玄関先に「漏斗(ろうと・じょうご)」を干してある家も珍しいと思いますが、その漏斗に顔を突っ込んでいるヤブキリの姿も、なかなか目にすることはなかろうかと思いますにゃは!

注ぎ口から、現在・過去・未来…それともふきだし・・・

ヤブキリは果たして?何を覗いているのでしょうか?

「果たしてなんて、そんな…大したことではないんですけどぉ~」

「いやいやご謙遜。その背中に漂うトボケタ感じ…うーん!男を感じるなぁ~」

「うほぉ~!あなたは男を見る目がおありですなっ」

すっかり!その気になっちゃったヤブキリでありますでかバッタ

さて、漏斗と書いて「ろうと」と読むのは音読です。

私は子どものころから、この台所用品を「じょうご」と思っていましたから、きっとうちの母親もそう呼んでいたことと思います。

呼び方ばかりではありませんで、写真のじょうご…アルミ製なんですが、母親が使っていたものを受け継いで、大事に使っております。

昭和30年代・40年代の下町では、まだしょう油やお酢、ごま油も測り売りをする店があった時代でした。

買ってきた瓶から、食卓用に小分けにするのに必要なのが上の小さなじょうごでした。

このじょうご、今日も梅干しを漬けた梅酢を掬い、新生姜の甘酢漬けに注ぐのに役に立ちました親指

その母親のことで、お盆の入りの13日に我が情けないお兄ちゃんから電話が掛かってきました電話

「もしもーし?俺だっ、オレ!暑いよなぁ、お昼で37度だってよ。年上の弟は大丈夫か?」男

東京での盂蘭盆会は、7月13日に迎え火を焚き、ご先祖様の霊をお迎えし、地獄の門が閉まると言われている16日に送り火を炊きまして、霊をお送り致します。
実家を継いだ兄が、その門口で芋殻を焚き、両親や祖父母の霊を迎えてくれています。

「親父は帰ってるかどうか怪しいもんだけどサ、お袋は帰って来てると思うんだよ…なんかこう背中にドサッと寄っかかってる感じがしてサ、息苦しいんだよ。おみえちゃん、お線香上げに来いよお線香男

マザコンであった兄ですから、親子水入らずで昔話でもしているのかと思っていたら、何やらギブアップの様子ヤレヤレ・・・

こんな時でもなければ、親孝行?兄孝行も出来ませんから、まずは東京・神谷町のお寺さんへ行ってきれいにお墓の掃除を済ませてから、実家へお線香を上げに行って参りました。

私が育った下町・深川では、7月13日のお盆の入りともなりますと、普段の掃除よりも念入りに隅々までやったもんです。

近所のどんなガサツに見えるおばちゃんたちにも、ここに嫁入りしたんだからと、舅・姑にいびられながらも仕え、看取って送ったあとまでも気持ちよくお迎えしようという気風の良さがありましたおばちゃn

家々の門口で焚く芋殻から上がる煙を団扇で煽りながら…うちわ

「お義母さん、隣のうちに行っちゃぁダメだよ!こっちこっち!」

迎え火を焚いている横で線香花火をやっている子もいましたし、送り火を焚いている時に騒いで、下駄で踏んづけちゃった子もいました線香花火

それだけ、ご先祖様をお迎えするお盆というものが、子どもにとっても生活の中にしっかりと根付いた行事だったのです蓮の葉

下町の味付けは甘辛の濃いめだと、よく言われます。

うちの母親の作る煮物も、かなり甘めが効いたハッキリとした味付けでした砂糖

江戸東京の老舗の味と知られている、日本橋・本町にある「弁松総本店」の折詰めをお土産に持って行きましたお土産 

これは「並六」という折詰めなんですが、野菜の煮物ばかりの詰めとなっています弁当

定番の並六ですと、この煮物にメカジキの照り焼きに玉子焼き、私の大好きな紅かまぼこがひと切れ入っております。

今日は持ち歩きが長うなりますもんですから、しっかりと煮込んだ野菜と豆きんとんだけの折詰めに致しました。

私は、ここ弁松の「つとぶ」の煮付けが大好物でして、いくらでもお腹に納まってしまいます。

ちくわぶを生麩にしたような…グルテンのかたまりを甘辛く煮付けたお惣菜ですちくわぶ

経木の折詰めはエゾ松か黒松を材料に使っておりますので、開けると微かに木の香が致します松

仏壇に供え…チーンごちそうさま

下げたあとは、兄と仲良く、箸をおっ立て「つとぶ」の取り合いです。

「お兄ちゃんムカっちくわぶとつとぶは、女子供の食うもんだってバカにしてたでしょっ!なんでいち番先に食べるのよ!」

「この美味さは堪えらんないねハ。もうね、女子供でいいよ」

モチッとした「この美味さ」は、本当に箸が進みます。

「お袋が煮たつとぶもサ、中まで味が染みて美味かったよなぁ」

この言葉こそ…いち番の供養かと思います。

 

『うまい味たこの桜煮玉子焼き折に詰めるは涙なりけり』

(うまいあじたこのさくらにたまごやきおりにつめるはなみだなりけり)

江戸百人一首より

 

東京までの行き帰りに読んだ文庫本・直木賞作家の重松清・著『かあちゃん』sao☆

「泣ける本・グッとくる本」ランキングの上位に喰いこんだ1冊であります泣く。

中学のいじめがテーマとなって、劇的な展開があるわけでもなく、ごくごく平凡な人たちの生活が描かれていまして、昭和の母から平成の母へと、8章からなる物語がリレーされるのは、切なくも優しい母の愛ですはーと 

夜になって、兄から電話が入りました電話

「さっき、お袋送ったからサ…つとぶ、美味かったなぁ。

「あのお母さんのことだもん・・・。まだ、帰ってないかもよぉ~」

「おいっ!脅かすなよ!もう仏壇の戸、閉めちゃおう」

東京の盂蘭盆(うらぼんえ)が終わりました蓮