今朝もシトシト鎌倉は師走に入って雨ばかり
あれもこれもと予定をしていた片付けが、もう滞っています
そのお蔭で、たっぷりと読書の時間は取れましたが、買い物も行かずの毎日でしたから、冷蔵庫の中も頭の中も、スカスカのスカ!
昼前には雨も上がったようなので、カートを引いて買い物へ
私は車の運転が出来ませんので、自転車か歩きで買い物に行かねばなりません
余程のことがない限り、家人の車を当てにすることはありません
なぁんかどこかに隠しメーターがあって、カチャッカチャッと加算されているようで落ち着かないのです
今日の鎌倉街道、さすがに車は少ないのですが、観光バスの数は相当なもの
フロントに貼ってありますツァー名を読んでみますと、「晩秋の鎌倉・紅葉を訪ねて」どこを訪ねるんじゃい台風15号の塩害で、今年の山々は真っ茶色です
次は「鎌倉・秋色のお寺散策・横浜中華街探訪」…散策と探訪かぁ~どっちがひとつにしといた方がいいんじゃないのかな
どんなに悪天候だろうと、見頃がなくても、ツァー料金は前もって振り込んでありますから、バス会社が「決行」っと言ったら決行するしかないようです
スーパーの店先にある花屋さんクリスマス用にと、ポインセチアやシクラメンがところ狭しと並べられています
その中にインフルエンザにでもかかったのでしょうか
何やらえらく顔色が悪い花です
「お大事に」
年末になりますと、クリスマスやらお正月やらとスーパーの売り出しにも熱が入って参ります
今日の折り込みチラシにも、不景気なりにかなりの数のチラシが入っておりました
今夜は久しぶりのすゑさんに登場してもらいましょう
【すゑさん物語】第20弾!「お地蔵さん」
すゑさんが永いひとり暮らしから、私たちと同居することになって間もなく・・・
嫁である私との戦いに疲れ果てたのか、桜の散るころから、すゑさんは、だんだん食が細くなっていきました
朝から「体がだるい」と言って、起き上がろうとしません。
初夏のいい風が開け放した窓から入ってきても、首を回して庭を眺めているだけでした。
「すゑさんなんか、食べたいものない。お寿司とかうどんとか
」
「お寿司とうどんじゃ、だいぶ違うじゃないの。ふつう、お寿司ときたら、天ぷらか鰻じゃないのかね」
そう、きたか
「うどんとそば、どっちが食べたい」
「そう、きたか」
すゑさんはヨロヨロしながらも、茶の間まで起き上がって来てお茶を飲む日もありました。
ヴェポラップできれいにした「すゑさん専用入れ歯」を渡しながら、羊羹を出したり、肉まんを出したり…とにかくひと口で、少しでもお腹に溜まるようなものをと考えたつもりでしたが、当のすゑさんは顔をしかめるばかり。
「なんかさぁ、もっとこうスッと喉を通るようなもの、ないの」
「ところてんとか?」
あの頃のすゑさんは、すでに87、8歳でした。
もう滋養だとか、栄養だとかはすゑさんには、それほど必要のないものだったんですね。
それからは接し方をちょっと変えまして、新聞折り込みのチラシをふたりで見ながら、朝のひとときを過ごすようにしました。
「今日は、何にしますかね?」
「そうだね。昼はこの駅弁まつりの釜めしがいいね」
「じゃぁ、私は富山のマス寿司」
「夜は、鰻にしてもらおうかね」
「じゃ、奮発して1本、付けましょう」
なんて具合に、カラーのチラシを見て楽しんだものでした。
足腰が弱って、もうスーパーへ行きたくとも行けないすゑさんでしたが、季節のハシリの野菜、旬の魚など、料理の仕方も教えてくれました。
ぬかみそをかき回し、茄子が色よく漬かったと見せに行っても、「匂いが臭いになってるよ。芥子を入れ足さなきゃ、夏は持たないよ」と、まぁ~寝込んでいても鼻の利くこと…
不動産屋さんのチラシに載っていたマンションの間取りでも、ああでもないこうでもないとよく遊んだものでした。
「これだとすゑさんの部屋はとれないわぁ」
「・・・ベランダでもいいよ」
何を言われようと、私と離れたくはなかったと思います
すゑさんは梅雨が明けた頃から、うつらうつらとする日が多くなってきまして、声を掛けてもぼんやりとしている時間が永くなりました。
どこが痛いと訴えることもなく、あれが食べたいとも言わず…まるで産まれたての赤ちゃんのように眠りこける毎日でした。
まぁ~シしわくちゃではありましたけどね。
ある日ふっと目覚めたすゑさんは「お地蔵さんお地蔵さん」と呟いて、骨皮筋子の手を夏掛けから出そうとしています。
スワッ遺言かっと思い、しっかとガリガリの手を握りしめましたが・・・
「お地蔵さんお地蔵さん」
落ち着いて聞いてみますと
「お地蔵さんがやって来て、手をこうやって出すんだよ」
そりゃぁ、すゑさんお迎えだ
会社から帰って来ました家人を枕元に連れて行き、浅くいびきを掻いているすゑさんの耳元で「すゑさんお地蔵さんの話を息子にも聞かせてあげてよっ」と、揺り起こしました。
いち日中、眠っているにもかかわらず、眠そうな目をしたすゑさんは
「お地蔵さんが…」のところで眠ってしまいました。
「近くの岩舟地蔵さんが、お袋を連れて行ってくれるんなら安心だ」
「すゑさん、お地蔵さんを連れて戻って来るんじゃないの?」
それから三週間ばかりしまして、すゑさんはお地蔵さんに手を引かれ、穏やかに息を引き取りました。
日々の買い物の楽しさは、チラシを見ることから始まっているのでしょう
お買得の安い物を買い求める、そこには、慎ましく、決められた中でのやり繰りがあります
買ってきた品物を冷蔵庫に移しかえ、あれこれ献立を考える喜びを、今夜はすゑさんと一緒に、ひと工夫してみましょう