二十四節気も大詰め「大雪」を迎え、八百屋の店頭に柚子が並び始めたようです
その末席に、両の手に乗らぬほどの大きな「獅子柚子」も鎮座しておりました
獅子の名に恥じぬしかめっ面と思いきや、柚子に限ってシワが多いほど縁起が良いのだとか
私も縁起を目指して行こう
柚子を目標に、シワを怖れることなく生きていこう
しっかし…目を凝らして見てみれば、ケーシー高峰も真っ蒼の毛穴だらけであります
12月に入り、何かと気忙しく日を送っていましたら、ハラビロカマキリのゼリーはお気に入りの帽子の上でジッと物思いに耽っていることが多くなっていました
体の力が少しづつ抜けていくような、そんな心細さを感じているかのようです
「ゼリー、どうした」
「はぁん」
気だるそうに向ける顔には、そろそろ来るべき寿命を悟っているような気も致します…
そこには戸惑いながらも、どこか清々しさも漂わせ、冬まで生きた長寿を祝ってやりたいと思うほどです
きれいな三日月が、黒々とした夜空にポツンとありました
小さな命…今夜がヤマかも知れません
ゼリーの様子が気になります深夜の読書とシャレましょう
吉川英治・著「かんかん虫は唄う」を本棚から引いて来ました
虫に誘われて手に取りましたが、昆虫の物語ではありません
ドッグ入りした船の錆をかんかんとトンカチで落とす音を表しています
港で働く労働者をかんかん虫と呼んだそうです
14歳にしていっぱしの不良少年・寅彦は、トムの愛称で横浜港の人気者…曲がったことは大嫌いとは言いましても、不良少年が言っても何んの説得力を持ちませんが
とにかく、真っ当な不良少年が友だちの恩師に掛けられた無実の罪を晴らすべく奔走する物語です
私が産まれた1955年に勝新太郎が初めて主演を掴み、後の奥方となった中村玉緒と初共演した、記念すべき映画にもなりました
血気盛んな勝新太郎が地のままに不良少年を演じるんですから、こんなはまり役はないかと思います
ほっそりとした勝や、大人し気な玉緒さんの初々しい姿を観ることが出来る映画です
何十年ぶりかの再読ですが、時代小説・歴史小説が多い吉川氏にしては大変珍しい短編でありまして、起承転結がはっきりとして、読後も気持ちの良い1冊ではないかと思います
さて…息をしているかと、ゼリーの背中で耳を澄ませましたが、虫の息…
鎌の脈をとりたいのですが、看護師の資格が必要なほど難しそう…
「そんなに急かさないでくださいよぉ」と言わんばかり…ゆっくりと後ろ脚を伸ばし、背伸びをしておりました
それでも、別れの時がそろりと小さな音を立てながら摺り寄って来たようです