日傘なしではとても外に出られぬほどの強い陽射しが今日も続きます
我が家の玄関先に、写真のニホントカゲが棲み付いています
すぐ逃げる態勢を構えますが、別に隠れるわけでもなく、こうして陽があるうちはここにジッとして目の前を這っているアリなどを食べて過しています
今のところは、シッポもきれいに付いて蛍光色を放つブルーは陽に当たってキラキラと「お見事」
で・命名致しました「ミゴト」
「買い物に行ってくるからね留守番と
の面倒を頼むぞ
」
夏草で半分覆われたコンクリートの道端で、ムクドリが何かを突付いています
クチバシの先に何があるのか…そろりと近づいてみました
「あっトカゲ」
クチバシにくわえられたトカゲは何度か道に叩きつけられトクントクンとムクドリに呑み込まれていきました
私はぼんやりとしたまま、日傘の中で突っ立って見ていました。
いち度、ムクドリの口からトカゲが落ちた時、勢いよく1歩足を踏み出し、ムクドリを脅していたならトカゲは助かっていただろうか
いや、トカゲよ。
お前は白い腹をくねらせ、爪を立てコンクリートに尾を叩きつけられ、死んでいくであろう快感に浸っていたのではないのか。
トカゲを腹に収めたムクドリは丸い日傘に隠れた私の影を後にして、源氏山に方向を決め飛んで行きました
トカゲは、空を飛ぶことを祈ったのでしょうか。
夢を叶えたトカゲは闇の袋に押し込められ、這いずり回っていた地べたから空高く飛び立って行ってしまったのです。
何ひとつ残さず消えていったトカゲを、羨ましいと妬み、容赦のない太陽に照らされている自分は、この先をまだ生き続けていかなければならぬのかと…足の指に力が入り、立ちすくんでしまいました。
サンダルからのぞく指は、いつか見たトカゲのシッポだけが道端にうごめいている様を思い起こさせ、その生々しさが鬱陶しく思いました。
やっとの思いで帰ってきた玄関先に、「ミゴト」の姿を見た時、ホッとすると同時に、このトカゲと私はいったいどんな最後を迎えるのだろうと思いました
「ミゴト」は潔く、その死を受け入れるでしょう。
私はあがいてあがいて、それでも受け入れることは出来ないかもしれません。
「大丈夫だよ。そんなに深く考えなくてもサ。綾小路きみまろも言ってたじゃん、人間の死亡率は100パーセントだって!誰にも来るんだよ」
「うん、そうかぁ。ミゴト、ムクドリには気を付けるんだよ」
「やだやだムクドリだけには食べられたくない」
「大丈夫だよ。トカゲの死亡率も100パーセントなんだから!深く考えないで日向ぼっこしてなさい」