平成19年から始まった「小町通り電線共同溝工事」が5年の工事期間を経て、この春ようやく終了しました
狭い小町通りに立っていた電信柱には、縄跳びに使うヒモのような電線が、まるで木に絡み付くかのように垂れていました
「これでは古都・鎌倉の景観に、相応しくないではないか」
「それより何より、鎌倉は観光地である」
「災害時の安全を第一に考えなければならぬ…」
いっそのこと、地下に埋めてしまおう
ってんで、予算獲得
人通りが途絶えた深夜に音を立て、ぐっすりと寝入っているあらゆるものを、特に人を起こしていかぬと、静かぁ~に工事が進められていました
余分な物が取り払われ、ご覧のとおり空はスッキリ広がっております
5年にも及んだ大変な工事お疲れさまでした
こんな日にピッタリなタイトルを持つ本が、これ
重松清・著「空より高く」…いつもの重松節と、ちょっと違った物語になっています
今は千葉県の知事として活躍…先日の選挙で再選を果たした森田健作・主演のテレビドラマを観ているようなそんな古くさく、懐かしい青春小説となっています
その割には、登場人物の名前が全部カタカナで書かれているので、その名前から浮かんでくる個性が最後まで掴めませんでした
若い人が何んの問題もなく読めるのならば、私の歳ではもうこのような物語は読みこなせなくなっているのかも知れません
重松さんの書く物語には、やはり開発されたばかりのニュータウンと中学生が出てこないとピンときませんで、それだけ重松ワールドにハマっていたということでしょう
それよりも、表紙の装幀に描かれている「ディアボロ・ジャグリング」…懐かしい感じがしました
大道芸では必ずといっていいほど見られる、空中で回転させるコマであります
はて物語のキーポイントになっているのか
なっていないような…
お手玉なら、まだまだ負けません
鎌倉駅東口に降り立ち、すぐ目に入ります赤い鳥居を潜りますと見えて来るのが、最初の十字路に架かっている「小町通り」のアーチです
正面に見えますこんもりとしたお山は、八幡さまの杜となっています
ここから見上げましても、小町の空には電線が見当たりません
電線が張り巡らされているときは、カラスやトンビが電線に止まり、クレープやソーセージ、稲荷ずしなどを頬張っている、観光客の手元を上からよく狙っていましたし、タイワンリスも電線から電線へとそれこそ綱渡りの人生を謳歌していたものです
消しゴムできれいに消したみたい
「ん・なわけないだろがっ俺っちが寝もせずに、穴を掘って工事をしたからだっ
」
電線がなくなったおかげで、カラスにトンビそしてリスが落とすフンに、もう悩まされることもなくなりました
景観をと言うならば、小町通りなどの看板設置にも『統一感を』との市民の声も上がっています
それでも1歩づつ、住みやすい街・鎌倉に近づいているのではないでしょうか
今日・16日は、日本で初の受賞となったノーベル文学賞を受賞した川端康成が亡くなった『康成忌』であります
72歳になってまで、なぜガス自殺をしなければならなかったのか…
世に生きて行くことは、複雑でとてもややこしいことではありますが、私などはただただ生きているだけで、人の心に巣食う黒光りする暗闇から、何かを引きずり出すような真似など到底でき得ぬことです
『いつも想ふ印象は眼よ康成忌』
(いつもおもういんしょうはめよやすなりき)
上村占魚(うえむらせんぎょ)