『燕のうしろも向かぬ別れ哉』
（くろのつばううしろもむかぬわかれかな）
正岡子規
二十四節気・第１５番目「白露
末候・玄鳥去（げんちょうかえる）」の季節が巡っては来ましたが、この退かぬ暑さに、燕も帰るに帰れぬ迷い鳥になってしまうのではないでしょうか
そんな燕も俳句では春の季語となりますが、子規は写生の俳句を作った人でありますから…『別れ哉』で、帰燕（きえん）をも含ませた俳句になっていると思います
まるで
今年の燕の姿を思い浮かべるような句を、子規は五七五に詠んでいます
『帰りかけ又立ち戻る燕哉』
（かえりかけまたたちよるつばめかな）
正岡子規
「女心と秋の空」と言うことわざを借りて、低気圧と高気圧の交差する季節の空模様を表すとは、実に妙を言い得ているかと思います
この連休に、娘たちが犬を連れ泊りがけでやって来たものですから、洗濯物が山のようにありまして、やっとこサ
干し終わったまでは、よかったんです
「ヤレヤレ
」畳の上でゴロンと横になっておりましたら…
「おーいっ！雨だぞ」
の声が外でしています
「
…雨ぇ～」
あの野太い声は…お隣「ちゃんとやれ・じぃちゃん」ではなかろうか
外を見たら、さぁーっと絹糸のような細い雨が降っていました
「ありゃぁ～ま！」
見ている間に
どんどん雨足が木綿糸に…しまいには仕付け糸にと太くなってきました
「それっ
」てんで、大慌てで洗濯物を取り込みました
ちゃんとやれ・じぃちゃんは、ひさえお母さんやお嫁さんのキョンちゃんに大声で雨が降ってきたことを知らせたのでしょうが、おかげ様で我が家の洗濯物もそれほど濡れずに済みました
ご近所に、大きな声のじぃちゃんがいて
何かと助かっています
オスカーデザイン賞を受賞した、コスチュームデザイン兼アート・ディレクターであった故・石岡瑛子さんが、生涯最後に衣装を手掛けた映画「白雪姫と鏡の女王」が見たくて、辻堂にある１０９シネマズへ家人と行って来ました
午後いち番の上映時間の席をゲットしてから、お昼を済ますことに…
最新の券売機の操作も、このところ何度か観に来ておりますので、機械を前にオドオドすることもなくなり、少しは慣れてきたかと思います
メガネを掛けてから臨みます
夫婦・どちらかが５０歳であれば、ひとり１８００円のところを１０００円で観ることができる特典「夫婦割引」を活用
「ふたりとも５０歳以上なんですけど…もう少しまかりませんか
」
と、券売機に交渉してみましたが、「
」…自動券売機は何んの反応もなしっ
吸い取られていくお札の引っ張り合いも虚しく…２０００円は販売機の中へと消えて行きました
シネマズと同じフロアには、レストラン街になっていますので時間調整にぴったりです
と、言いましても…ゆっくり食事する時間はありません
ぐるりと見渡しまして、家人が指を指しましたのが、回転寿司の「がってん寿司」
「昨日のトウモロコシの皮がまだ歯に挟まってるんだ
今日は歯に挟まらん寿司がいいっ
」
回転寿司ならば、いつでも上映時間に合わせて、ストップできます
店に入って説明を聞いてびっくり
午前中に来店すると、すべてのお皿が１０パーセント引き
ビールは半額
「
」耳を疑ってしまい、何度もお姉さんに聞いてしまいました
クーッと飲んでいくうちに、もう映画なんて観なくてもよくなってきちゃった
回転してくるはずのお寿司は、いくら待っても回ってこないし…
注文は、テーブルに置いてある、ネット画面から注文するシステムなんですが、ふたりして悪戦苦闘
自動券売機の次は、「これかぁ～
」
回ってきたふた皿・み皿食べて、「おかみさぁ～ん時間ですよ
」
寿司を味わはずだったのが、ヒョンなところで挫折感を味わってしまいました
さて
気を取り直し、最初の願いであった石岡さんの衣装を堪能しましょう
ジュリア・ロバーツが初の悪役に挑戦
白雪姫の継母・鏡の女王をコミカルに演じています
白雪姫を演じたのは、リリー・コリンズ
こちらが主演になるのでしょうか
イギリスのミュージシャンであるフィル・コリンズの娘と聞いて…
あのジェネシス時代のコロンとしたお顔からは、とても想像も出来ないほどの美形であります
物語は、ご存じグリム童話の「白雪姫」なんですが、この映画では継母・女王と闘う、勇ましい白雪姫となって登場
７人の小人たちは思いも掛けぬ、森の山賊・ギャングの設定となって、白雪姫を助けて戦います
もちろんカッコいい王子様（アーミー・ハマー）と、ハッピー
エンド
白雪姫と言えばリンゴ。
１０９シネマズ・コンセッションでしか買えない、数量限定販売のアップルパイだそうです
ひとつ２００円なので、コーヒーとともに頂きました
シナモンが効いていて、サクサクと美味しかったです。
エンディングでは、白雪姫はじめ、全員で踊る舞踏会の様子が面白く、みんな席を立たずに最後まで観ていたほど…
それもそのはず
あのアラン・メンケンが作曲した、ちょっとアラビアン風の不思議な音楽なものですから、自然と体でリズムを取ってしまいます。
故・石岡瑛子さんが手掛けた衣装は、息を呑むほど素晴らしかったです
女王の絢爛豪華なドレス
白雪姫の初々しさ・清楚な衣装
これが石岡さん・７０代の仕事かしら
と思うほどのエネルギッシュなデザインです
映画の中で使用した衣装６点と、石岡さんのデッサン画が、今…東京・スワロフスキー銀座で「石岡瑛子・衣裳展」が開催されているとのこと
見に行きたいのだけれど、ちょっと高級店過ぎて、怯んじゃうなぁ～
（９月２３日までの開催とのこと）
で…湊かなえ・著「白ゆき姫殺人事件」を読むことに
鎌倉スポーツクラブ・フロントの女の子が、実にタイミングよく貸してくれました
殺人事件ですから、グリム童話とは少し趣が違うのですが、タイトルの面白さに惹かれ、読み始めました
白ゆき姫のような美しい女性が殺される殺人事件です
２７７ページのうち、本筋の話は１９２ページで終わってしまいます
あとのページには「関連資料」と称して、ネット画面の書き込みや新聞や週刊誌の見出しが載っていると言う、今までにない手法をとった小説です
読後感は、この作家さん特有の暗いもので、１人称の語り口も読み進むうちに、ちょっと疲れてしまうところがありました
映画を見習って「ミラー、ミラー」と鏡に向かって叫んでみても、この現実に何んら変わることなどありません
虚しく叫んだ私が、そこに立っているだけ…と思ったら、変なお婆さんが見えたよう
部屋の隅で、リンゴがゴロンと転がった音がしたような
まったく…お伽話にもなりません
