『活きた目をつつきに来るか蝉の声』

(いきためをつつきにくるかせみのこえ)

 

正岡子規が病床で詠んだ1句であります。

ここ数日、涼しい秋風が吹く日々を過ごしたせいか、今日の暑さは身に堪えました。

蝉はと言いますと、見事!復活!

ベランダで洗濯物干していましたら、声どころか…アブラゼミが体ごとこちらにぶつかって来まして、あちらもこちらも・お互い慌てて「キャァ~」アブラゼミおとめ座

アブラゼミは、私の美貌に目が眩んでしまったのでしょうか?

蝉はいったん、私の腕に当たってから、足元に転げ落ち、翅をバタバタさせますもんですから、踏み潰してしまうところでした汗

もう…力尽きてきたのでしょう。

グィッと翅を風に乗せ…ゴーヤを吊るしてあるネットにしがみ付いた様子です。

「ジィージィ~ジジジジイィ~ジィーッ」アブラゼミ

「俺のこと、呼んだ?」おじさん

ジィさんを呼んでるんじゃありません!

ここが、蝉が蝉である所以でありましょう。

最後まで鳴かねばならぬアブラゼミ…まぁ~これだけの近さで鳴かれますと、5000Hzはあると言われている蝉の周波数です、半端じゃありません耳

耳を押さえようとして、両手を上げた途端!

蝉は緩くカーブを作りながら下降し、ケヤキの枝へと姿を消して行きました。

耳を澄ましても…蝉の声はもう聞こえませんでした。

「今年の夏も、ようやく終わったのかな」おじさん

それでも…御茶ノ水あたりは、まだミンミンゼミが細くではありますが鳴いておりました。

右わき腹から尿管確保のためのステント手術を受けた家人でありますが、その後の経過は発熱も痛みもなく、針穴の小さな傷口もすっかり塞がっているようで、主治医のひとりである「たどころ先生」からもオーケー・サインが出ましたOK

「まだ少しの間、尿に血が混じってくるかも知れませんが、尿も充分な量が出てますし、腎臓は安定した働きをしてますね。よく頑張りましたね!水分だけはしっかり摂って下さい」先生

「先生…ウンなことより、先生のお名前、ホント!いいお名前ですねぇ~」おとめ座

「…?私の名前がですか?」先生

「そうです!先生のた・ど・ころって苗字。これは奇跡に近いことだと思います」おとめ座

「奇跡ぃ?そんなにいいんですか?下の名前と合わせての画数ですか?」おとめ座

「画数?そんなもん親が調べりゃいいんです。いやぁ羨ましいなぁ、この田所って苗字…」おとめ座

「産まれて初めて褒められましたよ…田所」先生

「何を仰っておられるんですか!みなさん、そう思っても口には出さないんですよ!ねっ、あーた?」おとめ座

「…あーたって、俺?口に出すも出さないもサ、今の今まで田所がどうのって、俺知らんかったわ!それより、先生。もしもの時の痛み止めの薬、お願いします」おじさん

「ハイッ!痛み止めですね。それはそれで置いといて。その田所なんですが…」先生

はいはい!日本人なら、誰でも知ってると思ったんだけどなぁ~?男はつらいよの寅さんを演じてた渥美清さん。その渥美清さんの本名が『田所』さんてんです!フルネームですと『田所康雄・たどころやすお』さん。車寅次郎のイメージとは違い、雑学の知識と言ったらそれはそれは素晴らしいものがあったと聞きます。キラッと輝く感性で詠む俳句…勉強家だったんですけど、それをひけ散らかさない!真の教養をお持ちだったとか。ねっ!凄いでしょ?」おとめ座

「くだらん!実にくだらん!きみはね俺を助けてくれた命の恩人である田所先生に対してだな、あのフウテンの寅を当てはめるのか!」おじさん

「いやいや…光栄ですよ!そうなんですか。田所って渥美清さんの本名なんですか?それは知りませんでした」先生

「車寅次郎を演じていたのが渥美清と言う俳優で、その俳優の本名が田所さん…その田所さん、お隣の順天堂…この間に入る名前がえらく長いので端折ります…医院で亡くなられたんです…肺がんで。それも68歳の若さで」おとめ座

「先生!いちいち頷かなくていいんですよ!そんな詰まんない話にっ」おじさん

ハッと我に返った先生・田所医師は、国立大学を目指し奮闘努力の甲斐が実り、東京医科歯科大病院の泌尿器科医になられたのでありましょう。

お若いながらも、家人を支え、励まして下さいます。

『医は仁術なり』…江戸時代の儒学者・貝原益軒(かいばらえきけん)が「養生訓」で認めております。

「仁術」…平成の世にもきちんと受け継がれておるようであります。

また、この先も絶えることなく続きますようにと、願うばかりですブーケ1