距離が短いとは言え、鎌倉のメイン通りと言えば若宮大路・段葛です
今日、その段葛の両脇に紅白の提灯が吊るされました
大晦日にはすべての提灯に電気が点され、夜通し訪れる参拝者を八幡宮へと導く足導べとなります
地元の電気屋さんが、脚立を使って次から次へと吊るしていきます
提灯・一張(ひとはり)・3000円を八幡さまに払いますと、その提灯に個人の名でも、店の名でも、手書きの名前が入ります
三張出していたお店が一張になっていたり、去年は出していたのにお店自体が無くなっていたり、提灯ひとつ取っても、景気・不景気が分かります
それでも華やいでいく鎌倉の町は、私たち地元に住んでいる者にとっても誇りと思える古都・鎌倉であります
雨戸の戸袋でミイラになっていたヤモリです
こんな干からびた姿になっていても、しっかりと我が家を守ってくれていたようで、まさしく守り神です
尻尾の先までピンと張って、お見事
財布に入れておきたいぐらいの出来の良さなんですが、家守(やもり)と書くこともあるほどですから、やはりもう一度頭を下げまして、雨戸の裏にテープでもって貼り付け、元の位置に戻って頂き、再びヤモリとしての仕事に精を出してもらうことで、了承を得ましてございます
ヤモリが家の隅っこにいるからと言って、地べた掘ってお宝が出てくるわけではありませんで、相変わらずの枯れすすきの我が家であります
ススキの穂はなびくような風が当たっただけで、待ってましたとばかりに飛ばされ、小さな旅に出て行きます
ふっくらとした穂を眺めておりますと、雑司ケ谷・鬼子母神で売られています「ススキミミズク」を思い出します
私自身、買い求めたことはありませんが、田端に住んでいた伯母の家に飾ってあったのを覚えています
赤い耳と、パッチリとした目が愛くるしいふさふさと頼りなげなミミズクであります
あれは私が10歳の誕生日を迎える、ちょっと前でしたか、3月も終わり、春休みに入るころだったと思います
母親がお腹を切るちょっとした病気をしまして、母がいち番の気掛かりである私をどうするか、だいぶ悩んでいたそうです
父と兄はまったくの戦力外でしたですから、お隣の百合枝ちゃんちに頼るしかありません
「遠くの親戚より、近くの他人」を、地でいったようなもんです
ところが、わたくしは歳の割にヒネてたところがありまして、この際、その根性を叩き直してやろうてな事を、あの母親は思ったそうです
自分の姉さんに私を預け、おさんどんを仕込んでもらおうと目論み、大人同士の間で話が勝手に進められ、実際、私は入院する前日に伯母の家に引き取られて?行ったのでした
あの伯母の家で、いったい何があったのか
不思議なことに、私はすぐに返品されまして、母親はおりませなんだが、いつもと変わらぬ下町での生活に戻っていました
それを聞いた母親は、絶望を味わったまま、しばらく昏睡状態に落ち入ったという、嘘のような真な話でございます
あれからずっと、従兄から「おみえは怖い1メートルからこっちに寄らんでくれ」と言われておりますが、真実を誰も口にしようとはしませんで、私も自分のことながら、何があったのか…今だに怖くて訊くに訊けないでおります
あの壁に飾ってあったススキミミズクこそが、真実の一部始終を見ていたに違いありません
「ミミズクはミタ」
先日、永い付き合いの友人から、サマージャンボ宝くじに当たって、その残りから贈ったとしか思えないような、豪勢なお歳暮「ふぐちりセット」を頂きました
その中に「ヒレ酒用のヒレ」が5枚入っておりまして、貴重なヒレ・3枚がまだ残っております
胸ビレ・背ビレはそれなりに価値があるのだそうですが、尾ビレ、すなわち尻尾は一級下がってしまうんだそうです
三増酒のように品質の悪い日本酒が出回っていた時代に「二級酒を特級酒に変えてくれる」と、ヒレがもてはやされ、安い酒を美味く飲む『手』として、ちょっとした呑み屋で出されていたそうですが、その「ちょっとした」ってところが怪しいもんですなぁ
日本酒の品質が向上した今では、独特のコクと風味を楽しむための「ヒレ酒」になっています
母親が無事、退院してきたのはいいんですが、家事をこなしていきながらも「あ~イテテのテ」と、うずくまっちゃぁ、お腹の辺りを押さえていました
体調が思わしくないと、学校から帰って来ても横になっている日がありました
それでも暑い夏を何んとか耐えて、寒くなるころ近所を集め、忘年会だか、内職の仕事納めだかを、母の音頭でやることになり、そこにヤカンで直に温めた日本酒にヒレを入れ「ヒレ酒」を振る舞ったと、母は大威張りだったそうです
あとから聞いたところですと、これがまぁ~何んともビックリ
魚屋から、アイナメやらカサゴやらのアラを買ってきちゃ、そのアラから切り取った胸ビレや尾っぽを干してヒレを作っておき、この時ばかりと炙ってヤカンに投入したと言います
「あれはあれで、美味かったサ」
昭和の良き時代でありました
さて今日、魚屋へ寄りましたら、なんとも立派なヒレが付いたカサゴのアラが売りに出されておりまして、ついつい買ってしまいました
我が家はアラしか買いませんもので、これでヒレが4,5枚でも取れましたら、超・お買い得品になります
でもぉ~「ヒレの王さま」と言われている「フグヒレ」が、すでに目の前にありますからね
今夜は、甘辛く煮付けることに
イモリの「黒焼き」ならぬ、ヤモリの「ミイラ」では、どうにも「ヒレ酒」とはいきませんようで…