あのカゴメって…トマトケチャップかトマトジュースのイメージしかありませんでしたが、トマトの菜園をも運営し、こうして潰さぬ前のトマトを販売しているんだそうです。
それもトマトに含まれている「リコピン」が普通のトマトよりも1、5倍もある「高リコピントマト」と聞けば、1度は試しに買ってみようかと買い物カゴに入れました。
社名・カゴメはこのカゴから由来したとか…野菜を収獲するのに昔は竹で編んだ籠を背負ったもんですが、その編み目である籠目から付けたとのことです。
切ってみますと、キャッチコピーそのままに中は真っ赤か
「すっぱぁ~い!リコピンって酸っぱいんだ」
味は確かに濃いんですが、甘みも強いかわりに酸味もキュッと舌にきます。
ところで…マヨネーズが大好きで、何んでもかんでもマヨネーズをかけて食べる人をマヨラーと言うと聞いたことがありますが、ケチャップをだぶだぶかける人をケチャラーと言うんだそうです!
「どっちにする?究極の二択だね」
「…う~ん、このトマトにかけるんなら、マヨラーだね。トマトを食べるのにケチャップはしつこくなるもんな」
「そうだよね!」
ささっとトマトを平らげ、今日は清澄にあります「深川江戸資料館」で開催されている『江戸文字展』へ…
あちこちの掲示板に貼られていたポスターを見て楽しみにしていたのですが、家人の発熱で半分諦めていた展示会でした。
「発熱しちゃって悪かったね!」
腎盂腎炎では致し方ありません。
橘右橘(たちばなうきつ)が書く書は歌舞伎文字の勘亭流、寄席文字、相撲文字など、江戸時代から伝わる日本文化を格調高い技術で支えて来たのではないかと思います。
身近な物では千社札、提灯などの文字でその雰囲気が味わえます。
文字の上に描かれる纏など、江戸の香りを放つ色合いも見応えがありました。
「花」の文字もそれぞれの描き方で花の趣が違って見えるかと思います。
上・左は寄席文字(橘流)で演芸場で見掛ける看板に書かれ、演者の名前が分からなくてはなりませんから、きっちりと書かれいます。
その隣の花は…勘亭流・歌舞伎文字です。
これも大看板で揚げられますが、ちょっと崩した筆の曲線が美しい文字ではないでしょうか。
その下の力強い花は…相撲文字・根岸流の筆です。
最後は神社仏閣で貼っちゃダメだと禁止されているのにも係わらず、山門などにベタベタと貼られている千社札の文字となります。
この江戸文字を習うことができる教室があるそうで、よみうりカルチャーセンター・町屋校で人気のプログラムとなっているそうです。
「私も習いに行きたいなぁ。こんな字が書けたら知性的に見られて花?鼻が高いじゃん」
「江戸文字で発揮できる知性がきみにあるのかね?しかしね、字ってのは読みやすいのがいち番だよ!何が書いてあるか読めない字なんて文化も屁ったくれもないからね。きみはせっかちだからね、ゆっくり丁寧に書きなさいよ」
読みやすい文字が一番で…で思い出しました!
讀賣の新聞記者であった家人の手元には、多くの作家さんの生原稿が残っています。
亡くなってしまった作家さんの中で、私が時折り出して読むと言うより触れる原稿があります。
寺山修司氏の「朝日のようにさわやかに」と言う原稿用紙二枚半ほどの短い随筆なんですが、ここはぜひとも讀賣のようにと書いて欲しかったです!
えんぴつ書きの文字は大きく堂々としていて枡一杯に伸びやかに書かれています。
原稿用紙の欄外に『寺山修司』と印刷された特注品であります。
この原稿を開き、寺山修司と言う署名を眺めているだけで、自分にも静かな力が湧いて来る…そんな目に見えぬものを授けてもらえる気がしてなりません。
「石原慎太郎の字はサ、編集部の誰も読めないんだよ。石原担当がいてね、そいつに任せるわけだけど、赤ペンで直しが入るわけよ。暗号みたいな字だろ?解読しろって言ったぐらいなんだから。署名もまったく読めないしサ、ホント編集者泣かせの字だね。だけど、あいつ…なんで石原慎太郎の字が読めたんだろ」
世の中には、いろいろな特技・才能を隠し持ったお人がいるようです!
立松和平氏は、まん丸くチョコンとした字です。
有吉佐和子氏は直しが入らぬほど、几帳面な字であります。
生島治郎氏はごくごく普通ではありますが、門構えの字の角張りが特徴的かと思われます。
田中小実昌氏…ベレー帽のような可愛くて丸い文字はカナが多く見られます。
水野晴郎氏は映画「E・T」の評論が書いてあり「まあ面白い事、面白い事」と結ばれています。
三浦朱門氏は、パリで起きた人肉事件を「親の責任か日本の恥か」と言うタイトルでなかなか厳しいことを書いておられます…サラサラと実に読みやすい大人の字ではないでしょうか。
遅筆で有名な井上ひさし氏…なるほど筆が遅いと言われる典型的な字でありましょう。丁寧をはるかに超えた漢字テストを見ているような気になる字でございまして、思わず花まるマークを差し上げたくなります
川上宗薫氏の原稿は読まずとも、エロチックな文字が浮かび上がっているかのようです。
淫らな字とでも言うのでしょうか?身を乗り出して読み入ってしまう自分が怖い…などなど、まだたくさんの作家さんの原稿がそのままに閉じられています。
「暮らしに困ったらこれを売って、少しでも生活の足しにしなさい」
家人はそう言ってくれてますが…「じゃぁサ、今売ろうよ!」
どの原稿も万年筆か芯の太い鉛筆で書かれていまして、原稿用紙に向かってひと文字ひと文字に苦悶している様子が見られます。
寺山修司氏が書き残している詩があります。
憲法記念日に相応しい一文ではないでしょうか?
『政治は血を流さない戦争であり戦争は血を流す政治である』
(せいじはちをながさないせんそうでありせんそうはちをながすせいじである)