19日・日曜日…娘夫婦が犬2匹を引き連れて、東京からやって来ました
車から飛び出し、石段を駆け上がって来たトイプーのハロです
ばばぁ~あっ違った…ばぁばぁ~」
そうですよぉ
『あ』の入る位置で、こんなにも感じが違うでしょっ
今日、スポーツクラブの友だちに、お孫さんに自分のことを「あーちゃん」と呼ばせているという話を聞きました
お孫さんが通う、スイミング教室の送り迎えをしている友だちなんですが、鎌倉中に響き渡るような声で「おばぁちゃんおばぁちゃん」と連呼され、これはいかんと思ったそうで、おばぁちゃんから「おば」を取っ払い、「あーちゃん」としたそうです
「なるほど」
私もこれからは例え犬であっても、親しき仲にも礼儀あり「あーちゃん」と呼ばせようかと思っています
胸に飛び込んで来たハロはピョンピョンと、小さな体いっぱいに喜びを表してくれ…「ばぁちゃん」
まっいいか
娘婿が、放射線・抗がん剤治療に向けて「壮行会」の席を設けてくれました
由比ヶ浜にある「蕎麦・酒 まつばら庵」を予約しておいてくれたそうで、有り難いことであります
ビールが大好きなムコ殿は、車の運転もありますが、家人に合わせノンアルコール…
みんなでグラスをゴチン…「カンパ~イ副作用に打ち勝てっ」
私だけ生ビールをグビグビ
「やっぱサ、泡が違うよ泡がぁ~」
「きみは、カニかっ」
このお皿は特別注文のひと皿だそうで、何んでも食べ過ぎてしまう家人を心配して、ひと口づつを数多く盛って欲しいと娘が頼んでくれたものです
鰊の甘露煮、鴨の照り焼き、掬い豆腐…そして刺身と、これならしばらくは大人しくしているだろうと思っていたのですが、こちらが頼んだ料理をいつの間にか口に運んでいるんですから、敵もさる者引っ掻くもの…でして、なかなか油断のならない宴席となりました
「俺の友だちでサ、胃がん、食道がんやって、やっぱり抗がん剤打ったらしいんだよその副作用でもって、パタッと食欲が止まって何んにも口に入らないんだってまずね、匂いを受付けなくなるらしいんだよ…病院ってのは、実にいろんな匂いが混ざってるところだって、びっくりしてたなムァ~ッと鼻に来るんだってよもうね、食欲なんてものをね忘れちゃうってサだからね、今のうちに美味しいもんを腹いっぱい食べて、何が悪いんだっ」
ぶっち切れてしまいましたよぉ
「これは何のパレード別に悪かないけどねぇ」
「あっそれじゃサ、ステーキとかお寿司とか…天ぷらとか、毎日写メで送ってあげるよ」
「それ、見てどうすんだよ…出前を注文するんじゃないんだからなっ」
「写メなら匂いがなくていいと思ったのっ」
先が思いやられる展開になってきました
「デザートは何にする」
娘がこんなやさしい声で聞いてくるなんて…明日は雨っていう予報は、きっと当たると思います(実際、雨でした)
家人の前に置かれたデザート・プレートです
そば粉ケーキにバニラアイスクリームが添えてあります
そして”きんちゃん ファイト”の文字
思いも掛けぬ、サプライズ
急に大人しくなった家人は…「きんちゃんはないだろぅ」と、ぼそっと呟いておりましたが、目にはうっすらと涙が
こんなじぃさまの涙でも、澄んできらっと光っておりました
家で留守番をさせられた柴犬うには、みんなが帰って来ても、この態度
ふて寝をしていた様子がありありと見えます
これでも、女盛りの24歳ってんですからねぇ
トイプーハロは嬉しくて、玄関先で跳びはねております
雨もようやく上がったようで…夜も大分更けて参りました
お風呂場の軒下で雨宿りをしていたのでしょう、ヤモリが1匹ガラスにへばり付いております
虫も鳥も卵から孵ったら、こうしてひとりで生きて行かねばなりません
見上げたヤモリは、然したる気負いもなく、淡々と生きているようであります
「大丈夫 死ぬまで生きる」の言葉をヤモリが言ってくれているようです
棋士・藤沢秀行氏の妻・藤沢モトさんが、アルコール、出奔、女性問題とその奔放な夫を支えたことを書いた著書の題名です
うちの家人は、それほどの奔放ではありませんでしたが、まずまずの合格点を差し上げましょう
「しっかり支えてやらにゃぁ、仕方あんめぇ」
そうヤモリに告げたら、くるっとシッポを巻いて暗闇に消えて行きました