早いものです。

季節は二十四節気の九番目「芒種(ぼうしゅ)」を迎えることとなりました。

穂の生る穀物の種を蒔くころ…実際には、もう種蒔き・苗を植え付ける農作業は終わってはいますが、先人たちが五穀豊穣を願い、梅雨時に降る恵みの雨に祈りを込めた気持ちが伝わってくるようですおにぎり

せっかくの「芒種」がさめざめと泣いているかと案じてはいるものの…

今日・六月六日は、わたくしのただひとりの兄・明の誕生日でもありますケーキ

お互い、一年に一度・365分の一の確率だってのに、合わさってしまった「芒種」に同情するほかありません汗

兄はわたくしとは八つ違いとなりますから、今年で六十八の齢を数えることになりましょう。

「珍しくサバを読まずに足し算したな」と兄に言われそうですが、我が情けない兄も、情けないなりによくぞここまで大きくなったもんだと感心を致しております。

ささやかではありますが、お米・十キロばかりを誕生祝いの品にしようと我が家御用達の米屋まで自転車を走らせました!

ここはすべての米を玄米で仕入れ、客の注文に合わせ、その場で精米をしてくれる、昔ながらの米屋でございます。

東京へ戻って来て、ここの米屋がまだ看板を揚げているのを見付け、何んとも懐かしく、よくぞ続いていたものよ…母の代から出入りをしていた米屋でありますから、胸がこうジーンとしたものでした。

久しぶりに店に行ったとき、なんだか見覚えがあるような、ないようなおいちゃんが店番をしていました。

目が合ったとたん…お互い「あっ!」女の子「へッ?」男の子何十年ぶりかの再会となりました。

下町でも跡継ぎ問題がこじれ、畳む店が多いなか、珍しく長男が継いでいて、しばらくはここの美味しいお米が食べられると、ホッとひと安心合格

北海道に住む兄が好んで食べるのはミルキー・クィーン・茨城産のお米です。

兄は自家精米機を北海道まで持って行ったので、玄米を送ってくれと注文を付けてきます。

「その日の体調でね、五分搗き七分搗き、ハレの日にはサ、白米・銀シャリよ!精米したては美味いぜ」

「お誕生日おめでとう!」の熨斗を掛け、玄米十キロ・北海道へと送ってもらいました。

「あぁ…あきちゃんかぁ、元気でやってるの?ホントに北海道へ行ったんだぁ~?あっちにはサ、ゆめぴりかって美味しい米があんのに、ミルキー・クィーンがいいんだって?相変わらず変わってんね。郷に入れば郷に従えで、北海道産の米、食べりゃいいじゃんね?」

「好きなのがミルキー・クィーンなんだから、いいじゃないのよ!ちゃんと送ってよ」おとめ座

で・我が家は米屋お薦めの「ゆめぴりか」を精米してもらいました。

「五キロ、いっぺんに精米しちゃうの?止めときなって!一キロでも二キロでも構わないからサ、小分けして持っていきなって」

「めんどくさいじゃん!」おとめ座

横着なことを口にした、その瞬間!遠い昔を思い出しましたひらめき電球

下町が貧しいとは言いませんが、職人が多い土地柄でありましたから、みんな宵越しの銭は持たない気性でして、蓄えなどないその日暮らしがまだまかり通っていた昭和三十年代でありました。

夕方、下町の商店街を小さなボールを持って行く子をよく見掛けたものです。

それは豆腐や浅利を買いに行かされたりと、よく使いに出されたものでした。

その子たちに混じって米屋へ行く子どももいまして、その日の晩と翌朝の米の分だけを買いに行かされると聞いたことを覚えています。

「あすこのおっとっつあん、博打で身崩しちまって今晩の米も買えやしないんだよ。芋の煮っ転がしを持って行くのはいいんだけどサ、あのとっつあんが食べるのかと思うとサ、シャクに障るじゃないか!」

働き手が体を壊して寝付いてしまった家もあったりと、その日暮しが本当にあった時代でした…

米屋は一合、二合でも嫌な顔もせずに、精米した残りの米を売っていたものでした。

醤油や油の量り売りもしてくれましたし、隣近所での塩味噌醤油砂糖の貸し借りも当たり前にありました。

「返すのはいつでもいいからね。貧乏はお互い様さね。気にしなさんなっておっかさんに云っといておくれ」

「ありがとうございます。お借りします」

玄関先で、母親と近所の子どもの交わす言葉が聞こえてきたのも覚えています。

「配達なしだから、百円引いとくね。あきちゃんとこはサ、気が向いたら送っとくわ」

「ちょっとぉ~むかっ誕生祝いなんだからね!北海道へは二日掛かるんだよぉ~早いとこヤマトに渡してよ」おとめ座

「誕生日っていつよ?今日?運ぶのは猫だぜ。ペリカンだって無理だよ!間に合うはずないじゃんにゃー呑気だよなぁ、計画性ってもんがまったくないね」

「米屋にそこまで言われるこたぁないわっ!ほかの米屋にする!」おとめ座

と言いつつも、兄の誕生日をうっかり忘れておった私がいけないのだから、ここは大人しく頭を下げて頼むことにしました。

ところで…米屋の金物はみぃ~んなピッカピッカに磨きが掛かっています。

「なんで?」

「糠。糠で汚れが落ちて、磨きもしないのにこんなにピッカピッカになるんだわ」

そう言えば…子どものころ、銭湯に行くと糠が置いてあったことを思い出しました。

母親は晒しでこさえた袋を持って、この糠を詰めて体を洗っていました。

ピッカピッカにはならないようだったけど…

「あそこの湯屋だったら、うちんとこの糠だと思うよ。おみえちゃんサ、糠味噌漬けてんだったら、糠、少し持って行く?」

「タダ?」おとめ座

「幾らでも持って行っていいよ!」

お兄ちゃんにメールだけでも送っとこうっと!

「お誕生日おめでとうブーケ1傍に友ちゃんがいてくれる幸せを噛み締めて、また一年踏ん張って下さいケーキ追って祝いの品・お米が届くかと思います。遠慮なしに食べて下さい」おとめ座

夜も更けようとしているのに、携帯はウンともスンとも言わず、眠ってしまったかのように静かであります携帯