今年は早いのか…遅いのか…よく分かりませんが、桜の葉っぱが枯れ葉となって落ち始めました
春満開の桜を眺めたのは、家人が最初に入院していた病院の窓からでした
あれから、もう半年の月日が過ぎようとしています
これも短かったような…長かったような…家人は、まだ季節のない病室で過ごしております
カサカサと香ばしい音を立てる枯れ葉を掃いてましたら、宅配のお兄さんが新潟からの小包みを届けてくれました
竹ぼうきなんぞは放り投げ、有り難く受け取りました
「あのぉ…ハンコかサインお願いします」
「そんなの、いいです」
「いやいいですって
ここにお願いしますよ」
「そうぉじゃ、サインで
」
「フルネームでお願いしていいですか?」
「いいですよぉ藤・原・紀香っと
ハイッ」
宅配のお兄さん、なぜか見てはいけないものを見たような…目が宙にさ迷ったまま、去って行きました
「運転、気を付けて下さいねぇ」
さて…箱を開けてみれば、そこには津南町の秋が詰まっていました
漢方にも使われいるという栃の実です
もちろん、粉にして作った栃餅もせんべいも美味しい木の実であります
「これはサ、見て楽しんでもらおうと思ってサ粉にしたのはまた送るから
」
家人の渓流釣りの仲間である「どうも・どもトミさん」からの贈り物です
「よかったぁ~」
栃の実は、山から採って来てからが大変な木の実でして、その灰汁抜きと言ったら半端なもんじゃありません
クマもイノシシも、サルも食べない…と言われているくらい渋いんだそうです
ひたすら根気との闘いとなります
雪深い国に住む人たちだからこそできる仕事だと、私などは感心するばかりであります
こちらは「津南町の婦人会」が工夫を重ねた「漬床・二五八」です
福島や岩手、山形など東北に昔からある「三五八」を手本に、塩を加減して作ったのがこの「ニ五八漬け」だそうです
塩が二、麹が五、蒸したもち米が八の割合で混ぜ込み、発酵させたものが二五八漬けの素になるとのこと…
「おっかさんや嫁さんが作るとサ、その家の味になるんだわ糠みそみたいなもんだな」
トミさんとこの畑で穫れたものでしょう…小茄子と胡瓜が一緒に入っていました
「秋茄子は嫁に喰わすな」と言いますが、肝心の嫁はおらんし、自分はとうに嫁と言うには歳を喰い過ぎておりますし、遠慮なく頂けます
茄子はともかく、胡瓜は早く食べたいので切って漬けておきことにしました
思いも掛けぬ秋をありがとうございました
久しぶりに持った竹ぼうきの重さが肩や腕にきまして、枯れ葉の掃除は風に任せることにして、午後からは読書タイム…
涼しくなって参りますし、秋の夜長でもありますから、これからは集中力が増してきて読書には最適な季節かと思います
さだまさし・著『かすてぃら』
自伝的実名小説となっています。
佐田家の家長・父親との別れを描いた物語…エッセイのようでもありますが、とても読みやすく感じたのは、やはり集中力のおかげでしょうか
さだまさしさんが公演先で父親が危篤との知らせを聞き、子どものころの父親を偲ぶところから物語は始まります
ヤクザや悪徳不動産屋を懲らしめたり、実に面白味のあるお父さんで、このお父さんの好物がタイトルの「かすてぃら」だったそうです
長崎・福砂屋の4斤のかすてぃらが、昭和30年、40年にあったとか…これを手でちぎって食べると、それはそれは美味しいのだそうです
昨今では、ご親切に何んでも切って売っておりますから、千切って食べるのってのは贅沢なことだと思いました
しかしながら、この本を読みまして、親とは父親にしましても、母親にしましても、亡くなってから想いだすのが良いようです
いいところも、悪いところも「それがあなたの人柄でした」と、さだまさしさんの言う通りであります
読んだあとは、ちょぴりホンワカ
栃餅で一服とはなりませんが、熱いお茶を淹れて頂き物の「ちもと・八雲もち」でひと息吐くことに致しましょう
こちらのお餅には、カシューナッツが練り込まれておりまして、ふわふわとカリカリが相まって、木の実を活かしたお茶請けとなっています
食べ終えてしまってから「お仏壇にお供えを忘れてしもうた・下総中山
」
遅かりし由良之助であります
残った八雲もちを、姑・すゑさんのお位牌の前に供え…チーン
「どうぞ、遠慮なく召し上がってください」
嫁ってのは、幾つになっても、心休まるときがございません
位牌がグラッとコケたような…きっと、気のせいでしょうね