけど…あんまり飲み過ぎると体に悪いよ。肝硬変でまた大変なことになっちゃうよ…ってか、がんの痛みや苦しみはなくとも二日酔いはあるんだねぇ~熱燗あの世もこの世も、酒ってのは永遠の課題だね」おとめ座

空に塩を撒きたい気分を抑えつつ、水遣りを済ませましたプランターじょうろ

先日、鎌倉に住むイタリアと赤ワインを愛してやまぬ友だちから、虫をこよなく愛する私のために1冊の本をわざわざ送って下さいました伊ハートワイン

奥本大三郎・著「虫屋の落とし文」と言う、ちょっと粋な題名もなかなかのもの…カブトムシ

とは言いましても、昆虫に限らず、鳥は出てくるわ、猿も登場するわ、熱帯魚も水しぶきをあげるわ…場所も日本はもちろんのこと、パリ、アフリカ、中国と世界中の国のありとあらゆる生き物が章ごとに顔を覗かせます!

さすが…フランス文学に精通し、世界に名だたる昆虫学者「ファーブル昆虫記・全8巻」を完訳者でもある奥本氏ならではの生き物のとらえ方に、改めて感心をいたしましたarinkoかなぶんテングザルピラニア

虫の奥深い世界のすみずみまで知り尽くし、尚且つ『へぇ~、虫ってそんな考えを持ってんのぉ?』と、どんな虫にや生き物に対してもやさしく柔らかい解釈で描写をしていますので、すすすっと読み進むことができるかと思います蝶01かぶとむし

懐かしく思い出しましたのは、甲虫の顎の強さを描いた『雄鹿甲(スタッグ・ビートル)のヴァニティ』と言う章で、道案内の別名がある彩りが美しいハンミョウを描いた一節が記されていますハンミョウ

このハンミョウの顎を、それこそめがねで観察いたしますと、それはそれは肉食としての立派な顎がノコギリのようになっていて、思わずハンミョウを捕まえていた手を離してしまうほどの凶暴さがむき出しとなって見えます。

顎関節症で歯医者に通う私にとっては、なんとも羨ましいほどの顎であります歯

鎌倉の山道を夫とふたりして歩いておりますと、ほんのたまにこのハンミョウが私たちの行く方向でじっと待っている素振りを見せまして、ある程度の距離を測ったようにぴょんと歩くでもない跳ぶでもない歩調で行先を教えてくれているかのように現れることがございました。

こちらもなんだか楽しくなって、脅かさぬよう慌てさせぬよう、知らんふりを決めてトコトコと山道を超えたものです。

ハンミョウの方が私どもの足取りに飽きてくると、すぃと羽を広げ元来た道に戻っていきます。

なにかがっかりしたような、ほっとしたような…ふたりして肩の力を抜いた覚えが、今もこの肩のあたりに蘇って参ります。

友だちがこの「虫屋に落とし文」を購入してくれた本屋さん…鎌倉・由比ヶ浜では古書を扱う老舗の「公文堂(こうぶんどう)」さんです。

鎌倉・裏駅から御成商店街を抜けまして、由比ヶ浜商店街さんをまっつぐに、六地蔵さんのちょっと手前に店を構えております勉強

昔から変わらぬカエルや猫など、洒落たデザインにした包装紙、送って下すった友だちも「懐かしいですよね」と書いてくれていましたカエル猫

不思議な縁を感じましたのは、私どもが3年前に鎌倉を離れる際、納戸に山積みにしてあった単行本や文庫本、純文学や歴史書の全集など車のトランクいっぱい、買い取って頂いた古書屋さんだったんですマガジンタワー

その中に…この本が入っていたかなぁ?

「いえいえ、そんなことはありませんですぷぷッ(笑)本当にお心遣いの1冊、ありがとうございましたsao☆

時間も忘れ夢中で読んでいましたら、ふっと活字が読みづらくなって顔を上げましたら…まぁ~見事な夕焼け夕焼け

洗濯ものも取り忘れておりました。

立ち上がることも億劫になって眺めていますと、ずんずんと思った以上に早く太陽がビルとビルとの間に沈んでいきます夕焼け

この時間って、ひとり身には案外と淋しく辛い気持ちになって落ち込んでしまう、魔の時。

それこそ「逢魔が時」となって、この身をどこか遠く果てのない荒れ野へと運び去られて行くような心もとない気分にさせられます。

そこでハッと我に返る力を損んじてしまいますと、暗い穴へとただただ沈んで行くだけの日々になり兼ねません。

ここでも鎌倉の友だちの手を借りることにいたしましょうsei

『鎌倉』の消印があるハガキが2葉先日届きまして、1葉は我が家と一緒の喪中ハガキでありました。

もう1葉は私の様子を心配してくれるハガキでありまして、そこには『私も夫を亡くしたのは、あなたと同じ還暦・60歳のときでした』…そして、その友だちもやはり心労でありましょう、5キロも痩せてしまったと書いてありました。

「げっ!私は痩せた痩せた!と人に言いふらしちゃったけど、精々が3キロから4キロだぜぃ!負けたっガクリおとめ座

『季節が変わりますから、お風邪などひかぬように。また鎌倉でお会いしましょうね』と結んでありました。

その時まで…私は、ああぁ自分だけにこんな悲しみ・淋しさが押し寄せてきてと、泣いてばかりの毎日を送っていました。

決して私ひとりが辛いんじゃないんだ…と涙を拭きました。

そして…もう1葉。

お母様が亡くなった悲しみのなかでも、やはり私を気遣ってこんな対処法を書いて送ってくれました。

『お風呂にお湯を一杯張って、顔をすれすれのところまで浸かって、大声で思いっきり声を上げてわんわん泣くといいよ。不思議とスッキリとするから。体に気を付けて、また会おうね』と元気がもりもり湧いてくることが書いてありますsao☆

「そうだ!今夜はお風呂に入ってわんわん泣こう!泣いて泣いて鼻水と涙でお湯を溢れさせちゃおう!」おとめ座

そうしてビールでも開けちゃって、本の続きを読もうビール本酔っぱらい。

「あなた!友だちっていいよね!老いては子に従えって言うけどもサ、これからは友だちの言うことに従った方がいいかもね?二日酔いはどぉ?チーンお線香おとめ座

『…俺?いやぁサ、今夜は会社の先輩から声を掛けられてんのよ!後輩の中にも先に逝っちゃったのがいてね、先輩!久しぶりにお会いしますけど、老けちゃいましたねなんて言いやがんのむかっこっち来てから忙しくてさ、モテモテなんだよ!あっ今日は夕焼けがきれいだよ。空を見上げてごらん」おじさん

「はぁ~tiredもうね、勝手にやって下さいなパンチ!明日からお茶も梅干しも、線香も供えませんからねっ蹴りおとめ座

もうすっかり…日が暮れてしまいました。

天上では今夜も宴会ですか…楽しそうだなぁ~お酒大好き棒人間