23日、天皇陛下が80歳・傘寿を迎えられました
で・東京23区を走る都バス・一台も漏らさずお祝いの日の丸が掲げられ、始発から安全運転を行っていました
天皇陛下が眺められる八十路(やそじ)とは、チィとばかり高さが違うかも知れませんが、もうすぐ八十路を迎える家人にこの1冊を送ることに致しました
マルコム・カウリー・著「八十路から眺めれば・
The view from 80」
まさに!書かれたカウリー自身が80歳の時に出版されたエッセイであります(小笠原豊樹・訳)草思社
私が若い時、この本を手にしたわけは本の内容よりもマルコム・カウリーの名前でした
ヘミングウェイやフォークナーなど「失われた世代」と呼ばれる文学者たちの良き理解者でもあったし、その文芸評に確かな目を持っていると感じたからです
ところが…どんなに読み進んでも、ピンとこないどころか、首を捻るばかりでした
それもそのはずでして
カウリーからすれば、50代60代は「少年少女」だそうで、文学には多少詳しいかも知れないが、人生には必ずしも詳しくはない…と断言しております
あーた、この1冊を読み砕いて素晴らしい八十路を切り開いて下さい」
「この歳になって、何を切り開くんだよっ俺はね、今年お腹を切り開くので精一杯だったんだっ
あちらの方が兄さんになるんだから、天皇陛下に贈って差し上げなさいよ」
この本は「その歳にならないと分からない」年齢限定本かと思います
本日が千秋楽の舞台「三婆」を観て参りました
新派を立ち上げてから、今年の12月で125周年になるんだそうです
その記念公演に選ばれたのが、有吉佐和子・原作の「三婆」で、果たして相応しいのか、そうでないのかよく分かりません
何しろ…本妻・お妾・小姑の女3人のバトルが繰り広げられるのですから、演じ手がスコーンと抜けた演技をしませんことには、収拾がつきかねません
昔から杉村春子や池内淳子、かしまし娘などがテレビや舞台で演じてきたようですが、私は映画「三婆」の三益愛子、田中絹代、小暮実千代の3人が演じた作品が1番印象に残っています
今回は新派ですので、看板役者の2代目・水谷八重子演じるお妾に、こちらも新派になくてはならぬ役者・波乃久里子が演じるは本妻の役…小姑には新派常連の女優・沢田雅美が小姑を演じていました
新派の舞台では、本妻役とお妾役が入れ替わることもあります
前半はちょっともたついた感がしますが、後半も押し詰まって来ますと、番頭役の笹野高史の演技がピカッと光り、明らかに他の役者を引っ張っていくのが手に取るように見えました
「上手いねぇ」と思わず拍手
今回の席は花道がよく見えます1階席でして、花道の揚幕がシャッと上がると白粉の芳しい匂いが漂ってくるほどの色香を放つ水谷八重子がシャナリシャナリと出て参ります
揚幕に染め抜かれておりますは「雪月花」…
新橋演舞場定紋でございます
上部に雪の輪が、その下には黒い月が、またその下に山桜をあしらってあるとか…
私などは首を360度回して眺めましても、どうも分りかねますところがあります
桜だけは…納得の定紋でした
こちらの「三婆」は有吉佐和子氏・30歳の作品とのことですが、老いの境地を喜劇に仕立て上げております
こんな婆さんになるのなら老いも楽しかな…とは思いますが、そう遠くない現実が迫って来ている年齢なものですから、どうせなら「四婆」のお仲間入りをさせて頂こうとちゃっかり思ってしまった、年の瀬の芝居見物でありました
『老人を一掃すべく寒の来し』
(ろうじんをいっそうすべくかんのきし)
相生垣瓜人(あいおいがきかじん)