20年くらい前、ある不幸な事情で息子と愛犬(1歳ショッピングカート内)を連れて、ホームタウンを行くあてもなく歩いていた。
思いがけない事態にみまわれ 次の日もその次の日も町をさまよい、深夜に車を出す時はどうか自損事故で一家消滅できますようにといつも考えていた。
そんな悲運な時でもお腹は減るので ある夕方三軒茶屋のイタリアンレストランに 玄関に犬のカートを置かせてもらい食事ができないかと店員さんに頼んでみた。
店主は「いやいや、今なら個室が空いているから、ぜひわんちゃんもご一緒にどうぞ」と入れてくれた。二子玉川でも用賀でも自宅のある駅前でも なぜかペット可ではないのに テーブル下や角に犬を置いてくれた。 

急激な冷え込みの早期 訳あって軽井沢のホテルのエントランスに犬カートをおき暖をとっていると 迷惑だからと追い出されてしまった。なんかホームレスになった気分。
タクシーで旧軽まで行き 朝からあいている喫茶店にカートを店前に置かせてもらいコーヒーを飲みたいのだけどと恐る恐るきくと、店主はいいからいいからカートも一緒にとよびいれてくれた。その日は夫が迎えにくる夕方まで 3℃の気温の中をずっと何キロも二人と1匹は暖を求めて歩きつづけた。

今、被災地のペット不可の話を聞くと、あの頃の自分たちと重ねてしまう。心の病に怯える息子を連れ パピーの犬を伴い 仕事を終える夫を町を彷徨いながら待っていた日々 わんちゃんもどうぞと受け入れてくれる思いやりがとてもありがたくて今でも涙があふれる。