向田邦子さんが亡くなって30年が経ちました白いカーネーション

先日・11日のブログで「古今亭志ん朝」の中で、向田邦子さんと古今亭志ん朝師匠、このふたりが亡くなった時に、私のひとつしかない命を、代われるものなら代わりたい…生きていてほしい…さすれば、この命、ちっとも惜しいとも思わない。

こう書きましたら、同じスポーツクラブに通う友だちが「向田邦子ふたたび」と題された雑誌を、クラブのフロントに預けて置いてくれました。

家に帰って袋から取り出しまして、もうびっくりしたのなんのってビックリマーク

向田さんが飛行機事故で亡くなってから、三回忌にあたる昭和56年の臨時増刊号でした。

きっと友だちも、向田さんの大ファンなのでしょう、雑誌はきれいにセロハンで包まれていました。

どうもありがとうハート

しばらくの間、お借りしますね花(セキセイインコ)

さて。。。大きく深呼吸してから表紙をめくりますと「向田邦子」がどっと押し寄せてきます。

「向田」の文字と「邦子」の文字を合わせて「向田邦子」。

当たり前ではあるけれど、どくんとこの胸にくるものがあるのです。 

1981年の夏…昼過ぎのお笑い番組か、ドラマの再放送があった夕方か? 

テレビ画面の上にニュース速報が流れました。

ー「直木賞作家 向田邦子さん 台湾上空、飛行機事故で死亡」…ショックで時間が止まってしまったかのよう。

私が26の時でした。

訃報が確かなものと分かった時、顎の力が抜け、ソファで呆けたようにぼんやりと座っていました。

図書館から借りていた向田さんの本が2冊。中川一政画伯の装幀による狛犬と柿と夏みかんの絵が描かれてた本がテレビのすぐ上に無造作に重ねてありました。

向田邦子さんを直木賞作家、エッセイストと思っていましたから、テレビ放送作家でもあると知ったのは、ずいぶんとあとのことでした。

「寺内貫太郎一家」を面白おかしく、毎週楽しみに見ていたのに…

多く手掛けたテレビドラマの中で、「あ・うん」と「阿修羅のごとく」が、私の中で群を抜いての印象が強くあります。

番組の始まりのテーマソング、「あ・うん」がアルビーノのアダージョ、「阿修羅のごとく」がオスマントルコ・トルコ軍隊行進曲と、それぞれにドラマに漂う哀しさと怖さを秘めた旋律だと思い、聞き入ったものでした。

私はこのNHK土曜ドラマ「あ・うん」の中で出会った女優・吉村実子の白い割烹着姿・たみ役が、あまりにもハマっていたので、すっかりこの女優のファンになってしまいました。

そして「阿修羅のごとく」でも、父親の恒太郎を演じた佐分利信の渋さ…

これには参っちゃったなぁ~普段から男なんぞには目もくれない私なんですが、この佐分利信は別なんです。

やっぱりいいなぁと惚れ直しちゃったもんです。

崩すことなく、それでいてさらりと袖を通した着物を着て、ちゃぶ台の前に座っているだけで、お酌のひとつもしたくなるよな…ああぁ…30年早く産まれてたら、なんとかなっていたかもしれないのになぁ。

まだ、ジョン・トラボルタがおりますからね!

がんばってみますファイト

どちらのドラマもシナリオ集として出版されてはいますが、私は大好きな活字よりも活字らしさをテレビの中に見たような気がしました。

それほどに素晴らし役者たちに彩られた物語だったと思います。

向田さんの17冊は、装幀の質の高さでもずば抜けていると感心してしまいます。

中川一政、風間完、村上豊、山藤章二、横尾忠則、司修、江島任とそうそうたる方たちばかり…本と一緒に一服の絵をも手にした心持ちでございます。

向田さんはああ見えましても「ああ」が、どのあたりを指しているのかは私もはっきりとは言いかねますが、とにかく虫が嫌い!であったと、出版社の方に聞いたことがありましたでかバッタいもむしいもむし

虫という字が付く字も嫌いビックリマーク

「蠢く」・こんな艶めかしい字、如何にも向田さんが好みそうな字だと思うんですけどねぇ~

向田さんが織りなす会話の中にそっと忍ばせたら洒落た科白になっただろうにと思うのは、虫が3度のメシより好きな私の勝手な言い分でしょうカマキリ

ただひとつ・虫偏の「虹」だけはお好きだったそうです虹ギリギリス虹

向田さんが生きていらしたら、81歳になられているはず…

お気に入りの「冷やしトマト」をどうぞトマト

この季節、鎌倉市農協連即売所は、採れたてのトマトがたくさん並べられていますトマト

美味しいものが大好きだった向田さんが、赤坂に開いたお惣菜・酒処「ままや」日本酒

末の妹さんに切り盛りを任せていましたが、青紫蘇がのった「冷やしトマト」は人気のあるひと品でしたトマト紫蘇

もうだいぶ歯も弱くなられたことと思いまして、今日は湯むきをして、食べやすいように致しました笑

「さっさビックリマークどうぞ、ご遠慮なさらずに」手

小説であろうがエッセイであろうが、とにかく何んであろうと向田さんの感性に触れてしまっては、こちらの負けです。

潔く、シャッポを脱ぐしかありません。

今でも・代われるものなら…と、この命、差し出す覚悟は出来ています。

どうかあの世とやらで、古今亭志ん朝師匠と直談判なすって下さいまし。

けれども、あちらは余程に居心地がよいのでしょう。

こちらに帰ってくる方に、お目に掛かったことはございませんで土下座