いつもでしたら庭の隅っこに咲く花や、道端に咲いている足元の草花に目が行くんですが、この春はバタバタと駆け足で過ぎ去ってしまいそうです
ふっと気が付けば、鎌倉の町は花で溢れていました
2013年3月23日今日は、娘の一生に一度しかない誕生日です
何もプレゼントはないけれど「おめでとう」の言葉と一緒に、白く可憐な雪柳をひと枝、贈ることにしましょう
去年の6月に胆のう全摘手術を受けた娘は、まだ全快とはいきませんが、徐々に体力を戻しつつあります
口だけは、誰に似たのか…こちらは全開
とにかく母は、2年続いての家族の手術に心が痛み、ついでに懐も淋しい思いをしているのだよ
昨日、お花見ができずにいる家人にと、お花見弁当をこさえて病院に持って行きましたら、大変喜びまして見事なまでに完食
夕方、帰ろうと洗濯物をまとめていると…ベッドに寝ている家人が、いやに真剣な目をして私を手招きします
何を勘違いしとるのかと、仁王立ちして訊ねました
「なぁ~に」
「あのサ、甘く煮たさつま芋か、カボチャが食べたい」
「さつま芋ぉほほぉ~芋ときたか
」
もう食欲しかないんですかね…この人には
病院の食事は、限りなく薄い味付けでして、下町の濃い味付けに慣れてしまった家人の舌には、物足りなく食べる気が起きないとか
仕方なく病院からの帰り道、さつま芋を買いまして、ひと晩…甘く煮含めて置きました
さて
さつま芋の黄金煮に合う弁当と言いますと、どうしても素朴で懐かしい弁当が思い浮かびます
写真の弁当箱は、私が子どものころに使っていた弁当箱です
幼稚園の娘にも持たせたものでした
娘は小さいころ、海苔がベチャッとしている「のり弁」が大の苦手
フタを開けたとたん、中・いち面が真っ黒だったことも、何が何んだか理解できないようでした
今日の家人のお弁当は「のり弁」にしましょう
おかずも昭和のにおいがプンプンするタラコに塩ジャケ、金時豆の煮豆にたくあんも添えました…どうだっ
鮭は、塩漬けなどに加工されますと、サケからその名をシャケと変えまして、まるで出世魚のようであります
鮭(さけ)とシャケの違いって何んだろうと、その昔…母親に聞いたことがありました
家では、誰もが「シャケ」と発音していました
魚へんが付く漢字の読み方テストのとき、「鮭」をシャケと書いて、○でもない、×でもない、三角をもらったことがあったんです
「違いって…あたしゃ、シャケって言ってんだろもういっぺん言ってみるから、よくお聞き…シャケ
今、シャケって言っただろ?お前も言ってごらんな」
「シャケ…」
「シャケじゃないよシャケだって言ってんだろ
」
どうも…下町で育った人間には「サケ」の発音が、舌がもつれて「シャケ」になってしまうようです
試しに、家人にも言わせてみました
いきなりでは、バレバレですから、まずはタラコを指して聞いてみることに
「これ…なんて言うの?」
「なんて言うのって、タラコだろ」
「じゃっ!これは?」
「じゃ、って、塩ジャケだろ?膀胱がんだからって、俺をバカにしてんのかっ」
「あらっあーたもシャケって言ぅう?」
「も・じゃないよ生の状態をサケっての!加工した切り身をシャケってんだよ
」
すご~い
生きた化石みたいな人であります
なんだかんだと言いながらも、さつま芋まで完食
午後になって、娘が病院にやって来ました
「なんかお母さん、やつれて、くすんじゃってるぅ~」
「あのねふたつも、形容詞を並べないでくれる
」
娘にも、紙に「鮭」と書いて、なんて読む?と試してみました・・・
「サケ」
逆に娘に試されました
「お母さん、読んでみて」
「シャケ」
「訛ってるぅ」
「なんかサ、俺、具合悪くなってきたから、寝る」
「ねっ、お母さん春色の口紅買ってあげるから、ちょっと出掛けようよ
」
忘れてましたっ
「お誕生日、おめでとう」
「うふその言葉を待ってたんだ
ありがと」
娘と肩を並べて出掛けた街はすっかり、春
さぁてやつれて、くすんでしまった私に、娘はどんな色の口紅を選んでくれたでしょうか