地味な蝶ではありますが、花を見る目があるのでしょう。
風情が売り物の花菖蒲…その透けそうな花びらにチョコンと止まり、水無月を満喫しているのはチャバネセセリです。
花の蜜も吸いますが、熟れて落ちた果物も好物と見え、梅や無花果、柿などに群れて口吻を差し込んで、名前のごとくせせっております
幼虫は稲が大好物!
農家にとっては害虫も害虫
葉をくるりと巻いて隠れてしまい、蛹になってしまうので「葉捲虫(はめくりむし)」の幼名を持つセセリであります。
羽音を立てて飛びますし、暖かなところではよく目に付く、大昔からどこにでもいるチョウであります
「どこにでも…だって!こっちから見たら、人間の方がウジャウジャいるじゃんか」
う~ん…そう言われると、返す言葉もありません。
これから旬を迎え、そろそろ八百屋さんの店先にも出回るかと思います、山椒の実・青山椒です。
この山椒…アゲハチョウの幼虫が好んで食む葉でありまして、小さな木ですと1匹アゲハの幼虫がおりますと丸裸にされてしまうと言われています。
アゲハチョウも見たいし、山椒の実も穫りたい…となりますと、幼虫を摘まんで柑橘類の葉っぱに移させねばなりません。
鎌倉に住んでいたころ…庭にあった柚子の葉っぱに産卵しに来るクロアゲハを見付けると、坂の下にある大きなお屋敷にある柚子の木に行くように説得したものですが、誰もいなくなった庭では好き放題に卵を産み付けているかと思います。
柚子の木に近づきますと「サクサク」と幼虫が葉っぱを食む音が聞こえたものです。
日に日に葉っぱが少なくなって、その度に疑似している幼虫を見付け出すと、脱皮を繰り返し、大きくなっている姿を見ることが出来ました。
今でも…鮮やかに鎌倉の里山を思い出します。
山頭火も、きっと同じ思いであったろうと偲ばれます。
「ふっとふるさとのことが山椒の芽」
さて、我が家ではこの青山椒の実を糠味噌に入れ、風味付けとともにニオイを押さえる役目をさせています。
ブチブチと包丁の背で軽く潰して入れるんですが、この潰した山椒の汁…滴るほどは出ませんが、ちょっとでも口にしますと、それはもう大変な事になってしまいます!
痺れるどころの騒ぎではありませんで、舌に氷を乗せてしばらくはじっとしていなければなりません。
「こりゃぁ、静かでいいなぁ~。さすが!山椒は小粒でピリリと辛い!有り難い有り難い」
「今に見ておれっ!」
声にならぬ叫びを家人に向かって挙げたものです!
追って露地ものの夏野菜が出回って来ます。
糠床に手を入れてかき回しておりますと、知らず知らずに手がすべすべになっております。
顔にも塗りたいほどですが、塩気と山椒の灰汁で腫れあがってしまうと思われます。
もう少し…面の皮が厚いと良かったのですが…