台風14号が降らせる雨で我が家は溺れそう
ギンナンも、この雨で大方落ちてしまい、周りは黄色のじゅうたんを敷き詰めたようになっていると思います
行きたいっ!拾いに行きたいっ
ギンナンと共に山崩れで遭難したら、娘は臭いと言って引き取ってくれないだろうねぇ
玄関先で空を見上げているばかりで、ギンナンへの想いを断ち切ることが出来ません
ふと、気が付けば
細いツルを伸ばしているのは、虚しい芽を出した『風船葛』です
うっかり出した芽を引っ込めるわけにもいかず、ヒョロヒョロと心細気に10月を終えようとしています(10月4日付『虚しい…』参照)
ひと粒の種は何の疑いもなく、来る日々に希望を抱いてツルを伸ばしているのでしょうか
「虚しい…」などと思ってもいないことでしょう
同じように季節外れの芽を出した白粉花
「万が一」に掛けた白粉花は、丈は伸びずともしっかりと根を張ってツボミを持つ勢いまでになりました
もう、その開いた花に、蝶や蜂はやっては来ないだろうに
咲かずにはいられないんでしょう
それでも白粉花は、夕闇に紛れ、手付かずの良さを秘めた色合いを出して咲くんです
おそらく『風船葛』の芽に、万が一はやってこないだろうと思います
そう決め付けられた風船葛、そのツルの先には何があるのか…
指でツルを触ったら、イヤイヤをするように揺れました
でも…「もしかしたら」と思わせる力強さを細いツルから感じることが出来たのです。
私は、ちょっとした驕りをたしなめられたような気がしました。
軒下のカエデの盆栽に避難していたハラビロカマキリです
全身ずぶ濡れのカマちゃんは、少し寒さで震えているようでした
カマちゃんの頭にも、ツルが伸びているような触覚があります
芥子粒を思わせる眼ン玉・眼と目が合ってツィッと外した方が負け
この勝負は私の勝ち
で・なんだって言うほどのことはありません
今宵ひと晩、玄関で避難所暮らしをさせ、明日の朝までのご縁です
また、ひとり…ジャングルのような世界に戻っていくんだよ。
怖くはないの?
指でツンツンと頭を突付いたら、そこが心臓のような鼓動を感じるほどの力強さではじき返された気がしました。
誇り高きカマキリに、奢った哀れみを掛けたことを少し恥じました。
今年の6月に漬け込んだ梅酒の試飲を勝手にやりました
色はほどよく出ましたが、やっぱり3~4ヶ月の梅酒は若い
素っ気ないんです…舌に引っ掛かりがないんですね
やっぱり、3年、5年と年月を寝かせたものには深みが増すのでしょう
人間と違って、裏切られることもないと思います
老い先短いんですが、ここはじっくり待つことにしましょう
鎌倉に住んで料理を教えていらっしゃる辰巳芳子さんが、前に言っておられた言葉があります
「料理と同じ、人にも下ごしらえが必要」
素材を活かし、手を抜かずにきちんとした下ごしらえをし、熟成を待つ・私はその言葉の持つ意味を、このように自分なりに解釈をして教えを守ってきたはずでした。
瓶のフタを固く閉め直し、梅酒は時計のない部屋へ…
私は、もう一度しっかりと自分に塩を振りなおし、気持ちを引き締めて、台風一過を待つことにしましょう
風船葛も、カマキリも・そして私も、自然のままに