今夜は月の見えぬ「中秋の名月・十五夜」となってしまいましたくもり

二十四節気の暦も十五番目「白露」を迎え、いよいよ秋へと一歩二歩と歩みを進めたようであります。

初候は「草露白(くさのつゆしろし)」…草に降りる露が月に照らされ白く光っているよう…何んとも儚げな風情の候が巡って参りました。

まだ少し先…あれは10月の半ばごろでしたでしょうか?

鎌倉に住んでいたころ、庭には数え切れぬほどカマキリの卵が孵って、それはそれはカマキリ屋敷のよう…屋敷と言うと、鎌倉の友だちから「うっそぉ~ビックリマーク」のブーイングが来そうなので、ここは小屋と謙虚に言い直しておきましょう。

その小屋の庭には、オオカマキリからハラビロカマキリ、コカマキリにヒメカマキリ、チョウセンカマキリなどなど、共食いを始めるぐらいワンサカと棲んでおりました。

わたくし永年生きては来ましたけれど、カマキリがこんなにも水を飲む昆虫だとは知りませんでした。

朝露、雨粒…そして白露と、その一滴をゴクリと喉を動かして飲んでいる姿は、うっとりと恍惚とした面持ちでありました。

カマキリが何やら呟いていると耳を澄ませましたら…

「甘露、甘露」

天地陰陽の気が調和を得る…まっ、天下泰平であると言うことですかね、それを天が喜び甘い露を降らせるとの言い伝えがあるとか…

その甘い露は「霊液」であって、不死を約束されるとまで言われたそうです汗

せめて…せめて一滴、家人に飲ませてやりとうございます。

さて…昨日、北海道に隠居した「我が情けないお兄ちゃん」から届いたジャガイモ、玉ねぎ、カボチャや枝豆が、私たち・東京に住む長谷川家一族に巻き起こした騒動の結末をお話致しましょう!

我が兄が、如何に情けないかはブログを続けて読んで下すっている方は、イヤと言うほど分かって頂けているかと思います。

枝豆が包まれていた北海道新聞です…南は沖縄・九州までと言いますが、本格的な寒さを迎える前にと企画されたのでしょう「九州全周総めぐり」の旅行案内が載っていました。

この旅行に友ちゃんとふたり参加して、九州の名物・マンゴウや黒豚、チャンポンを送ってくれたなら、こんな騒動は起こらなかったと思います。

「トウモロコシの横にサ、枝豆の苗を植えたんだけどね、太陽の位置を忘れちゃって植えたもんだからサ、トウモロコシの陰になったわけだよ枝豆が…だけども!この枝豆のエライことっ!トウモロコシの葉陰から漏れる陽の光を全身に余すことなく受けてサ、花を咲かせ実を結んだんだよね。俺はその健気さに心を打たれたね!何んと!枝豆の品種『味勝・あじかつ』ってのよ、泣かされるだろ?おみえちゃん」

「うんうん、涙なしでは聞けぬ話だねぇ」おとめ座

「真面目に聞いてんのか?でね、ジャガイモは男爵!俺が作ったジャガイモは、やっぱ素人だなぁ~って思わせる初々しさがあるだろ?」

「うんうん、あるある」おとめ座

「おみえちゃんね、真面目に聞いてんのか?玉ねぎは隣のじぃさんが作ったんだけどぉ、これが凄いんだよね。全部同じ大きさで土から出てくんの。おみえちゃん、玉ねぎが土の中で生るって知ってたか?知ってた?そうか…来年はね、じぃさんにおせぇってもらって(おしえてもらって)挑戦するからサ、待ってろ!」

「えっ!無理しなくていいからね」おとめ座

「うん、無理はしない。人間、出来ることと出来ないことってのがあるからなぁ~」

「撤退が早いんだね」おとめ座

「うん。それでサ、そのお礼ってのをおみえちゃん、いろいろ考えていると思うんだよね?でね、おみえちゃんにはミルキークィーン・新米10キロと大和芋を振り分けたからサ、よろしく頼むね」

「何、それ?米だぁ?それも新米10キロぉ?大和芋なんてそっちでも売ってんでしょうがっ!お好み焼きに入れると美味しい?ジャガイモこのまま送り返したるわビックリマークおとめ座

兄との電話を打ち切った私のもとへ、まず電話を寄こしたのは娘からでした電話

「お母さん!おじちゃんから凄い量のジャガイモが届いたよぉあせる食べ切れないよぉ~カボチャなんて4つもどうすんのぉ?それでサ、手紙が入っててね、真空パックになってる美味しい食パンを送れって書いてあるんだけど、北海道にパンって売ってないの!」

「もしもし?おみえちゃん?さっきね、あきちゃんからジャガイモやら玉ねぎやら届いたんだけどもサ、なんなの?この量!うちはね八百屋じゃないんだからサ、どうすんだいはてなマークそれとね大層な手紙が一緒に入っててね、読むから聞いておくれな『叔母さん、ご無沙汰してます。お詫びに北海道特産・ジャガイモを送ります。枝豆とヒネたジャガイモは俺が作りました。新ジャガなのでホクホクと言うわけにはいきませんが、土の香りがすると思います。佃・丸久の昆布といかあられの佃煮の味が懐かしいです』だってサ!佃煮が欲しいならサ、こんな回りくどいやり方じゃなくて、佃煮が欲しいって言やぁいいんだよ、まったく!何んとか言っておくれな。あの子はね、ずぅっと無沙汰でいいんだよ」

「おみえか?今、明から宅配が届いてサ、またコロッケ送って来たのかと思ってサ、俺ビビっちゃったんだよ!そしたら今度はジャガイモだのカボチャだろ?あいつ、どうしちゃったの?それで手紙が入っててサ、聞いて呆れちゃうよ!関東はそろそろ梨が美味しい季節ですね、だってよっ!枝豆なんか植えないで梨の木植えろって、そう言ってやってくれいビックリマーク

「あっ!おみえ?」

「浩ちゃん!分かってる!北海道からジャガイモが大量に送られて来たんでしょ?浩ちゃんには何が欲しいって言ってた?」おとめ座

「煎餅!それも銀座・松崎のせんべいだってよ!こっちは夏に送って来たトウモロコシがまだ冷凍庫で唸ってるってのにサ、煎餅だってよぉ~!」

みなさん、口でこうは言いましても、ちゃんと兄のもとへそれぞれ送ってはくれているようであります。

何んとも有り難いことなんですが、電話の最後にはいつもこの言葉で締め括られます。

「梅ちゃんが甘やかしたから、あんなんになっちまったんだよ!まぁ、憎めない子だけどもね」

母が大事に育てた兄ではありますが「あんなん」と言われ、さて…あの世の母はどんな思いで聞いているのでしょうか。

「なに神妙な顔して、ジャガイモと玉ねぎ積んでんの?」

「今夜はお月見だけどもサ、こんなんじゃぁ月も見られないでしょ?ジャガイモと玉ねぎでお団子の代わりにしようと思って…五穀豊穣の感謝を込めて、芋だけどね」おとめ座

「お団子作んないの?」

「枝豆を擂って、仙台名物・豆ん打餅(ずんだもち)にしてあげるからね。すゑさん(姑)の好物だったし…」おとめ座

お昼にマッシュポテトとバターソテーしたジャガイモを頂きました。

「美味しいジャガイモだなぁ。これならサ、きっとみんなも納得してくれるよ」

う~ん、しょうがないなぁ…新米と大和芋、送ってあげるとするか!着払いでにひひ

ところで、北海道では長芋はあるんだそうですが、大和芋となると売ってないんだそうです。

芋は芋でも、いろいろな事情を抱えているんですなぁ~汗

そろっと雲が切れましたでしょうか?

試しにベランダに出てみましたら…月見は叶いませんでしたが、コオロギが盛んに鳴いております。

コオロギは果たして、水を好んで飲むのでしょうか?