「ランタナの花が咲いた」と喜んでいたら、どこかで見ていたのでしょう
アオスジアゲハがさっと飛んで来て、さっそく花の蜜を吸い始めました
1本の茎から咲く花は、黄色から橙へ、そして赤く微妙に色を滲ませながら色を変えていきます
紫陽花のような移り気な花でありまして、ちょっと数は足りませんが「七変化」の和名も持っています
「噛みたくったって、歯がないもんね」
蝶が新たな情報を持って飛び立って行きました
「ははぁ~」
これが、ホントの蝶(諜)報部員…なんちゃって
花言葉は「合意・協力」…出来る事ならば、麻酔・手術の合意書に署名、捺印を押すまでに、早くならないかと願っています
朝からダジャレを言っている場合ではありませんでした
本日は検査結果がどう出るか
丁半の決着が付く日であります
東京メトロ・丸ノ内線の御茶ノ水駅は、緑に包まれていました
さぁ~て東京医科歯科大病院・泌尿器科へ
「そんな大きな声で言うなって」
その前に幾つかの検査を済ませておかねばなりません
「何から片づけていきましょうかね」
「漏れそうだから、まず採尿採血心電図最後にレントゲンといこう」
この検査部では、心電図の他に肺活量を調べる機械も備えられています
家人を心電図の部屋へと送り出し、持ってきた本を読んでいますと
カーテンで仕切られている部屋の向こうから、奇妙な掛け声が聞こえてきます
「最初は軽く、吸ったり吐いたりを繰り返してみて下さいそうですそうですでは量りに入りますよハイッ、吸って吸って、もっと吸ってぇまだまだいける、吸ってぇ~ハイッ今度は、吐いて吐いて吐いて吐いてぇ~ふぅ~っ」
ここ・待合室からは、だれが誰を叱咤激励している声か分りません
が・家人が先月朝一番でやらされたと言っておりました、ウワサの肺活量の検査ではないでしょうか
そうしますと…何かの手術を控えた患者さんと技師さんの関係?かも知れません
おや?また、始まったようです
「ちょっと上手く量れませんでしたので、2回目いきます舌を器具の下に置いた方が思い切って息を吸えますから、頑張って吸って下さいハイッ吸って吸ってもっとぉ~吸ってぇ、まだ吸えるぅ~まだまだ、そのままそのままハイッ吐いて吐いて吐いてぇ~止めないでぇ…まだ肺に残ってますよぉ、ふぅぅっよく出来ましたパチパチパチ」
拍手も聞こえて来まして、私も息苦しい中、思わず拍手をしてしまいそうでした
患者さんの方は、返事をする余裕もないのでしょう
一貫して無口でした
息も絶え絶えの患者さんが受ける検査って、本当は体に悪いんじゃないのかなぁ
パタリとドアが閉まったままの心電図室…家人が心配になって来ました
心配(肺)停止になっちゃぁ、いないでしょうね
やっとこさ検査を終えて出てきた家人人の心配をよそに片手を上げ「よっ何んだよ?幽霊見るみたいな目をしないでくれよ」呑気なことを言っております
ようやくすべての検査を済ませ、辿り着いた泌尿器科のがん先端治療センターです
いつもの担当の先生は4番診察室と、ちょっと日本では珍しい4の数字を使った診察室なんですが、MRIやCTスキャンの結果と言うことで、本日はナンバー1と、大変縁起の良い数字の診察室から呼ばれました
なんか…ふたりとも神妙な心持ちで顔を見合わせ、ドアをノックしました
「こんにちわ検査、お疲れさまでしたどうぞ、お座りくださいえーとですね」
『えーとは、いらん丁か半か早く言わんかい!』
たぶん家人も私と同じことを、胸の中で呟いていたことと思います
しかしながら、博打で賭けをしているわけではありませんが、丁の出目がお目出度いのか?半と出たら、凶なのか…皆目わかりません
「MRIとCTの検査では、腹水も溜まってませんし、リンパも正常値が出ています。骨への転移等もありませんし、肺活量もいい数字が出てますので、手術が可能かと思いますさらに詳しいカテーテル検査や、膀胱内視鏡手術をしまして、開腹手術の方法と時期を決めましょう」
ふぅ~はぁ~やっとここまで漕ぎ着けました
ふたりして深々と頭を下げて、診察室を後にしました
少々の祝酒なら構わないでしょう
米・水・人、そして佐渡の風土のよっつの和をもって作られた、その名も「四宝和醸・真野鶴」を小さなグラスで乾杯
歯ごたえが素晴らしい関あじを奮発しました
「うん、美味いねぇ久しぶりに、心が晴れ晴れとした気分だなぁ酒が甘く感じるよ」
心配して下すったみなさま…暖かいお言葉の数々、胸にジンと沁みまして、それを支えにしてここまで来ることができました
感謝の気持ちでいっぱいです
ありがとうございました
30日から、1週間ほどの検査入院が控えております
半年ぶりに飲む日本酒に、家人はすっかり酔ってしまい、ポッ頬をほんのり桃色に染めております
盃を干したなら…佐渡の空を悠々と渡って行く、朱鷺の姿がまぶたに滲んで見えるようでした